スポンサーリンク
「・・・・・。」
晋「・・・・・・・・。」
「・・・・・。」
晋「・・・・・・・・。」
言葉も無い。
正に放心状態。
だって・・・
なんで晋があいつを・・・?
「なんで・・・」
晋「?」
「なんで知ってる?」
晋「は・・・」
放心から戻ってなんとか声を出した。
出来ればとぼけてスルーしたい話題だがそういうわけにもいかない。
「まさか・・・アイツと知り合いなのか?」
晋「・・・お前が言ったんだろうが。」
「-----は?」
晋「この前、お前が俺をそう呼んだ。」
「え?」
私が?
お前を?
「よ、呼んでない!」
晋「呼んだ。」
「呼ぶわけないだろ!」
晋「・・・・・・。」
なんで黙るんだよ!
晋「透。」
「な、なんだ!」
晋「シノブってのは、俺じゃないのか?」
「は---?」
な、何を・・・
「お前は、晋だろうが。」
まさか偽名?
晋「トラウマ・・・」
「・・・トラ?」
タイガー?
晋「はぁ・・・」
「?」
目を閉じ額に手を当て深く溜め息をつく晋。
緊張の糸が解けたようにポスッと背もたれに埋もれた。
いやいや待てコラ。
自分だけリラックスするな!
「全然意味が分からん。ちゃんと説明しろよ。」
晋「------。」
「おい!」
晋「------。」
全く反応無し。
まただんまり決め込むつもりか!?
「晋。」
晋「・・・・。」
「説明しろ、頼むから。」
晋「・・・・。」
「晋!」
晋「・・・・。」
くつろいでるところ悪いけど・・・
ちゃんと答えてくれないと困るんだよ!
もし晋とアイツが知り合いだったら
もし晋とアイツに接点があるのなら
アイツが
近くにいる
---ゾクッ!
「-------っ!」
晋「!」
全身に寒気が走った。
「い、言えよ!」
怖い・・・
だが怯んでる場合じゃない。
とにかく、晋はアイツの名前を知ってた。
つまり「知り合い」じゃないにしても「知ってる」のは間違いないはずだ。
「さっさと言った方が身のためだぞ。白状するまで絶対引かないからな!」
気を取り直して対面する晋の下へ向かう。
そして目の前に立ち、上から思い切り睨んでやった。
さあ言え。
お前はアイツの何だ!
晋「俺は---」
「お、おぅ!」
晋「シノブなんて知らねぇ。」
「-----とぼけるなっ!!」
そんなわけあるか!
「自分で名前言っといて知らねぇだと!?名前を知ってるってことはな!そいつのことを知ってるってこと---」
晋「------------寝言。」
「あ!?」
晋「お前が寝言で呼んでた。」
寝言。
寝言だと!?
「嘘だ!そんなのに騙されるか!」
晋「嘘じゃねぇ。」
「私は寝言は言わない派だ!」
晋「この前は言ってた。」
「そんなの---」
---そんなの有り得ない!!
とは言い切れなかった。
そういえばあの日・・・
アイツの夢を見たぞ。
で、でもまさか寝言なんて・・・ねぇ?
寝言言うなんて言われたこともないし?
「あ、あの・・・マジで言ってた?」
晋「・・・ああ。」
「ち、ちなみになんて・・・?」
晋「・・・・・・・・・。」
「さ、差し支えなければ教えてくれ。」
一応確認しとかないとな・・・
そして出来れば間違いであってくれ!
晋「・・・・・・シノブなんか大嫌い。だったと思う。」
「!」
(う、嘘だろー!)
まま間違いない。
信じたくないがそいつは私の寝言だ!
てことはなんだ?
①寝言説は事実
②晋とアイツは無関係。
つまり----
③私の早とちり?
「------。」
晋「・・・・・・。」
どうしよう。
すっげぇ恥ずかしい。
「ご、ごめん。知らないうちに言ってたみたいだ。」
晋「・・・・・・。」
「申し訳ない!」
晋「・・・・・・。」
返事無し。
とぼけるなだの騙されるかだの散々言っちゃったからな・・・
やっぱ・・・怒ってる?
