約束

約束 05 ~GAME






結局、出たときと同じ。







玲くんも一緒に我が家へ帰って来てしまった。








玲「まさか妹が犯人だったなんて・・・意外だったなぁ。」

「そうか?私は初めから怪しいと思ってたぞ。」

玲「え、ほんと?すごいね透ちゃん。探偵みたい。」

「え・・・そ、そう?」





テレビに対面するように置いてるソファー。

現在それに並んで座り、コーヒーと菓子をお供に映画鑑賞会を開催中。





「次、何がいい?」

玲「そうだなぁ・・・ホラーは?」

「あ、ごめん。ホラーは持ってないんだ。こう見えてそっち系は苦手なんだよ。」

玲「そうなの?なんか意外。」

「よく言われる。あー怖・・・想像したら寒くなってきた。」

玲「大丈夫?このクッション貸そうか?」

「え、いいの?」





はいどうぞ、とクッションを貸してくれた。

ついでに「女の子は体冷やしちゃダメだよ」なんて言いながらせっせとひざ掛けを掛けてくれる。





「あ、ありがと。」

玲「全然いいよ。」





自分で言うのは寂しいが私は半分男子だ。

そんな私を女子扱いしてくれるなんて・・・

君ってほんといい奴。





でも・・・

だからといって玲くんの全てを信用してるわけじゃないぞ。





だってどんなに可愛くても王子も男だし
今朝はあんなことがあったし

家に連れ帰ってからもしばらくは警戒してた。




だがどうも緊張が続かない。




変態や俺様のような「雄」を感じないせいか
それとも玲くんの人懐っこい性格のせいか

一緒にいることにまったく違和感を感じない。

違和感どころか友達特有の居心地の良さすら感じるから不思議だ。






(お・・・)






「見てみろ玲くん、こんなのもあるぞ。ヨーロッパ王室の謎。」

玲「えー、なにそれ。」






ふと、買い溜めしてたDVDを漁ってると目についたそれ。

なにこのパッケージ・・・
先日散々見せられた恐怖のヨーロピアンを思い出してしまう。






玲「透ちゃんそういうのが好きなの?」

「いや・・・なんでこんなの買ったんだろ。その時は見たかったんだろうな。」

玲「あ、それ分かる。俺も買ってそのままの本がいっぱいあるよ。」





なるほど。
やることは皆同じだな。


まあいい。

とりあえず適当にコメディーでもセットしとこ。






玲「それにしても・・・透ちゃんって映画が好きなんだね。」

「ん?」

玲「昨日はなんにも無い寂しい部屋だなと思ったけどすごい数のDVDだよね。しかもそんなとこに隠してるなんてビックリ。」

「・・・・・・。」





別に隠してるわけじゃないぞ。

それに寂しい部屋って・・・

確かに殺風景ですけどね。
せめてシンプルって言ってくれよ。





「ま、映画は好きだな。将来は家にシアタールームを作りたい。」

玲「家で見るのが好きなの?映画館じゃなくて?」

「ああ、家でのんびり見るのが好きだ。」

玲「ふーん。それじゃ辰巳と気が合いそうだね。」





え、変態と?





「・・・なんで。」

玲「あいつも映画好きなんだよ。色んな機械も持っててさ。確か寝室をシアタールームにしてたような・・・」

「ほう!」





やるな辰巳さん。

変態とばかり思ってたけどいい趣味してるじゃないか!





玲「今度一緒に辰巳の家に映画見に行く?」

「それはヤダ。」

玲「えっ・・・い、嫌なの?」

「嫌だ。ヤツの家なんてとんでもない。」





シアタールームは魅力的だが家に行くのはゴメンだ。

自ら身を差し出すようなバカな真似はしない。
想像するだけで寒気がする。





玲「それじゃ・・・俺の家は?」

「え?」

玲「俺の家も嫌?今度遊びに来ない?」

「へ・・・」





え、えーと・・・?

これはなんて答えればいいのかな。





玲「・・・俺の家、ネコがいるよ。」

「行く。」

玲「・・・本当?」

「行く。」





なんと、玲くん宅にはネコがいるらしい。

そんなの聞いたら行くに決まってるだろ。
お土産持参で伺わせて頂きます。





玲「ほんと、透ちゃんってネコが好きだね。」

「まあな。で、女の子?男の子?」

玲「女の子だよ。」

「なんて名前?」

玲「えとね、キナコ。」

「きなこ?」





美味そうな名前だな。

なんとなく甘いものが食べたくなったんでテーブルに置いてたクッキーを口に放り込んだ。





「楽しみだなぁ。いつ行こう。」

玲「いつでもいいよ?」

「ほんとか?それじゃ来週の休みにでも--」

玲「・・・ふふっ」

「え?」





変なタイミングで玲くんが笑い出す。

なんだ?
なんか可笑しかったか?






