秘密

秘密—–4 GAME


部「じゃぁ、日下を宜しくお願いします。」

「い、いや!だから!部長ーー!」

辰「ご心配なく。責任持ってお送りします。」

 




予想通り。
こうなった。

なんとか部長の家で一緒に降りようと足掻いた。
部長の家に忘れ物した!とか、話があるんで!とか。

お前は私の家に来たことがないじゃないかぁ。
話なら月曜に聞くから!

即答であしらわれてしまった。

頼むよ部長!
私を置いていかないでくれ!

 




「ちょっ---部長ーー!」

部「日下、また月曜にな!」

辰「では、失礼します。」

部「気をつけて。」

「ちょっと待って----」

 




無理矢理降りようとさっきから試みている。

だが・・・鍵が開かない!
木戸のヤロー、ロックしやがったなぁ!?

 

ゆっくり発進する車。
なんとか窓をこじ開けて顔を乗り出す。

一生のお願いだ!
助けてくれ部長!!

 




(ちがーーーう!!!)

 




車を見送る部長。

そしてなんと右手の親指をカッ!と立てやがった。

そっちじゃない!
今の私の状況はその逆なんだよ!!

 




(頼むよ部長ォォォーーー!!)

 




どんどん小さくなる部長に心の中で訴える。

そして部長は見えなくなった。

 

 




 

「残念だったね。」

「・・・・・・・・・・・。」

 

 



 

隣から聞こえる声。

 

もちろん・・・・辰巳さんだ。

 

なぜ隣にいるのか。

それはもちろん、部長を降ろした後そのまま乗り込んできたからだ。

 




辰「松田さん、透ちゃんの訴えに全然気付かなかったね。」

「・・・・・・・・・・。」




 

チラッと目を向けるとこっちを見てクスクス笑いながら足を組む。

急に態度豹変しやがって。
なんてヤローだ。

 



 

「はぁ・・・・・・・」



 

 

思わず溜め息が出る。
そりゃ出るだろ。

 




辰「疲れた?」

「疲れた。家に帰る。」

辰「そうだね。早く帰ろう?俺の家に。」

「あんたなぁ!」

 




叫んだ。
そりゃ叫ぶだろ。

 




「私の家に行け!ダメならここで降ろせ!」

 




ビシッと指差しガン垂れてやった。

今日鉢合わせたのは仕方が無い。
仕事だからな。

だがそれ以上はゴメンだ。
バカみたいなゲームに付き合うつもりは更々無い。

 




辰「透ちゃんの家でデートするの?」

「何がデートだ!帰るんだよ!」

辰「何言ってるの。今日はデートする約束だっただろ?」

「そんな約束してない。」

辰「えー、したじゃん。なぁ、木戸?」

木「はい。」

辰「ほら。」

「ほらじゃない!!」

 




木戸め。
分かってはいたが変態の味方なんだな!

 




「デートなんかしないって言ってんだろ!おいコラ木戸!ロックを外せ!降りる!!」

木「危ないですよ?」

「大丈夫だ!」

辰「こらこら。大丈夫じゃないよ。危ない。」

「黙ってろ!」




 

危ないことくらい分かってんだよ。

だがこのままじゃ辰巳ホームに連行されてしまうじゃないか。

走行中だがやむを得ない。
ドアをガタガタやってみる。

 




辰「もう・・・ワガママなんだから。」

「-----うわっ!!」

 




ウエストに腕が絡まってきた。
後に引かれて背中が辰巳さんにぶつかる。

 




辰「んー、久々の透ちゃんだー。やっぱり透ちゃんっていい匂い。」

「やややめろっ!触るな!!」

 




後からぎゅーっと抱きつかれる。

木戸さんがいるってのにお構い無しだ。
さすが変態。

ていうか------

 




「放せ!離れろ!!」

辰「絶対イヤ。ねぇ、俺の家に行こう?」

「絶対イヤだ!」

辰「そんなこと言っていいの?」

 




思い切り暴れるとグッと腕に力が篭る。
そしてクスクス笑いながら耳元で囁いてきた。




 

「やめろっ近い!」

辰「透ちゃん、何か忘れてない?」

「忘れてない!」

辰「ふーん。じゃぁアレは俺が貰ってもいいんだ?」

「アレ?アレってなんだよ!」

辰「えー?言っていいの?」

「なんだよ早く言えよ!」

 

 

辰「透ちゃんの、可愛い下着。俺の家で預かってるけど?」

 

 


木戸さんに聞こえるか聞こえないか程の小さな囁き。

だが私の耳には確かに聞こえた。

 




(私の可愛い下着・・・・だと?)

 




下着・・・・
下着って・・・・あの下着?

 

「何言ってんだ。なんであんたが私の下-----はっ!!」

辰「思い出した?」

「------------。」

 




(そ、そういえば・・・)




 

私の下着。
確かにこいつの家にあるはずだ。

なぜなら初めて会ったあの日、私は下着を着けずに家に帰ったからだ。

つまり私の可愛い下着ちゃんは・・・
こいつの家に保管されている!!

 




「・・・・・・・・返せ。」

辰「どうしようかな。」

「もしくは捨てろ。」

辰「それはイヤだ。」

「じゃぁ返せ!」

辰「俺の家に来る?」

「------!」

辰「来るよね?」

「・・・・・・・・。」

 




(・・・・・・・なんてヤローだ。)

 




会社を出るまで逃げ切る自信満々だったのに。
完璧に逃げ切ったと思ってたのに。

結局、こいつの思惑通りになってないか?

 

 



「・・・・返してもらってすぐ帰る。」



 

 

辰巳ホームに行かないのが最善。

だが下着は返してもらいたい。

当たり前だろ。
放っておいたら何に使われるか分からない。

 



辰「ん、分かった。」

「------こ、こらァッ!」

 



チュ・・・と頬に唇を当てて体が離れていく。

 



辰「・・・・・相変わらず酷いね。今日も心が折れそう。」

「折れろ。そして復活するな!」

辰「・・・・・・・・。」




 

あまりの節操の無さにイラッとしたので。

 




あからさまに頬を拭いてやった。