九割説明不足

九割説明不足—10 SAKURA∞SAKU first




「さぁて・・・今日はそろそろおいとまします。」






独り言を言いながら階段を降りる。

要ちゃん、杉浦君、五十嵐君の3人はまださっきのソファーに座っていた。






「えーと、今日は帰ります。遅くまでスミマセンでした。」

要「え?もう帰っちゃうの?」

「もう23時過ぎてますよ?」

累「今から飲みに出るくせによく言うよ。」

「ちょ---ばかっ!それは言うなよ空気読めよ!」






今の流れでそれはねぇだろ。

立場がなくなるじゃんか。






孝「今から飲みに?-----あぁ、男か。」

「まあ、相手は男っすよ。」

孝「そういう意味じゃ---」

累「彼氏じゃないらしいぞ?」






五十嵐君の会話を累君が遮る。

さっきも同じような会話しなかったか。






要「彼氏以外の男とこれから飲むの?彼氏、心配するんじゃない?」

「大丈夫。彼氏いないんで。」

孝「寂しい奴。」

「別に寂しくないし、彼氏なんかいらないっすよ。」






置きっぱなしにしていた資料を鞄に突っ込みながら答える。

さっきから彼氏彼氏ってそんなのどうでもいいじゃん。

彼氏なんていらねぇしお前らにも関係ねぇ。






杉「いようがいまいが関係ねぇ。さっきは俺の誘いを断っておいて・・・今から他のヤローと密会するだと?いい度胸してんじゃねぇかてめぇ。」

「・・・・・・・・・・。」






・・・誘ってたんじゃねぇだろさっきのは。






「ばかですか君は。しかも密会って何。相手はただの友達っすよ。女として見られてもない---」

純「女の子を女の子として見ない?そんな男がいるの?」

杉・孝「そんな奴はいねぇ。」

累「そうだよ。」

要「うーん、やっぱり危ないんじゃない?」

「・・・・・・・・・・・・。」







杉浦君と五十嵐君、再びハモっちゃったね。

ていうか・・・

なんで団結しているのか良く分からない。






(あぁあれか・・・)






逆の立場から考えたらってヤツか。

自分らだったらこの時間から出てくる女子は全てエサと見なす、的な?

狩られるよりも狩って狩って狩りまくりそうなタイプですもんねお宅ら。






「えーと、まぁ・・・あれっすよね。皆さんイケメン揃いで経験たっぷりって感じですもんね。でも私は相手のヤローを男として見ていないんで大丈夫です。」

「「「・・・・・・・・・・・・・。」」」

「ていうかなにこの会話。意味分かんないんすけど。お前らもしかして、私の------父ちゃん?」






変な空気になりつつあるので

ここはオチャメに振ってみた。






要「と、父ちゃんって・・・酷いなぁ。」

純「百歩譲って兄貴でしょう?」

累「そうだよ。」






・・・兄貴?

え、何を言ってるんだ君達は。






「まぁ、父ちゃんはないにしても兄貴もねぇな。」

純「なんで?」

「なんでって・・・私、要ちゃん、杉浦君と同い年っすよ?どっちかと言うと皆の姉貴でしょうが。」

純・累「えっっ!?」

「え。」

「「「・・・・・・・・・・。」」」






なんだそのリアクションは。

どう受け止めればいいんだよ。

他の三人は声も出ず。

なんて失礼な奴らだ全く。






「ま、そういうわけで帰ります。」

純「え・・・う、うん。飲みすぎないようにね?」

「え、なんで?」






既に玄関に到着して靴に足を突っ込む私。

すると背中から純君の声がぶつかる。






純「なんでって・・・誰だって心配するよ。もう遅いから。」






(ふーん・・・)






チラッと後を振り向くと心配そうな顔をする純君。

そして見送ってくれるらしい要ちゃんと累君。

こいつら、遊んでるっぽいけど女の子には優しいんだろうか。






(まぁでも・・・)






「ありがとね、純君。でも、今日も飲むぞー!!さっきも言ったけど私ったら飲まないと眠れないんでね。今度暇な夜は付き合ってくれよ?」

純「え?」






時計を見ると電話がかかってきてから20分も過ぎている。

やばい。

無いとは思うがふて腐れて帰られたら困る。






「おーっとだいぶ時間が経っちまった。それじゃあ皆さん、また後日!お休みなさいねー。」






呆然と立ち尽くす住人どもにニカッと笑顔をプレゼントし、家を出た。










「さてさて!」










飲みの場所は歩いて行ける距離。

だが時間もロスしてしまったので・・・

たまたま通りかかったタクシーに乗り込んだ。












要「なんか・・・変なのが来たなぁ。」

純「変なのって・・・まぁ、変わってるとは思ったけど。」

累「俺は今までの中で一番スキだぞ。」

純「ちょっと累、変な気起こすなよ?もう管理人がころころ変わるのは嫌だからね。」

累「さぁな。」



杉「・・・・・なんなんだあの女は。」

孝「フられた上に他の男に会いに行かれたんじゃぁ立つ瀬もねぇなぁ。」

杉「うるせぇ黙ってろ。」

孝「指図すんじゃねぇよ。」



要「まぁまぁ2人とも。それにしてもあいつ、俺らと同い年だって?」

杉「ああ。」

純・累「・・・・見えない。」

杉「管理人のバイト、なかなか給料がいいって前の奴が言ってた。年齢誤魔化してんじゃねぇのか。」

孝「年齢偽って乗り込んで来たのか?いい度胸だ。返り討ちにしてやる。」

要「返り討ちって…ほどほどにしろよ?まぁ面白そうな奴だし、適当に遊んでやろうじゃないの。」


純・累「・・・・・・・・はぁ。」













---九割説明不足(完)