「・・・・・・帰る。」
辰「え?」
とりあえず帰ろう。
疑問やらショックやらで頭の中ぐちゃぐちゃだ。
家に帰って落ち着きたい。
辰「帰れないでしょ。」
「帰るんだよ----ぅっ!」
辰「ほら。まだ動けないだろ?」
「・・・・・・・・・。」
忘れていた。
腰が痛くて堪らない。
ゆるゆると腰を撫でる変態。
ムカつくがちょっと気持ちいいぞ。
辰「今日はゆっくり休んでいきなよ。」
「遠慮しときます。出来れば家まで送ってください。いや送れ。」
辰「せっかくの休みだしね。もうちょっとゴロゴロしよっか。」
「聞けよ-----いででで!!」
もー!と言いながら抱きついてくる。
頼むから腰をさすってくれ。
辰「ねぇ透ちゃん。」
「なんだ。その前に離れろ、苦しい。」
非常に悔しいが体が痛くて暴れることが出来ない。
自主的に離れてくれると有り難いんですが。
「聞いてんのか。」
辰「・・・・・・。」
「こら!」
辰「昨日は・・・・ゴメン。」
「・・・・・・・は?」
昨日はゴメン?
え、悪かったと思ってんの?
「なんだ、辰巳さんにも罪悪感という感情が備わってたんですね。」
辰「・・・・。」
「ていうか悪いと思うなら一回分返せ。」
辰「嫌だ。」
「それと今後一切あんなことするな。」
辰「それも嫌。」
「・・・・・・・。」
あれも嫌、これも嫌。
意味が分からないんですけど。
「・・・じゃぁなんで謝ってんですか。」
とりあえず謝っとけーみたいな感じ?
もしそうなら・・・ふざけんなよー!!
辰「---怖がらせたから。」
(・・・怖がらせた?)
確かに・・・怖かった。
声まで聞こえて・・・
パニックに陥りそうになった。
けど。
「・・・辰巳さんが怖かったわけじゃない。」
この男を肯定するわけじゃないけど。
「怖がらせたから」に対する返事ってことね。
辰「・・・・・・・ねぇ。」
「いてっ!」
急に体を起こし、上に圧し掛かってくる。
そして・・・変態のくせにヤケに真剣な表情。
ていうかいきなり動かすな。
腰が痛いんだよ。
辰「なんであんなに怯えるの?」
「・・・・・・・・・・・・。」
昨日も・・・同じようなこと聞かなかったか?
「・・・あんたには関係ない。」
真剣な目で見つめてくる。
負けずにその目を見つめ返して、昨日と同じ返事を返した。
辰巳さんは目を逸らさない。
非常に気まずいが頑張って視線に耐える。
辰「お前のこと・・・本気で落としたくなった。」
「・・・・・・・・・は?」
急に緊張が解けたと思ったらふっと微笑まれた。
話が全然繋がってませんが・・・
もしや寝ぼけてる?
辰「早く俺を好きになってよ。」
「・・・まったく意味が分かりませんが。」
本当に意味が分からない。
それに何度も言うがイラッとするくらい綺麗な笑顔を向けられた。
こいつの場合、綺麗な上に余裕をうかがわせるから尚更ムカつく。
いやいやそうじゃなくて!
「落とすもなにも。ゲームは辞退させて頂きますからね。」
辰「何言ってんの。」
「エッチ付きゲームなんかに付き合ってられるかって言ってんだ。何と言われようと全力で逃げてやる。」
「ふーん。」
綺麗な笑顔に対抗して悪い笑顔を返した。
約束しておいて悪いけど、こんなのに付き合う義理は無い。
全身全霊をかけて逃げ切ってやる!!
辰「逃げられるもんなら逃げてみろよ。逃げられない状況なんて簡単に作れる。昨日みたいに。」
「昨日みたいにって-----は!」
辰「仕事、頑張ろうね。日下さん。」
「あ----ぁ・・・あぁぁあぁーーー!!」
辰「また忘れてたの?」
そ、そうだった。
そうだった!!
蘇る昨日の悪夢。
あんなに驚いたのは生まれて初めてかもしれない。
「こんなちゃらんぽらんがS社・・・」
辰「ちょっと待って。誰のこと。」
「しかも同い年?・・・信じられん。」
辰「そうだよねぇ。どう見ても3、4才は年下だと思ってた。」
「あんたがな。」
辰「俺が年下?それは有り得ないでしょ。」
「こんなちゃらんぽらんが・・・・」
辰「それやめてよ。」
世の中間違ってる。
なんかこう・・・全部が間違ってる!
辰「ところで透ちゃん。」
「なんだ。」
辰「約束をすっぽかすのは無しにして?」
「は?」
再び真面目な顔で見つめてくる。
今度は一体なんだ。
「な、なんだよ・・・」
辰「昨日みたいにすっぽかそうとしたら・・・今度はマジでお仕置きするからな。」
「は・・・・」
辰「俺も・・・出来れば乱暴に抱きたくない。」
だ、抱くって・・・
「なななに言ってんですか!もうあんたとエッチすることは----」
辰「約束しろ。」
「だだだから!!」
辰「透・・・・」
「ひッ・・・ひぃぃぃーーーーー!!」
ゆっくりと顔が近づいて来る。
「ちょ----近づくなぁっ!!」
必死に首を振る。
やめろやめろやめてくれ。
体が痛くて動けないんだよ!!
「わわ分かった!出来るだけすっぽかさないようにする!」
辰「出来るだけじゃなくて絶対。連絡も無視するな。」
「わわ分かった!分かったから近づくな!!」
辰「絶対だからな。」
「約束するから!」
もう少しでくっ付く寸前で動きが止まる。
そして「よし」と笑って遠ざかっていく。
(意味が分からない・・・)
落とすっていってもたかがゲームだろ?
なんでこんなに頑張るんだ?
そんなに勝利したいのか?
そこら辺のコダワリがいまいち分からない。
まぁ、分かりたくも無いけどな。
チラリとヤツを見るとお着替えタイムだ。
「・・・・・・・はぁ。」
辰「どうした?」
「・・・・別に。」
「そう?」
なんかもう・・・
夢ならマジで覚めて欲しい。
・・・・・・Game・秘密(完)