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男友達—–7 GAME

「ししし晋ちゃん!いやいや晋様!!ちょっと離れてもらえないだろうかぁ!」

 

人間、焦ると言葉がぶっ飛ぶらしい。

とりあえず大声の効果か、手を止めてくれたので一気に畳み掛ける。
とりあえず離れていただきたい!

 

晋「・・・・なんだよ。」

 

大声に気を悪くしたのか眉間にシワを寄せて睨んできやがった。

しかし、負けてられんのだよ君!
負けずに睨み返す。

 

「おぉぉお落ち着け晋!!」
晋「・・・お前が落ち着け。」
「とととりあえず!今日は!やめよう!」
晋「・・・・は?」

 

絶好調に不機嫌な声で返事が返って来た。

そして極悪な顔がスーパー極悪に変貌。
怖い、怖すぎる。

だがしかし---!

 

「やっぱりこんなのダメだって!お前とエッチは出来ない!」

 

分かってくれ俺様。

その気にさせといてなんですけどね・・・
お前とエッチする気は無いんだ!
ていうか出来ないに決まってんだろ!

 

晋「・・・なんで。」
「え!」

 

なんでってあんた・・・
え、理由?

 

「なんでって言われても・・・」
晋「無いのか?それなら---」
「あああるある!理由ある!!」
晋「・・・なんだ。」
「えぇぇえーとー!わ、私らこの前知り合ったばっかだ!」
晋「理由になってねぇ。」
「そ、そう?!じゃ、じゃぁ---エッチするのが怖い!」
晋「優しくしてやる。」
「え!」

 

や、優しくってお前・・・
そういう問題じゃない。

 

晋「もういいか?」
「良くない!」
晋「はぁ・・・いい加減黙れよ。大人しく抱かれてろ。」
「ちょ---まま待てって!!話を聞けよ!」
晋「後でな。」」
「いい今!今聞いてくれ!」
晋「------。」

 

再びため息をつき早く言えと促してくる。
ため息つきたいのはこっちだってんだ。

 

(理由理由理由りゆー・・・・・・)

 

理由っていっても・・・

ダメなモンはダメ。
怖いモンは怖い。
それが理由だ。

他に何かあるだろうか、いや無い。

 

晋「----------。」
「----------。」

晋「----時間切れ。」
「え!」
晋「理由なんてねぇんだろ?あんまり焦らすな。」
「そそそんなんじゃなくて!やややめろ止まれ触るなぁ!!」
晋「後でな。」
「答えになってない!」

 

再び再開されるモゾモゾ。
エッチに向かって再始動ってか?

オマケにちゅーするつもりなのか、顔が近づいてきたので思い切り逸らした。

 

(ちょっとちょっとー!!)

 

耳元に押し付けられる唇。
押しても押しても離れない体。

これってどうすんの
どうすりゃ止まるの!

このままじゃヤられる喰われちまう!

 

(おおお落ち着けェェ!)

 

なななんでもいいから言い訳考えろ!

思いつけひらめけ!
アイデアカモーーーンッ!!

 

 

 

「おおお前と私はっ---友達だろーっ!!」

 

 

 

とっさに叫んだ。
二度目の大声に耳がキーン・・・

 

晋「----------。」
「------------。」

 

無言。やっぱこれもダメなのか---!?

 

「えぇぇーとですね---!」
晋「・・・・・・・友達・・・だと?」
「-----------え!」

 

ボソッと呟く晋。
そして動きを止めやがった。

 

「し、晋様?」

 

もしかしてこれ「友達」に反応してる?

 

晋「・・・・・・友達・・」
「--------!」

 

なななんてことだ!
「友達」に反応してる!!

 

(こここうなったら-----!)

 

「そそそうだぞ!私らは友達だ!」
晋「・・・・。」
「忘れちまったのか!?この前海で誓っただろ!ずっと友達でいようねってー!」
晋「・・・・・・。」
「あれは嘘だったのかよ!信じてたのは私だけだったのかよー!」
晋「・・・・・・・・・・・。」

 

誓ってないし信じてもない。

だがもう「友達」しか考え付かない。
こうなったら---

出来立てほやほやだが我々の薄っぺらい友情に訴えるしかない!!

