孝「要!急いでくれ!」
妙な空気を感じ取ったんだろう。
孝が声を張り上げた。
孝「おい有希!顔を上げろ!」
体に触れずひたすら声をかける。
だがやはり返事が無い。
それとは裏腹に震えはどんどん酷くなっていく。
(なんでこんなに・・・)
俺が安易に触れたから?
だから有希は怯えてるのか?
---俺のせいだ
そう思うと体が動かなかった。
「・・・嫌だっ・・・・来る---な・・・・止め・・」
(----!)
なんとか聞こえるくらいの小さな声。
そんなやっと搾り出したような弱々しい声で
有希は恐怖を訴える言葉を漏らした。
孝「・・・・・。」
純「・・・・・。」
累「・・・・・。」
いったい・・・
有希の身に何が起こってるんだ?
震えてるのは分かる
怯えてるのは分かる
でも、誰も動けない
救ってやりたいのに
安心させてやりたいのに
どうすればいいか分からない
「「「 --------!! 」」」
突然、電気が復活した。
要「うわ最悪。やっと懐中電灯見つけたってのに。------なに・・・何かあったのか?」
電気復活と同時に戻ってきた要。
尋常じゃない空気を読み取ったのか
いつになく真剣な表情で近づいてきた。
だが要なんかに構ってる場合じゃない。
恐らく停電が原因でこんなことになってる有希。
だが明かりが戻っても元に戻らない。
元に戻るどころか・・・
(なんだよ・・・これ---)
電気がついたことでさっきまで良く見えなかった様子がはっきり見えて
俺達は更に固まってしまった。
まるで何かから逃げるように小さく蹲る有希
そしてやはり
その体は震えている。
孝「有希・・・顔を上げろ。」
どのくらい時間が経ったか。
震えが少し治まってきたような気がした。
それを見計らい、孝が再び手首を掴んだ。
---ビクッッ!!
(-----!!)
孝「------っ!」
孝が息を呑んだのが分かった。
だが、その反応は当然だ。
---怯え
勢い良く上げられた有希の顔に浮かんでるのは、怯え以外の何者でもなかった。
「い、嫌だっ・・・・放せ・・・!」
目の焦点も合ってない
目の前の孝を捉えてもいない
出てくる言葉もやはり弱々しく、しかも完全に拒絶している。
孝はさっきの俺と同じだ。
握っている手首から震えが伝わってくるのか
あまりの衝撃に固まってしまっている。
「やめッ・・・いや・・・・・嫌ぁぁ!!」
手を振り解こうと抵抗する。
だが・・・固まる孝の手は離れない。
(・・・・・・・・!)
---有希の目から
涙が零れた。
「有希・・・」
あまりの衝撃に
心臓を切り裂かれたような気がした。
(なんで泣くんだよ・・・)
どんなに苛めても泣かねぇくせに
泣くくらいならやり返す!なんて言ってたくせに
なんだよお前・・・
泣くなよ・・・
「有希・・・もう、大丈夫だ。」
拒絶されるかもしれない
もっと泣かせてしまうかもしれない
だが・・・
このままじっとしてることもできなくて
震える腕を掴みうなじを引き寄せ
小さな体を抱きしめた。