九割説明不足

九割説明不足—4 SAKURA∞SAKU first


突然破られた沈黙。





犯人はくりくりっとした目の男の子。

髪の毛さらさらだ。

羨ましいねぇ。






(えと、誰だっけ?)






とりあえず資料を捲ってみる。






「えーと、神崎--」

「累!女性に向かって"お前"ってなんだ!」

「なんだよ。うるせぇな。」






ぱーんと膝を鳴らし、別の男が乱入してきた。


明るい茶髪を後ろで短く結んで・・・

なんともお綺麗な顔の美青年だ。

で、こいつは






「君は神崎君で、そっちの君は」

「累でいいぞ。」

「神崎---累君。」






(神崎累。累君ね。)






「姫、俺のことは純って呼んでね。」






・・・おい美青年。

姫、ですと?

なにそれ背筋が寒い。






「じゅ、純君ね。」






天宮純。

ジャンルが読めない。






「今回はどの位だろうなぁ。」

「一週間もてばいいんじゃねぇ?」






沈黙が崩れればどんどん喋り出す男共。


今度は黒目黒髪の中性的な美人さん。

そして深い紺色がかった髪を持つ、これまたモデルもビックリな造形物のような美男子。

俗に言うカッコいいんだろうお兄さん達が

クツクツ笑いながら会話を交わす。






「お宅らはえーと・・・杉浦君に-----ゴ、ゴジュウアラシ君か?」

「ククッ。」

「・・・笑うな。てめぇもバカな間違えすんじゃねぇ。イガラシだ。」

「え、あ・・・すみません。五十嵐君。」






普通に読めなかった。

地味に恥ずかしい。






(杉浦真樹に五十嵐孝か・・・)






杉浦君は---同年?

他は・・・年下が多いんだな。

いそいそと資料をめくり情報をチェックする。






「おいおい、いきなりビビらせんじゃないよ。せっかく来てくれたんだから。」






ふと、別の男が口を挟む。

5人の中で一番落ち着いて見えるその男。

無造作に流れるグレーがかったふわふわ猫っ毛を揺らし、にっこり微笑みをよこしてきた。

それ、地毛っすか?






「えっと、君は高野--」

「"要ちゃん"って呼んでね。」

「か、要・・・"ちゃん"?」

「そうそう、そう呼んで。」

「・・・はぁ。」






"高野要"

なんで"ちゃん"呼び?

もしかしてそっちの人?






(・・・だ、大丈夫かこいつら。)






---なんだかんだ言ってうまくやっていけそう


初対面って、大体こんな感じでまとまるもんじゃねぇ?



なのになにこれ。

初日からがっつり心が折れそうなんですけど。






(マジでしくじった・・・)






住んでる家、今月いっぱいで解約済み。

旦那との契約も今更断れない。

毎度のことながらつくづく自分の軽率さを悔やむ。






(はああぁぁぁ・・・)






心の中で頭を抱える。





まぁでも・・・

軽率かつ適当なのは今に始まったことではないからな。

悔やんでも仕方ない。

そして現実も変わらない。

今後のためにもう少し情報収集しようと思う。







「ところでさっき杉浦君が言ってた・・・"今回は"ってどういうことなんすか?」







もしや---






やはり幽霊か?