九割説明不足

九割説明不足—2 SAKURA∞SAKU first

ちなみになんでこんなことになっているかというと






事の発端は2週間前。






わたくし、坂本 有希。






年齢、自称永遠の二十歳。

『何歳なのー?』と聞かれれば

『もう忘れました~』と答える中途半端なお年頃っす。



仕事は趣味の延長に小さく実を結びつけ

PCを駆使してちまちま活動している次第であります。

まぁ、カッコ良く言えばITフリーランス。

リアルを言えば自宅で引きこもりというわけですな。






そんな私にちょい先日

公私共にお世話になっている、不動産屋の旦那が声をかけてきた。






そしてろくに内容の確認もせず二つ返事。






「いいっすよー」






軽くアルバイトを引き受けてしまった。





内容は、旦那が管理する物件の管理人。






---楽勝だな






なぜなら私はほぼ自宅に引きこもった生活をしている。

仕事といえば家でPCと睨めっこ。

愛するPC群とネットが繋がる環境があればOK。



つまりその管理人のバイト・・・

「生活スタイルを崩すことなく給料ゲット可」

てことだよな?



なんてステキなご提案。

ウハウハが止まらない。







今思えば







奴にとって私は

都合の良いカモだったに違いない。







旦「なんでか分かんないんだけどね?この桜館っていう物件の管理人が長続きしないのよ。」

「管理人?なんか大変そうっすね。」

旦「老若男女雇ってみたんだけどねぇ。ほとほと困っちゃってさ。」

「ふーん。」

旦「内容は簡単なんだよ?」

「?」

旦「家が壊されないよう見ていてくれればそれだけでいいんだよ。条件も良いと思うし、アルバイト希望者の食いつきはいいんだけどさ。」

「壊されるって・・・一体何が住み着いてんですか。」

旦「例えだよ例え。ここ、結構な豪華物件でさ。持ち主から管理人をつけて欲しいって言われてるってわけ。」

「そーなんすか。」

旦「なのにほら不思議。なぜか皆すぐ辞めちゃうんだよねー。」






見てみろいと言わんばかりに突き出される分厚い書類。

興味は無いが、とりあえず手にとってみる。






「なんすかこれ。」

旦「歴代桜館の管理人。一昨年からの。」






一昨年から?

・・・って、おいおい。

一体何人歴代がいるんだよ。


え、勤務日数3日・・・?

3日ってあんた。

あ、1日って奴もいるんですけど。





ぱらぱら捲っただけで勤務1週間以内の人を多数発見。

もしや・・・

いやいやこれは確実に---






「こ、ここって---まさかのまさか幽霊屋敷!」

旦「そんな報告一度も---」

「実は庭に大きな桜の木が立っていて・・・その根本にはヒトリ、フタリ、サンニン・・・」

旦「ないないないない絶対ない。」

「ほんとか?」

「そこでさぁ有希ちゃん。チラッと管理人頼まれてくれないかなぁ。」

「え、私が?なんで。」

旦「有希ちゃん、図太そうじゃん。」

「・・・・・・・・。」






悪びれる様子も無くサラッと言われると

全然腹も------

立つ。






旦「部屋も角部屋!広さも十分!」

「そんなんじゃ私は動かな--」

旦「そしてなんと!!次回の飲み会、俺が奢っちゃうから!!」

「えっ、マジで?よし乗った!いいっすよー!」






何を隠そう『次回の飲み会』にグラっときた。

やったーラッキーなんて思った。






旦「おぉー!!有希ちゃんならやってくれるって信じてたよー!」

「調子いいなぁ。あはははっ。」