玲「いや、ゴメン。飲みに行ったり家に呼んだり・・・すっかり友達になっちゃったなぁと思って。」

「へ?」

玲「なんだか不思議な感じ。」

「ふーん・・・」





そんなに可笑しかったのか玲くんの笑いは止まらない。

まあ、知り合ったきっかけが例のくだらないゲームだったからな。

笑っちゃう気持ちも分からなくはない。




それに短い間に色々あった。




アンティークツアー行ったり
香織や直樹と一緒に飲んだり

司の家にまで行って
今現在も私の家に遊びに来てて・・・







(・・・・・・。)







思い返してみればなんだこれ。
つい最近知り合ったとは思えない。










「玲くんって・・・ずっと前からの友達みたいだよな。」










思わず心の声が飛び出した。






玲「へ?」






意味が分からなかったんだろう。

玲くんはポカンとこっちを見て、二度ほど目をパチパチやった。






「馴染んでるっていうのかな・・・一緒にいて違和感がない。」

玲「え・・・」





いつの間にか香織と直樹と友達になってて
昼は司も一緒に仲良くアルバム囲んでて

これはもう新入り友達レベルじゃない。

旧友と言える。





「それに香織と直樹はともかく・・・まさか司まで手なずけるとは思わなかった。」

玲「て、手なずけるって・・・」

「あいつ、根はいい奴なんだけどさ。慣れるまでが大変だろ?」

玲「そんなこと・・・」

「やりおるな、玲くん。」

玲「・・・・・。」





ま、手のかかる弟と仲良くしてもらえるのは姉として嬉しい。

からかいと感謝の気持ちを込めてツンツンと肘で突ついてみた。





(お・・・)





なぜか不自然に目を逸らされた。

そしてわざとらしくコーヒーをすすり出した。

それってあれかな。
照れてるのかな王子よ。





玲「で、でも・・・確かに最近知り合いになった感じはしないよね。皆いい人だし一緒にいて居心地いいよ。」

「そりゃ誉めすぎだろ。」

玲「そんなことないよ。俺、高校に入るまで海外に住んでたからこっちに友達少なくて。だから皆と友達になれて嬉しい。」

「え、海外に住んでたの?そりゃすごい。」

玲「すごくはないけど・・・すぐ近くに海があってさ。良く海で遊んでた。」

「へぇ!」





なんと、玲くんは帰国子女だったらしい。

しかも少年時代の遊び場が海。
テレビゲームで育った私とはスケールが違う。





玲「高校に入るとき日本に帰ってきたんだけど。そのとき辰巳と晋と友達になったんだ。」

「ふーん。」





なるほど。
そこで道を踏み外したんだね。





玲「あれ、でも透ちゃんと香織ちゃんも高校からの付き合いだったっけ?」

「そうだぞ、君らと同じだ。」

玲「そっかぁ。高校生の2人も可愛かったんだろうね。」

「私はともかく・・・香織は目がくらむくらい可愛かったぞ。まるで一輪のお花のようだった。」

玲「うん、写真見たけどすっごく可愛かった。」

「だろ?」





そんな香織はとことんモテた。

どこを歩いても男が群がり、そして私はそいつらを千切っては投げ続けた。

輝かしい思い出だな。





玲「それにしても・・・透ちゃんの周りって綺麗な人が多いよね。」

「綺麗な人?そうかな・・・」





確かに香織は可愛いけど・・・

他に誰かいるっけ?

ま、ニューフェイスの君はダントツに綺麗だけどね。





玲「まずは香織ちゃんでしょ。そして司くん。」

「司?」

玲「カッコいいじゃん。」

「・・・そうか?弟だからかな、良く分かんないな。」

玲「それに直樹くんもカッコいい。」

「あぁ、あいつはカッコいいよな。会社にも直樹に憧れてる女子がたくさんいる。」

玲「うん、分かる気がする。」

「だろ?」





近い存在過ぎて忘れがちだが、直樹は意外と整った顔立ちをしている。

その上あの優しい性格。
モテないはずがない。





玲「それと・・・」

「え、まだいる?」














玲「・・・幼馴染の、忍くん。」














え?










「あの人は別格だよね。カッコいいっていうか・・・怖いくらいに綺麗。」

「・・・・・。」











不意打ちで出てきたまさかの名前に











持ってたカップを落としそうになった。