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直「これってもしかして・・・高校の時?」
司「えーと、そうだな。」
(・・・はっ!)
ふと耳に入ってきた会話に我に返った。
どうやら長い間ボーっとしてたらしい。
おまけに瞬きも忘れてたのか。
軽くドライアイだ。
直「司って昔から変わらないね。」
司「そうか?」
玲「あ、これ香織ちゃん?」
香「うん!そうだよー!」
玲「制服姿も可愛いね。」
香「ヤダもー!王子ったらー!」
チラッと声の方を見ると輪になって床に座り込む4人組。
面白いものでも見つけたのか
キャイキャイワイワイ騒いでいる。
ていうか司は何やってんだ。
私のコーヒーはどうした。
『ニャー』
「あれ、ボス。仲間外れにされたのか?」
『・・・・・。』
「薄情なやつらだなぁ。今日はお前に会いに来たのにな?」
『・・・・・。』
「よし、来い。私が遊んでやる。」
『ニャ』
追い出されたのか・・・
いや、恐らくお触り地獄から逃げてきたんだろう。
少々うんざりした足取りでボスがこっちに近づいて来た。
『にゃうー』
手を伸ばすと頭を擦り付けそのまま膝の上に飛び乗ってきた。
相変わらず可愛いヤツめ・・・
後でこっそりキャッツG食わせてやるからな。
「お前、また可愛くなったんじゃないか?それ以上愛らしくなってどうする--」
玲「あれ・・・これってもしかして透ちゃん?」
直「あっ!ほ、ほんとだ!」
(・・・へ?)
不意に名を呼ばれて顔を上げた。
するとなぜだ。
微妙な顔でこっちを見る直樹と玲くんと目が合った。
「・・・なんだよお前ら。」
直「い、いや・・・」
玲「べ、別に・・・」
なぜか目を泳がせる2人。
一体なんだってんだ。
「不審なヤツらめ。言いたいことがあるなら---あぁ、アルバムか。」
チラッと視線を落とすとアルバムが見えた。
さっきから何をはしゃいでるかと思えば・・・
どうやら人の若かりし頃の姿を見て騒いでたらしい。
余談だが司はアルバム作りが趣味だ。
似合わない。
そう思ってるのは私だけじゃないと思う。
司「なんだよそれ、つまんねぇ反応。」
「は?」
司「普通は"キャーやめて!見ないでよー!"とか言うもんだろ。」
「・・・・・。」
言わねぇよ。
「そんなこと言われてもな・・・見られて困るもんでもないだろ?」
司「強がり言いやがって。実は恥ずかしいくせに。」
直「えっ、そうなんですか?」
玲「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。今も昔も透ちゃんは可愛いよ?」
「・・・・・・・。」
いや・・・
だから別に恥ずかしくないからね。
司「ていうかお前・・・そんなとこで何やってんだ?」
「え?何って・・・お前とコーヒーの帰りを待っ」
司「一人で寂しいヤツだな。すねてないでこっち来いよ。」
「は・・・」
直「そうですよ透さん。一緒に見ましょう?」
玲「ほら、ここにおいで?」
「・・・・・・。」
手招きする直樹
自分の隣をポンポン叩く玲くん
気遣いサンキュー。
でも寂しいわけでもすねてるわけでもないからね。
(それに・・・)
「私はいいよ。ボスと遊んどく。」
直「そ、そうですか?」
玲「じゃあ後でおいでよ?」
「あぁ、分かった。」
気を遣わせてごめん。
だが何度も言うが寂しいわけじゃないからな。
それに
アルバムは、あんまり見たくない。
司「あ、これって・・・」
香「あー懐かしい!3年の文化祭だ!」
玲「文化祭かぁ。何やったの?」
香「クレープ喫茶!女子はメイド服を着たんだけど、それを目当てに校内の男子がわんさか買いに来たの!」
玲「メ、メイド服?」
直「ま、まさか透さんも?」
「・・・・・。」
メイド服に釣られて食い入るようにアルバムを見る2人。
そして再び微妙な視線を感じる。
だがここは無視。
応えると面倒なことになりそうだ。
司「透がそんなの着るわけねぇだろ。ていうか見たくねぇ。似合わないに決まってる。」
・・・なんだと。
玲「えー、見たかったのに。」
直「・・・・・。」
香「残念ながら透は着てくれなかったんだけど・・・あ、これだ!」
玲「・・・ウェイター服?」
直「透さんカッコいい!」
香「でしょ?あまりのカッコよさに女子が殺到したんだよ!」
玲・直「なるほど。」
なんで納得してんだお前ら。
玲「司くんのクラスは何やったの?」
司「俺のとこは輪投げ屋。」
玲「わ、輪投げ!?司くんが!?」
司「そうだ。」
直「あ、この写真かな。え、女の子の行列できてるけど・・・すごいじゃん。」
司「まあな。」
なんでお前が威張ってんだよ。
「勘違いヤローめ。な?お前もそう思うよな?」
「にゃーん!」
奴らに聞こえないように小声でボスに訴える。
どうやら同感らしい。
元気な返事が返ってきた。
直「そういえば気になってたんだけど・・・この人って誰?」
・・・・・・・・・・あ・・
司「どれ?」
直「透さんと司と良く一緒に写ってる・・・この綺麗な男の人。」
玲「あ、俺も気になってた。すごく綺麗だよね。」
司「あぁそいつは---」
香「!」
あぁ・・・
やっぱり、そうなるよな
司「昨日少し話しただろ?そいつが忍。」
玲「え・・・」
直「忍って・・・今度帰ってくるって人?」
司「そ。」
(------、・・・。)
無意識に、息を潜めてしまった。
直「あ、ここにも写ってる。」
司「まぁ、幼馴染だからな。一緒にいることが多かったかも。」
玲「・・・幼馴染?」
司「そ。」
さり気なく、皆に背を向けた。
「・・・はぁ・・」
だから嫌なんだ。
アルバムを見るのは好きじゃない。
直「いいなぁ、こんな綺麗な幼馴染がいて。羨ましい。」
司「そうか?」
香「そ、そうだよねー!幼馴染っていい響きだし!ちなみに直樹は幼馴染っている?」
直「え、俺ですか?一応いますけど・・・」
司「へぇ、初耳。」
香「どんな人?男子?女子?」
直「お、女の人ですけど---もう!俺のことはどうでもいいですから!」
香「えーなんで!聞きたい!」
(あーあ・・・)
あの頃は楽しかったよな。
思い返せば楽しい思い出しか残ってない。
アルバムの中の私も周りの連中も
きっと最高にイイ顔で笑ってるはずだ。
なのに
一体・・・
なんでこうなっちゃったんだろ。
(チッ・・・)
せっかく昨日玲くんが飲みに付き合ってくれたってのに台無しじゃないか。
一気に気分が落ちてしまった。
「ニャァ・・」
「・・・なんだよ、心配してくれてんのか?」
「ムー」
「はは、ごめんな・・・」
可愛らしく首を傾げてボスが見上げてくる。
こいつにまで心配されるとは・・・
昨日から受け続けた思わぬ心的打撃に
どうやら私は相当参っているらしい。
だからだろうか
そんな自分を見つめる香織と玲くんに
全く気付かなかった。
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