「ししし晋ちゃん!いやいや晋様!!ちょっと離れてもらえないだろうかぁ!」
人間、焦ると言葉がぶっ飛ぶらしい。
とりあえず大声の効果か、手を止めてくれたので一気に畳み掛ける。
とりあえず離れていただきたい!
晋「・・・・なんだよ。」
大声に気を悪くしたのか眉間にシワを寄せて睨んできやがった。
しかし、負けてられんのだよ君!
負けずに睨み返す。
「おぉぉお落ち着け晋!!」
晋「・・・お前が落ち着け。」
「とととりあえず!今日は!やめよう!」
晋「・・・・は?」
絶好調に不機嫌な声で返事が返って来た。
そして極悪な顔がスーパー極悪に変貌。
怖い、怖すぎる。
だがしかし---!
「やっぱりこんなのダメだって!お前とエッチは出来ない!」
分かってくれ俺様。
その気にさせといてなんですけどね・・・
お前とエッチする気は無いんだ!
ていうか出来ないに決まってんだろ!
晋「・・・なんで。」
「え!」
なんでってあんた・・・
え、理由?
「なんでって言われても・・・」
晋「無いのか?それなら---」
「あああるある!理由ある!!」
晋「・・・なんだ。」
「えぇぇえーとー!わ、私らこの前知り合ったばっかだ!」
晋「理由になってねぇ。」
「そ、そう?!じゃ、じゃぁ---エッチするのが怖い!」
晋「優しくしてやる。」
「え!」
や、優しくってお前・・・
そういう問題じゃない。
晋「もういいか?」
「良くない!」
晋「はぁ・・・いい加減黙れよ。大人しく抱かれてろ。」
「ちょ---まま待てって!!話を聞けよ!」
晋「後でな。」」
「いい今!今聞いてくれ!」
晋「------。」
再びため息をつき早く言えと促してくる。
ため息つきたいのはこっちだってんだ。
(理由理由理由りゆー・・・・・・)
理由っていっても・・・
ダメなモンはダメ。
怖いモンは怖い。
それが理由だ。
他に何かあるだろうか、いや無い。
晋「----------。」
「----------。」
晋「----時間切れ。」
「え!」
晋「理由なんてねぇんだろ?あんまり焦らすな。」
「そそそんなんじゃなくて!やややめろ止まれ触るなぁ!!」
晋「後でな。」
「答えになってない!」
再び再開されるモゾモゾ。
エッチに向かって再始動ってか?
オマケにちゅーするつもりなのか、顔が近づいてきたので思い切り逸らした。
(ちょっとちょっとー!!)
耳元に押し付けられる唇。
押しても押しても離れない体。
これってどうすんの
どうすりゃ止まるの!
このままじゃヤられる喰われちまう!
(おおお落ち着けェェ!)
なななんでもいいから言い訳考えろ!
思いつけひらめけ!
アイデアカモーーーンッ!!
「おおお前と私はっ---友達だろーっ!!」
とっさに叫んだ。
二度目の大声に耳がキーン・・・
晋「----------。」
「------------。」
無言。やっぱこれもダメなのか---!?
「えぇぇーとですね---!」
晋「・・・・・・・友達・・・だと?」
「-----------え!」
ボソッと呟く晋。
そして動きを止めやがった。
「し、晋様?」
もしかしてこれ「友達」に反応してる?
晋「・・・・・・友達・・」
「--------!」
なななんてことだ!
「友達」に反応してる!!
(こここうなったら-----!)
「そそそうだぞ!私らは友達だ!」
晋「・・・・。」
「忘れちまったのか!?この前海で誓っただろ!ずっと友達でいようねってー!」
晋「・・・・・・。」
「あれは嘘だったのかよ!信じてたのは私だけだったのかよー!」
晋「・・・・・・・・・・・。」
誓ってないし信じてもない。
だがもう「友達」しか考え付かない。
こうなったら---
出来立てほやほやだが我々の薄っぺらい友情に訴えるしかない!!
乗って来い俺様。
いや乗ってくれェ!
晋「・・・・・・。」
ち、沈黙が・・・痛い。
「----------。」
晋「--------。」
「とととにかく!私とお前は友達なんだ!!」
晋「・・・・・。」
「友達は○○とか××なんてしない!だからお前とエッチはできん!!」
晋「・・・・・・・・・・・・・・。」
「それにこの前も言ったぞ!ヤりたいなら美人でエロい女とヤれよ!私で間に合わせるな!」
晋「--------------。」
相変わらず返事なし。
非常に---気まずい。
「とととにかく退いてくれ!友達でもこの体制は緊張するって!」
晋「・・・・・。」
「なにボーっとしてんだよ!ほらほら早くしてー!」
晋「・・・・・。」
「そ、そうだ!友達同士仲良くゲームでもやんねぇ?テレビの方の!!」
晋「・・・・・・。」
な、なぜ無言・・・
(------え!)
恐る恐るヤツをチラ見してみた。
殺人級に怖い顔で睨まれてると思ってたが・・・
なんと、穏やかな表情を浮かべている。
こ、これはもしかして乗ってくれるのか?
いや乗ってくれるはずだ!
だって私ら友達だもんなー!!
晋「透。」
「な、なんだ!」
晋「言いたいことはそれだけか。」
「-----え。」
穏やかな表情は変わらない。
むしろ軽く微笑んじゃったりしてる。
なのに
殺気を感じるのは気のせいか。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ヤツの肩に置いていた右手を掴まれ、背もたれに押さえつけられる。
・・・これって、拘束?
ぐいぐい引っ張ってみる。
だが---う、動かない。
これはもしや、ヤバイ感じですか・・・
「し、晋・・・怒ってんの?」
微笑みながらギリリと手首を締め付ける。
そのギャップが・・・マジで怖い。
晋「怒ってねぇ。ただ----」
「た、ただ?」
晋「ムカついてる。」
「え・・・」
一緒だろ。
そう言ってやりたかった。
だが出来なかった。
なぜなら、ヤツの顔に真っ黒ビューティースマイルが張り付いたからだ。
もちろん、背筋に寒気が走った。
「なな・・・なんでムカついてらっしゃるんですか。」
とりあえず理由を聞いてみる。
今の流れだとムカつかせたのはやはり私。
だが・・・なぜだ。
なぜ俺様はお怒りなんですか。
晋「俺は。」
「は、はい。」
晋「男だ。」
「・・・・・分かってますけど。」
アホかこいつは。
見れば分かる。
晋「分かってねぇよ、お前は。」
「わ、分かってるぞ!晋は男だもんな!」
晋「分かってねぇ。」
「分かってるって!」
晋「分かってねぇよ。」
表情から笑みが消えた。
そして、色の無い瞳。
貫かれそうな鋭い目つきに思わず息を呑む。
「し、晋・・・どしたのお前・・・」
晋「なぁ、透。」
「---------っ!」
晋「俺は、男だ。」
「だ、だから---」
---分かってるってー!
叫びは声にならなかった。
---ジジッ!
「----えっ!?」
代わりに聞こえたのはジップが下がる音。
ヤツに借りてるでかいパーカー。
そのフロントのジップが躊躇することなく下降して、勢い良く外れた。
「--------ッ!」
冷たい空気が肌を掠める。
ゾクッと駆け上がる悪寒。
なんで怒らせたのかさっぱり分からない。
そもそも何に怒ってるのかも分からない。
とにかく
頭の中が
「喰われる」でいっぱいになった。