軽ノリすんな・杉浦

軽ノリすんな・杉浦—1 SAKURA∞SAKU first




「うー、朝か?」






ふと気付くと世界が明るくなっていた。






「う"-。」






これは完全なる朝だな。

だが目は覚めても頭がなかなか覚醒しない。






「・・・顔、洗ってこよ。」






仕方なくもそもそと布団から這い出る。

なんだか体がダルい。






(あれ、ここって・・・どこだっけ?)






なんだか部屋の様子がおかしい。

ここって・・・

私の家じゃない?




・・・あ、そっか。

昨日からこっちに住むんだったな。





昨日の夜は・・・

あぁそうだ。

あいつらと飲んで---






「えーと・・・」






最後の方はぼんやりとか思い出せない。


こんなの久しぶりだ。

結構楽しく飲んでたんだな私。






「だからぐっすり眠れたのかぁ。いい気分だふぁぁ!」






軽く着替えを済ませ、あくびしながら1階へ降りた。

そして顔を洗ってリビングへ。






「今何時だ・・・?」






そういえば時計も見てない--






「・・・よぉ。」

「へ?」






ふと、声が飛んできた。

キョロキョロ周りを見回すと

リビングのソファーに







杉浦真樹。







「・・・おはよう。今日は休みなのか?」

杉「あぁ。」

「ふーん。」






冷蔵庫から100%オレンジジュースを取る。

朝はやっぱり100%だろ。






「うーん、うまい!君もいるか?」

杉「いらねぇ。」

「そ。」






できるだけ他愛もない会話を選ぶ。


こいつは猛獣っぽいからな。

二人きりの時は当たり障りなく過ごそうと思う。

それに昨日あんなことがあったばかりだからな。

警戒警戒。






杉「おい。」

「へいっ!」

杉「・・・・なんだ今のは。」

「い、いや。寝起きなんで。なんでもないっす。」






急に話しかけんな。

思いっきり声が裏返っちまったよ。






「で?」

杉「・・・。」

「で、なんだ?」

杉「・・・。」






声を掛けたくせに一向に話し出さない杉浦君。

なんだなんだと奴の方へ向かう。






(・・・・・?)






何も言わない奴に対面してソファーに座る。

一応警戒は怠らず・・・

ま、ここまで離れてたら大丈夫だろ。






「あの、杉浦君?」

杉「累が昼には戻るから待ってろだと。」






え、累が?






「なんで?」

杉「・・・・引越しの手伝いだろうが。」

「あ、あぁそうか。昨日言ってたな、そういえば。で、累はどこに?」

杉「さぁ。学校じゃねぇか?」






そうか。

昨日のギャルとの一件で今日も手伝ってくれるって言ってたな。

律儀な奴だ。






「そっか。それで、杉浦君は?」

杉「何が。」

「手伝い。」

杉「は?なんで俺が。」

「休みなんだろ?」

杉「そうだが。」

「今日は荷物多くて大変なんだよなぁ。」

杉「知るか。」






やっぱダメかぁ。

今日はでっかいのを運びたかったんだけどな。

馬鹿力孝様に手伝ってもらおうと思ったんだが『仕事だ』と一蹴された。






「気が向かないか?」

杉「向かねぇな。」






くそぉやっぱダメか。

ノリの悪いヤツ。

だが・・・






人手が足りねぇのも事実。






(杉浦真樹・・・)






なんとかてめぇを






吊り上げてみせる。






「あーあ、そうっすかー。残念、今日はマジで大変なのに。」

杉「残念だったな。」

「--------。」






てめぇが言うなよ。






「孝様が手伝ってくれれば何の問題もなかったんだけどなー。あの馬鹿力め、こういう時に力を使わずどこで使うんだ。」

杉「孝?」

「ま、杉浦君も力に自信がないなら手伝ってくれなくて結構ですけどね。」

杉「・・・。」






---俺が孝に負けるわけねぇだろ

言え、食らいつけ。

そして手伝え!






杉「なんで--」






キターーー!

よーし!思い切り吊り上げてやるー!!!






杉「なんで孝が馬鹿力って知ってんだ。」

「え、そっち?」

杉「昨日は手伝ってねぇだろ。」






逆上したところ一気に釣り上げる!を狙ったんですけどね。

食いつき悪ぃなこいつ。

やっぱり少しは大人なんですね。






杉「なんでだって聞いてる。」

「え?まぁ、なんて言うか・・・」

杉「・・・。」

「昨日の夜、孝君をからかって怒らせちまったんだよ。そしたら首絞められて殺されかけて酸欠地獄でさ。」

杉「・・・。」

「暴れてもピクリともしないし。あんな細身のどこに力を隠してんだろうなあいつ。」






接吻のクダリは言わない方がいいような気がしたので伏せておく。

昨日の二の舞になるのはゴメンだ。

警戒警戒。




それにしても思い出したら酸素が足りなくなってきた。

あんのヤロー思い切り締め上げやがって。

覚えてろよ。

いつか必ずギャフンと言わせてやる。






「そんなこんなで奴に力があると判明したわけで---」

杉「それで?」

「は?」






途中で話を遮られた。

ていうか、それでって何。






杉「それだけじゃねぇだろう。」






(え・・・あ、あの・・・)






あ、相変わらず美しいっすねぇ。

あんたが一番!





いやいやそうじゃなくて。





なんすかその顔。

なんか黒い。

なんか笑顔が黒いっすよお兄さん・・・