乗って来い俺様。
いや乗ってくれェ!

 

晋「・・・・・・。」

 

ち、沈黙が・・・痛い。

 

「----------。」
晋「--------。」
「とととにかく!私とお前は友達なんだ!!」
晋「・・・・・。」
「友達は○○とか××なんてしない!だからお前とエッチはできん!!」
晋「・・・・・・・・・・・・・・。」
「それにこの前も言ったぞ!ヤりたいなら美人でエロい女とヤれよ!私で間に合わせるな!」
晋「--------------。」

 

相変わらず返事なし。

 

非常に---気まずい。

 

「とととにかく退いてくれ!友達でもこの体制は緊張するって!」
晋「・・・・・。」
「なにボーっとしてんだよ!ほらほら早くしてー!」
晋「・・・・・。」
「そ、そうだ!友達同士仲良くゲームでもやんねぇ?テレビの方の!!」
晋「・・・・・・。」

 

な、なぜ無言・・・

 

(------え!)

 

恐る恐るヤツをチラ見してみた。

殺人級に怖い顔で睨まれてると思ってたが・・・
なんと、穏やかな表情を浮かべている。

こ、これはもしかして乗ってくれるのか?

いや乗ってくれるはずだ!
だって私ら友達だもんなー!!

 

晋「透。」
「な、なんだ!」

 

 

 

晋「言いたいことはそれだけか。」

 

 

「-----え。」

 

穏やかな表情は変わらない。
むしろ軽く微笑んじゃったりしてる。

 

なのに

 

殺気を感じるのは気のせいか。

 

「・・・・・。」
「・・・・・。」

 

ヤツの肩に置いていた右手を掴まれ、背もたれに押さえつけられる。

・・・これって、拘束?

ぐいぐい引っ張ってみる。
だが---う、動かない。

これはもしや、ヤバイ感じですか・・・

 

「し、晋・・・怒ってんの?」

 

微笑みながらギリリと手首を締め付ける。
そのギャップが・・・マジで怖い。

 

晋「怒ってねぇ。ただ----」
「た、ただ?」

 

 

晋「ムカついてる。」

 

「え・・・」

 

一緒だろ。

そう言ってやりたかった。
だが出来なかった。

なぜなら、ヤツの顔に真っ黒ビューティースマイルが張り付いたからだ。
もちろん、背筋に寒気が走った。

 

「なな・・・なんでムカついてらっしゃるんですか。」

 

とりあえず理由を聞いてみる。
今の流れだとムカつかせたのはやはり私。

だが・・・なぜだ。

なぜ俺様はお怒りなんですか。

 

晋「俺は。」
「は、はい。」

 

晋「男だ。」
「・・・・・分かってますけど。」

 

アホかこいつは。
見れば分かる。

 

晋「分かってねぇよ、お前は。」
「わ、分かってるぞ!晋は男だもんな!」
晋「分かってねぇ。」
「分かってるって!」

 

 

晋「分かってねぇよ。」

 

 

表情から笑みが消えた。

 

そして、色の無い瞳。
貫かれそうな鋭い目つきに思わず息を呑む。

 

「し、晋・・・どしたのお前・・・」
晋「なぁ、透。」
「---------っ!」

 

晋「俺は、男だ。」

 

「だ、だから---」

 

---分かってるってー!

 

叫びは声にならなかった。

 

---ジジッ!

 

「----えっ!?」

 

代わりに聞こえたのはジップが下がる音。

ヤツに借りてるでかいパーカー。
そのフロントのジップが躊躇することなく下降して、勢い良く外れた。

 

「--------ッ!」

 

冷たい空気が肌を掠める。

ゾクッと駆け上がる悪寒。

なんで怒らせたのかさっぱり分からない。
そもそも何に怒ってるのかも分からない。

 

とにかく

頭の中が

 

「喰われる」でいっぱいになった。