「紙コップって足りるか?」
「うーん。足りると思うんすけど・・・一応足しときましょうか!俺、教室から取って」
「いやいやいいよ。行って来る。」
「え!じゃあ、ヨロシクです!」
「はいはーい。」
現在、もうすぐ昼食前。
怒涛のお客さんラッシュもなんとか終わり、そしてもうすぐ交代の時間だ。
(やっと終わる・・・)
疲れた、本当に疲れた。
そして交代前に紙コップの補充を、と思い教室にやってきた。
「あったあった。」
見たことも無い数の紙コップ。
その中の2袋を掴み取り再び教室を出る。
そして階段をおりて店に戻ろう・・・
と思ったがやめた。
「・・・許せアラタ。」
時計を見ると交代まであと30分だった。
ま、誘惑に負けたわけだ。
ちょっとサボってから戻ろうと思う。
「よっこらしょーっと。うわ、人がいっぱいいる。」
到着したのはサボりの聖地、屋上。
こそっと下を覗くとすごい人ごみ。
まさに祭りだ。
「あ。」
西本と黒田に女子が群がっている。
ずいぶんお疲れのようだが負けるな。
クラスのためにしっかり働け。
「ん?」
アラタが女子に囲まれてる。
どうやらあいつも人気者のようだ。
「アラタのヤツ、顔真っ赤。」
遠くから見るあいつらの様子が面白くて
思わず笑ってしまった。
この姿になって、3週間が経った。
早いというか、まだそのくらい?というか
とにかくすんごい濃い3週間だった。
トラックに引かれたと思ったら無傷で
目が覚めたら高校生になってて
そしてなんと、ここは過去の世界で
それなのに「私」が存在してなくて
戻りたかったのに戻れなくて
怖くてたまらなかったけど
いろいろあったけど
でも、頑張ろうって気持ちになれた。
(まぁ、あれだな。)
そんな気持ちになれたのは西本のおかげだ。
うん、間違いない。
(なんなんだろあいつ・・・)
率先して傍にいてくれたわけじゃない
率先して協力してくれたわけじゃない
なのにどこか優しくて
黙って手を差し伸べてくれて
だからこそ多分、私は折れずにすんだ。
私は、あいつのおかげで笑えてる。
(年下のくせに・・・)
考えてみたらあいつって年下だよな。
妙に大人っぽいところがあるしあの顔のせいであんまり感じないけど。
でもまぁ・・・
将来のことで悩みもあるみたいだし
たくさん助けてもらったし
これからはビシッとリードしてやろう。
なんせ私って大人だし。
ま、自分の進路も考えないといけないんだけどな。
(進路かー)
まさかねぇ。
もう一度進路を考えないといけない日が来るなんて思ってもみなかった。
進路とか受験とか
正直言って面倒くさい。
でも第二の人生
特別大きな幸せはいらないけど
明るく楽しく生きていきたいから
いっぱい悩んでいっぱい笑って
元気に前に進もうと思う。
もちろん
あいつも一緒に。
「やっぱりここにいた。」
「え?」
ドアが開く音と共に背中に声がぶつかる。
「あれ、見つかっちゃったか。」
振り向いたら、西本がいた。
まさかまさかの—?05 realReal
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