トラブル×トラブル

トラブル×トラブル 10 ~GAME






「ご、ごめ・・・透ちゃんごめんっ!」








瞬きひとつで零れ落ちそうな涙
わずかだけど感じる体の震え

それもこれも全部








俺のせい・・・








「ごめん、ごめんね・・怖かったよね・・・」
透「---っ・・ッ・・・」









(あーもう・・・俺のバカ!)









別れ話の最中ならともかく
寝込みを襲って女の子を泣かせるなんて・・・

サイテーじゃん俺。

もし5分前に戻れるなら自分の頭を思い切り殴りつけてやりたい。







「透ちゃんごめんね?もうしないから。お願い、泣かないで・・・」







恐る恐る涙を拭ってみる。

でも・・・ああどうしよう
すぐに溢れてくる!







透「---っ・・」







涙が落ちないよう頑張ってるのか、きゅっと眉根を寄せる透ちゃん。

その仕草も表情もとっても可愛いんだけど・・・

ダメだ、ものすごく胸が痛い。
自己嫌悪で押しつぶされそう。







「透ちゃん本当にごめなさい。心から反省してるから--」

透「・・・ごめん・・」









・・・え?









「え・・あの---」








ごめんって・・・え?








透「--ごめ・・・ッ・・」
「----!」








(こ、今度はなに?)








透ちゃんは何かを耐えるように唇をきゅっと噛みしめた。

なんでだろう・・・

その表情はなぜか悲しそうで







そしてそんな表情を浮かべたまま

ゆっくりと手を伸ばしてきた。









「透、ちゃん---?」









向かってくる指は小さく震えてて
まるで助けを求めてるように見える。






出来れば掴んであげたい。







でも---







体が動かない。










透「ごめん---」










透ちゃんの両手は俺の頬を通り越し

遠慮がちにそっと髪に触れた。









「-----ぇっ・・」









な、何をするつもり・・・?








透ちゃんの細い手は俺のうなじを包み込み








ゆっくりと自分の方へ引き寄せていく









そして俺は









透ちゃんの首元に顔を埋めた。










「---透・・・ちゃん?」










これはあれかな・・・










もしかしてだけど










抱きしめられているんだろうか










(な、何が起こってるんだ・・・?)









透ちゃんの指が俺の髪を優しく撫でる。

時々すがるように腕に力が篭って、そしてまた髪に触れる。








「・・・・・・・・。」








情けないけどされるがままだよ。








だって・・・

どうしたらいいか分からない。








透「---ごめん・・」
「・・・・あ、あの。なんで謝るの・・・?」
透「----ッ・・」
「・・・透ちゃん?」








聞こえてないのかな。

それとも答えたくないんだろうか。

まるで聞こえないフリでもするように強く抱きついてきた。








「えと、ごめん・・・言いたくないなら」
透「やっぱり・・無理だ・・・」
「え?」









透「何度抱かれても・・・お前を好きにはなれない。」









「え・・・」

透「---だから・・・ごめん・・・」









(ちょ---)









ちょ、ちょっと待ってなに今の。


何度抱かれても?
お前を好きにはなれない?

え、え?

それってまさか・・・








俺に対する完全拒否宣言?









(う、うそ・・・!)







まま、待ってよ透ちゃんお願い考え直して。

面と向かってそんなこと言われたら---









リアルに立ち直れない!









「あああのあの・・・透ちゃん本当にごめなさい!」
透「--ごめ・・・」
「今日はもう大人しくするから!」
透「・・・っ・・ッ・・・」
「ね、だから許して--」
透「忍・・ごめん--ッ-」
「透ちゃんあのっ----!」












・・・・・・。









・・・・・・?














透「ごめん----ごめんな、忍・・・」

「しの--」













シノブ?












シノブって












誰?










透「---っ・・・ぅッ・・・!」
「-------!」








首に回された腕に力が篭る。

そして苦しいほど強く抱きついてきた透ちゃんは

とうとう激しく泣き出してしまった。












(-----え、と・・・?)












どうやら透ちゃんは












寝ぼけているらしい。












透「ごめん忍---ごめ・・ッ・・」

「・・・・・・・。」










きっとお酒のせいもあるんだろうけど

俺のこと「シノブ」って人と勘違いしてるみたい。








「透ちゃん・・・」








拒絶されるかもってドキドキしたけど、ゆっくり背中に手を滑り込ませてみた。



言っとくけどさっきの続きをしようなんて変な意図はないよ。

ただ震えながら泣く女の子を放っておくわけにはいかないだろ?

まぁ、さっきのアレが勘違いで余裕が戻ったからともいうけど。








「透ちゃん、泣かないで?」
透「・・っ・・・・ッ・・」









それより透ちゃんは









シノブって人になにをしたんだろう。









だってあの男らしい透ちゃんがだよ?
涙を流して謝ってるんだよ?


きっと・・・

いや絶対とんでもない何かをしでかしたに違いない。












---忍もお前に会いたがってたんだけどな












(あ・・・)









ふと、司くんが言ってた名前を思い出した。







もしかして「シノブ」って司くんが言ってた人のこと?

まあ、有り得なくはないよね。



さっきの会話から考えると司くんも透ちゃんも「忍」とは知り合いみたいだったし

特に司くんは「忍」と仲良さそうな印象を受けた。









でも、透ちゃんは---?









(あれ・・・)









あの時の透ちゃん









様子がおかしくなかった?










それに











---何度抱かれてもお前を好きにはなれない











それって一体











どういう意味?













透「---ぅ・・っ----ごめ・・」










相変わらず泣きながら謝り続ける透ちゃん。







出来ればもういいよって言ってあげたい
今だけでもいいから安心させてあげたい







でも簡単に立ち入ったらいけないような・・・

そんな気がして










「透ちゃん、もう泣かないで・・・」










情けないけど、これしか言えなかった。










透「--っ・・・・ぅッ・・」

「透ちゃん・・・」










震える体をそっと抱きしめる。










なんでだろう・・・

「シノブ」を呼ぶ声があまりにも悲しそうで











俺まで泣きたくなってしまった。


































・・・・GAME・トラブル×トラブル(完)