秘密

秘密—–14 GAME

「・・・・・・帰る。」
辰「え?」

 

とりあえず帰ろう。

疑問やらショックやらで頭の中ぐちゃぐちゃだ。
家に帰って落ち着きたい。

 

辰「帰れないでしょ。」
「帰るんだよ----ぅっ!」
辰「ほら。まだ動けないだろ?」
「・・・・・・・・・。」

 

忘れていた。
腰が痛くて堪らない。

ゆるゆると腰を撫でる変態。
ムカつくがちょっと気持ちいいぞ。

 

辰「今日はゆっくり休んでいきなよ。」
「遠慮しときます。出来れば家まで送ってください。いや送れ。」
辰「せっかくの休みだしね。もうちょっとゴロゴロしよっか。」
「聞けよ-----いででで!!」

 

もー!と言いながら抱きついてくる。
頼むから腰をさすってくれ。

 

辰「ねぇ透ちゃん。」
「なんだ。その前に離れろ、苦しい。」

 

非常に悔しいが体が痛くて暴れることが出来ない。
自主的に離れてくれると有り難いんですが。

 

「聞いてんのか。」
辰「・・・・・・。」
「こら!」

 

 

辰「昨日は・・・・ゴメン。」

 

 

「・・・・・・・は?」

 

昨日はゴメン?
え、悪かったと思ってんの?

 

「なんだ、辰巳さんにも罪悪感という感情が備わってたんですね。」
辰「・・・・。」
「ていうか悪いと思うなら一回分返せ。」
辰「嫌だ。」
「それと今後一切あんなことするな。」
辰「それも嫌。」
「・・・・・・・。」

 

あれも嫌、これも嫌。
意味が分からないんですけど。

 

「・・・じゃぁなんで謝ってんですか。」

 

とりあえず謝っとけーみたいな感じ?
もしそうなら・・・ふざけんなよー!!

 

辰「---怖がらせたから。」

 

(・・・怖がらせた?)

 

確かに・・・怖かった。

声まで聞こえて・・・
パニックに陥りそうになった。

けど。

 

「・・・辰巳さんが怖かったわけじゃない。」

 

この男を肯定するわけじゃないけど。
「怖がらせたから」に対する返事ってことね。

 

辰「・・・・・・・ねぇ。」
「いてっ!」

 

急に体を起こし、上に圧し掛かってくる。
そして・・・変態のくせにヤケに真剣な表情。

ていうかいきなり動かすな。
腰が痛いんだよ。

 

辰「なんであんなに怯えるの?」
「・・・・・・・・・・・・。」

 

昨日も・・・同じようなこと聞かなかったか?

 

「・・・あんたには関係ない。」

 

真剣な目で見つめてくる。
負けずにその目を見つめ返して、昨日と同じ返事を返した。

辰巳さんは目を逸らさない。
非常に気まずいが頑張って視線に耐える。

 

辰「お前のこと・・・本気で落としたくなった。」
「・・・・・・・・・は?」

 

急に緊張が解けたと思ったらふっと微笑まれた。

話が全然繋がってませんが・・・
もしや寝ぼけてる?

 

辰「早く俺を好きになってよ。」
「・・・まったく意味が分かりませんが。」

 

本当に意味が分からない。

それに何度も言うがイラッとするくらい綺麗な笑顔を向けられた。
こいつの場合、綺麗な上に余裕をうかがわせるから尚更ムカつく。

いやいやそうじゃなくて!

 

「落とすもなにも。ゲームは辞退させて頂きますからね。」
辰「何言ってんの。」
「エッチ付きゲームなんかに付き合ってられるかって言ってんだ。何と言われようと全力で逃げてやる。」
「ふーん。」

 

綺麗な笑顔に対抗して悪い笑顔を返した。

約束しておいて悪いけど、こんなのに付き合う義理は無い。
全身全霊をかけて逃げ切ってやる!!

 

辰「逃げられるもんなら逃げてみろよ。逃げられない状況なんて簡単に作れる。昨日みたいに。」
「昨日みたいにって-----は!」
辰「仕事、頑張ろうね。日下さん。」
「あ----ぁ・・・あぁぁあぁーーー!!」
辰「また忘れてたの?」

 

そ、そうだった。
そうだった!!

蘇る昨日の悪夢。
あんなに驚いたのは生まれて初めてかもしれない。

 

「こんなちゃらんぽらんがS社・・・」
辰「ちょっと待って。誰のこと。」
「しかも同い年?・・・信じられん。」
辰「そうだよねぇ。どう見ても3、4才は年下だと思ってた。」
「あんたがな。」
辰「俺が年下?それは有り得ないでしょ。」
「こんなちゃらんぽらんが・・・・」
辰「それやめてよ。」

 

世の中間違ってる。
なんかこう・・・全部が間違ってる!

 

辰「ところで透ちゃん。」
「なんだ。」
辰「約束をすっぽかすのは無しにして?」
「は?」

 

再び真面目な顔で見つめてくる。
今度は一体なんだ。

 

「な、なんだよ・・・」
辰「昨日みたいにすっぽかそうとしたら・・・今度はマジでお仕置きするからな。」
「は・・・・」

 

 

辰「俺も・・・出来れば乱暴に抱きたくない。」

 

 

 

だ、抱くって・・・

 

「なななに言ってんですか!もうあんたとエッチすることは----」
辰「約束しろ。」
「だだだから!!」
辰「透・・・・」
「ひッ・・・ひぃぃぃーーーーー!!」

 

ゆっくりと顔が近づいて来る。

 

「ちょ----近づくなぁっ!!」

 

必死に首を振る。
やめろやめろやめてくれ。
体が痛くて動けないんだよ!!

 

「わわ分かった!出来るだけすっぽかさないようにする!」
辰「出来るだけじゃなくて絶対。連絡も無視するな。」
「わわ分かった!分かったから近づくな!!」
辰「絶対だからな。」
「約束するから!」

 

もう少しでくっ付く寸前で動きが止まる。
そして「よし」と笑って遠ざかっていく。

 

(意味が分からない・・・)

 

落とすっていってもたかがゲームだろ?

なんでこんなに頑張るんだ?
そんなに勝利したいのか?

そこら辺のコダワリがいまいち分からない。
まぁ、分かりたくも無いけどな。

チラリとヤツを見るとお着替えタイムだ。

 

「・・・・・・・はぁ。」
辰「どうした?」
「・・・・別に。」
「そう?」

 

なんかもう・・・

夢ならマジで覚めて欲しい。

 

 

 

 

 

・・・・・・Game・秘密(完)