「し、忍ってのはその---昔の友達なんだよ!」
晋「・・・・・。」
「晋も知ってんのかなーと思った!で、でもまさか寝言で呼んだとはなぁ。さすがにビックリ!」
晋「・・・・・。」
「ほほ、ほんと悪かったなゴメン!この話はもう終わりにしような!---な!!」
晋「・・・・・。」
目を逸らして全力で言い訳した。
とぼけないとやってられない。
そして穴があったら埋められたい。
「・・・・・。」
晋「・・・・。」
じ、実に気まずいぞ。
お願いだから何か言ってくれ。
晋「はぁ・・・」
「ぅっ・・・」
溜め息と共に立ち上がる晋。
急に逆転した身長差。
チラッと見上げると相変わらず鋭い視線。
見下ろされる威圧感に後ずさりしてしまう。
晋「なぁ。」
「な、なんでしょう!」
晋「マジで・・・怖くねぇんだな?」
「え。」
な、なんだ?
晋「俺が触っても、怖くねぇんだな?」
な、なんだ。
またそのことかよ。
「だから怖くないって言ってんだろ。」
晋「・・・。」
「本当だって。何度も言わせる・・・な・・・」
言葉が失速してしまった。
なぜなら
ヤツの手がゆっくり近づいてきたから。
「し、晋?」
晋「・・・・。」
睨みつけるような視線はそのまま。
でもなんとなく揺れてるような
少しだけ緊張してるような
そう見えるのは気のせいか・・・?
そしてヤツの大きな手が
頬に、触れた。
(な、なんだ・・・?)
さっきと同じだ。
目も逸らせない。
体も動かせない。
そんな不思議な時間が流れる。
でもさっきと違うのは---
晋に、体を引き寄せられたこと。
「え・・・」
片方の手は頭の後に
片方の手は背中に
そして静かに優しく、力が篭った。
これはもしや・・・
抱きしめられているのか?
「な・・・えっ!?ちょ!おい!コラ!」
焦る、普通に焦る。
「ななっ、何やってんだ!放せ退け離れろ-----ぎゃぁっ!」
思い切り突き飛ばした。
つもりだった。
さっきの静かな抱擁は幻か。
突き飛ばしたと思ったら今度はとんでもパワーで抱きしめられた。
いやいやそんなことより---
なんか近い!!
「ちょ---なんで抱きついてんだよ!!」
意味が分からない。
なんでどうしてここで抱擁!?
晋「なんでって・・・なんとなく。」
「ふ、ふざけんな!さっさと離れろ!」
晋「・・・うるせぇな。」
「んだと!?」
適当なこと言いやがって!
なんとなくで抱きつかれて堪るか!
ていうか---
やっぱりなんか近い!
「マ、マジで離れろ!離れてくれ!」
晋「・・・・イヤだ。」
「このっ---いい加減にしなさい!」
晋「・・・・・。」
無言の抵抗のつもりか。
腕にぎゅっと力が入った。
ワガママ小僧かお前は!
「ちょ・・・てめェ調子に乗るなよ。ドサクサに紛れて何してやがる。」
晋「大人しくしてろ。」
「なんだと。」
晋「・・・・。」
「コラ!」
動けないことをいいことに首元に顔を埋めてきやがった。
さらに髪に指まで絡ませてくる。
図に乗りやがって・・・
いい加減にしないとマジで怒るぞ!
「晋---」
晋「もう少し。」
「だから---」
晋「もう少しだけ、じっとしてろ。」
「---!」
まただ。
抱きしめる腕に、力が篭った。
(ど、どうしたんだこいつ・・・)
行動がヤケに熱っぽいけど・・・
もしかして具合でも悪いんだろうか。
それとも急に人肌恋しくなったとか?
(そ、それにしても・・・)
気付かなくて良かったのに
いや、気付かなければ良かったのに
嫌でも気になることが、一つ。
---晋の触れ方が、優しい。
(ちょ、ちょっと・・・なんで?)
---荒々しい。
一言でいえばこれだ。
この前は正にそんな感じだった。
なのに今は?
髪を撫でる手も
体を引き寄せる腕も
大切なモノに触れてるかのように柔らかくて
傷つけないよう包みこむように優しくて
これじゃまるで
好きな女に触れてるみたいじゃないか。
晋「透・・・」
「---っ!」
ただ名前を呼ばれただけだ。
なのに---
不覚にも、ドキッとしてしまった。
スポンサーリンク