3ON3

3ON3—2 SAKURA∞SAKU first

「へぇ、結構でっかくやってるんだなぁ。」

 

会場は最近出来たらしく、全てが真新しかった。

それにしても人がわんさかいてビックリ。
食べ物やらドリンクやらも売ってるし…

正に祭りだ、祭り。

 

累「俺、先輩に挨拶してくる。ついでに試合時間聞いてくるから。純、有希を頼んだぞ!」
純「了解。」
累「有希、一人でどっか行っちゃダメだよ?」
「分かってるよ。ほら、行って来い。」

 

私の頭をぽんぽんと叩き、累は先輩とやらの元へ向かって行った。

ていうか…

 

「なんで私が累にガキ扱いされてんだ?」
純「姫のことが心配でたまらないんだよ。」
「なんだそれは。」
純「色んな意味で。」
「余計に分からん。」

 

クスクス笑う純くん。
君の笑いの意味も分からん。

 

「それにしても久々だなぁこういうの。なぜかワクワクするよな。」
純「え、姫ってこういうの苦手そう・・・」

 

うーん、良く言われます。

面倒臭がりだからだろうか。

でもスポーツ大好き。
祭りはもっと好きだな。

 

「別に苦手じゃないぞ?バスケは本格的にやったことないけど・・・こう見えてスポーツは得意だ。」
純「えー!?嘘だぁ!」
「なんだとコラ。」
純「何もないところでもこけそうに見えるよ?」
「そんなアホはいねぇ。ていうか純君、君も大変失礼な奴だったんだな。」

 

"苦手そう"ってそっちの意味だったのかよ。

何もないところでどうやってこけるってんだ。
逆に難しいわ。

 

「あ!純君、後であれ食べようぜ!あ、あっちもいいな。うわ・・・悩む。」

 

いい匂いにつられて周りを見回すとなんとも美味そうな食べ物がたくさん。

そういや朝メシ食ってねぇ。
腹減った。

 

純「悩まなくても後で全部買ってあげるよ。」
「コラコラ…」

 

桜館に住んでるからもしやとは思ってはいたが・・・
金に困ったことがないんだろうな純君も。

 

「あのなぁ、全部手に入れたら面白くねぇじゃん。」
純「なんで?」
「手に入らないモノがあるからその中の一つがとっても美味しいんだぞ。」
純「すごい考えだね。」
「それが当たり前なんだ!」
純「そうかなぁ。」
「------。」

 

…仕方ない。

君も私が少しずつ教育してやるから。
立派な大人になりなさい。

 

『あ!天宮さんだ!』
『本とだ!かっこいいー!』

 

ふと、女子による黄色い声が耳に飛び込んできた。

別に地獄耳ってわけじゃない。
つまり、聞こえても全然オッケー的な羨望の声…

 

(天宮さんって・・・)

 

キョロキョロ見回すと女子達の視線は私の隣…

あーそうでした。
君は天宮純くんでしたね。

そこかしこから憧れの声やら視線が飛んでくる。

ま、純君にもファンがいておかしくない。
この子もかなりのイケメンだからな。

 

「オモテになるんですねぇ王子も。」

 

ニヤリ笑いでからかってやった。

 

純「王子って・・・まぁ女の子は皆好きだけど。今は姫がいれば十分だよ。」
「なんだそれは適当だな王子。ま、累みたいに利用しないでちょうだいよ?後々面倒っぽいし。」
純「どうだろ。」

 

どうだろってなんだ。
君だけは私の味方ではなかったんですか。

 

『きゃぁぁ!』

「?」

 

突然、黄色い声がドカンと大きくなった。
そしてその波がこちらに近づいてくる…

あぁ、なるほど。
原因はあいつだ。

キューティー累たん。

 

累「ごめーん遅くなって!試合、次だって!」
純「随分早いな。ギリギリだったんじゃないか?」
累「有希がなかなか了承してくれなかったから。」
「私のせいか?」

『2人ともカッコいいー!』
『同じチームでしょ?応援しなくちゃ!』
『ちょっと!あの女の人誰!?』

 

 

(・・・・・・・・・。)

 

 

純君。
累たん。

 

女子の視線が非常に痛いです。

 

(…参ったね、こりゃ。)

 

思わず頭を掻く。

できれば関わりたくないというか・・・
若者は若者同士で色々やってください。

 

累「行こ!もうすぐ出番だよ。」
「・・・うーっす。」

 

そうだそうだ、とにかく試合だ。

やるからにはとことんやってやる。
覚悟しろ、相手チームよ。

 

「よっこいしょーっと。」

 

とりあえず、準備運動だけはしっかりしなければなるまい。
色んな部分がブチ切れるのはごめんだ。

 

累「有希は適当に動いてくれればいいからな。」

 

えいやーとアキレス腱を伸ばしていると累が話しかけてきた。

 

「え、ヤダよ。やるからにはばちこん張り切るぞ。」
累「えー?でもこけて怪我したらどうするの。」
純「ほらね?」
「・・・君達は私を何だと思ってんだ。」
累「強がらなくていいって。」
「・・・・・。」

 

あっそ。
そうくるんですか。

 

「じゃぁ累たん。この試合で私が10本ゴール決めたら今日は徹夜で仕事手伝えよ?」
累「えー、そんなこと言っていいの?じゃぁ決められなかったら?何してくれる?」
「なぁんでもしてやる。」
累「え・・・な、なんでも・・・?」
「あぁ、なんでもだ。」

 

じゃあ、と何か呟く累に純君が一発食らわす。
一体何を考えているんだ。

まぁ、何を考えていようと

その願いが実現することはねぇ。

 

 

「約束だからな!」

 

 

見てろ。

てめぇらのイメージ。

 

(けちょんけちょんにしてやるよ。)

 

久々に燃えてきた…

 

清らかな汗を流すスポーツ。

損得関係のない熱き青春の元に!

 

そして私の仕事の為にー!!!

 

『ピーッ!!』

 

試合開始だぁ!