「ゃ・・・・・嫌・・・っ!」
抱き寄せた有希の体は
想像以上に震えていた。
その上ろくに力の入らない手で必死に俺を押し返そうとする。
(なんでこんなに震えてんだよ・・・・)
寒い時のそれとは全く違う。
人間ってこんなに震えるものなのか?
そう思わせる程こいつは震えてて
そして、何かに怯えてる。
「落ち着け・・・・もう大丈夫だ。」
---何かに怯えてる
それは分かってるのにどうすることも出来ない。
助けてやりたいのに安心させてやりたいのに
なんて声を掛けたらいいのかすら分からない。
だが、もう泣かないでくれ。
(有希・・・)
震えの治まらない小さな体を抱きしめて
ただひたすら
---守る
そう思った。
どれくらいそうしていたのか・・・
やっと落ち着いたのか
それとも疲れしまったのか
どっちかは分からないが抵抗が緩んできた。
震えは大分治まって
呼吸も落ち着いてきたと思う。
(・・・・・・。)
力いっぱい抱きしめていた腕を少し緩め髪を撫でてみる。
・・・どうやら抵抗は無い。
「-----真、樹・・・?」
「!」
(俺の名前・・・?)
思わずピクッと反応してしまった。
すぐにでも顔を見たかったが・・・
だがもう少し落ち着かせてからの方がいいと思った。
「あぁ、そうだ。落ち着いたか?」
安心しろの意味を込めて頭をぽんと撫でてやる。
「う、うん・・・・ごめん・・」
「・・・謝らなくていい。」
さっきとは違いちゃんと返って来る返事。
どうやら会話できるくらいには回復したらしい。
とりあえず顔を見ようとゆっくり腕の力を緩めた。
(お、おいおい・・・)
俺を見上げる有希の顔は真っ青。
頬に残る涙の跡が痛々しくて
思わず目を逸らしたくなった。
有「私・・・あ・・ごめ、ん・・・皆・・」
周りを確認するようにうろうろと視線を泳がせる有希。
そして集まる住人共を見て驚いたのか
青い顔を更に青くして焦り出した。
孝「・・・謝るな。」
要「そうだよ。・・・何か温かいものでも飲むか?落ち着くぞ。」
これはどういう反応なのか。
有希は明らかに2人の言葉に動揺し
力無く俺の服の裾を握ってきた。
有「う・・・ううん。お風呂・・・お風呂に入ってくる。」
「「「・・・・・・。」」」
有「あ・・・・ご飯まだだったよね。先に食べててね・・・」
「「「・・・・・・。」」」
フラフラと立ち上がりゆっくりと階段をおりていく。
今にももつれそうな足元が危なっかしい。
「・・・・・大丈夫か?」
---大丈夫なわけない。
そんなことは分かってる。
だがそれしか言葉が見つからない。
有「----もう、平気だよ。」
軽く振り向く有希。
そして無理矢理作った笑顔で強がってみせた。
結局、有希は何を説明することなく、ヨロヨロと風呂場に消えていった。
「「「 -------------。 」」」
再び沈黙が訪れる。
---あれは一体なんだったんだ?
恐らく誰もが聞きたい当然の疑問。
しかし口に出すヤツはいない。
それぞれ、しばらく動けない時間が流れた。
---知られたくねぇんだ
ふと、前に有希が言った言葉を思い出した。
(知られたくない、か・・・)
勝手な勘だが・・・
さっきのことが夢と関係してるのは間違いない、と思う。
尋常じゃないあの震えも
我を忘れるほどの怯え方も
全て夢に関係してると思う。
じゃああいつが見たくない夢って
その夢の内容って--
(やめろ・・・・・)
悪い予想をしてしまいそうで思考を止めた。
勝手な思い込みはいい結果を生まない。
PIPIPIPIPIPI---
突然、誰かの携帯が鳴った。
累「・・・違うよ。」
純「俺も・・・」
お互い「お前のじゃねェの」と顔を見合わせる。
だが次の瞬間、何かに気付いたように孝が2階へ走り出した。
(-----あ・・)
多分・・・
いや、絶対そうだ。
孝「遼!」
有希の部屋から孝の声。
やはり、遼からの電話だ。
(孝の奴・・・)
気付くの早すぎだろ。
「俺も行ってくる。だが誰か残っとけよ。あいつが風呂から上がった時、誰もいない状況にするんじゃねぇ。」
累「俺は行く。」
累はそう言うとさっさと2階へ上がっていった。
純「俺、残るから。」
要「俺もいる。色々聞いてきて。」
「・・・あぁ。」
こういう時、落ち着いたヤローがいると助かる。
とりあえず、俺も2階へ向かった。
-----異常(完)