「ぅ----んッッ---!」
唇が重なってる・・・
それを認識した瞬間、金縛りが解けた。
「むっ!!」
そして咄嗟に唇を固く閉ざした。
さすが私。
キスだけはなんとしても避けなければならんからな。
変態とのバトルで学習済み!
晋「なんだそれは。」
「む!」
晋「透、口開けろ。」
「むむ!!」
晋「・・・・・・・。」
開けろと言われて開けるバカがどこにいる。
唇を思い切り噛み締め、ついでに睨みつけてやった。
TVゲームは無念だったがこればっかりは負けるわけにはいかん。
全力で死守してみせる。
晋「抵抗するつもりか?」
「むむむぅ!」
反抗的な態度が気に入らなかったのか
お綺麗な顔に影を落とし、不機嫌オーラをグサグサ突き刺してくる。
ちょっと怖い・・・
だが怯んでる場合じゃない!!
「むむーー!!」(喰われて堪るかぁぁ!!)
晋との間に持ってるクッションで思い切りヤツを押し返す。
とりあえず逃げよう離れよう。
この流れでLet's エッチ!!なんてマジ勘弁。
くだらんゲームのオプションで何度も弄ばれて堪るかってんだよふざけんなよ。
晋「お前・・・俺に勝てるとでも思ってんのか?」
「むッ!?」
晋「・・・これ、邪魔。」
---ぽいっ。
「むー!」
なんと。
奮闘虚しくあっさりクッションを奪われた。
障害物が無くなった体と体。
強引に腰を引き寄せられ晋の体にぶつかる。
なんか、近い。
晋「口、開けろ。」
「む!」
晋「そんなに強く噛むな。血が出るぞ。」
「むっ!」
顎を取られ、ヤツの長い指が柔らかく唇をなぞってくる。
気安く触るんじゃない。
そんなことしても口は開かんぞ!
(触るなぁぁーー!!)
体に挟まれた腕で力いっぱい押し返す。
そしてブンブン首を振る。
どうだこれで触れまい!!
「むッ!?」
ガッ!と頭を鷲掴まれた。
地味に痛い。
晋「・・・・負けたくせに。」
「?」
なんだ?
視線を上げるとギラッギラした鋭い目で睨まれる。
すっげぇ怖い。
晋「勝負に負けたくせに。」
「・・・・・・・・。」
あ、あぁ・・・
さっきのゲームのことか。
晋「負けたら言うこと聞くって言った。」
「・・・・・。」
晋「お前が言い出したことだろ?」
「・・・・・。」
まぁ・・・言ったな、確かに言った。
だが約束を守ると誓った覚えはないぞ。
大人気ない?
なんとでも言え!
晋「・・・ウソツキ。」
「・・・・・。」
晋「・・・卑怯者。」
「・・・・・・・・。」
晋「・・・へタレ。」
「---------------。」
し、心理作戦か?
ざざ残念だったな。
そんな幼稚な挑発に乗るわけないだろ。
一応大人なんで!
晋「まぁ、気持ちは分かる。」
「?」
晋「相当自信があったみたいだからな。負けるなんて思ってなかったんだろ?」
「・・・・むー」
当ッたり前だろ。
どれだけ修行したと思ってんだ。
負けるなんて思ってなかった。
すっげー自信あった。
勝負にもならんと思ってた!
晋「だがあの程度の腕じゃなぁ・・・
勝負にもならねぇ。」
・・・なんですと?
晋「そうだな・・・俺が大名レベルだとすると---」
「・・・・・・。」
晋「お前はせいぜい足軽だな。」
「-------!!」
あ、足軽だとぉ!?
晋「いや、農民か・・・」
「むッむぅーーー!!」
なんだと貴様ァ!
調子に乗るのも大概にしろ!
晋「一言で言えば・・・弱すぎ?」
「むーーー!!?」
晋「悔しいのか?まぁ悔しいだろうなぁ。」
「むむーー!!」
晋「何言ってんのか分かんねぇ・・・あぁ、教えて欲しいのか?修行つけてもらいたいのか?」
「む・むーーーーぅ!!」
(違ーーーーう!!)
すっげぇムカつくマジでムカつく!
その余裕の笑みが余計にムカつく!!
こうなったらもう一回勝負しろコラ。
今度は本気でやってやるよ!
手加減無しでやってやるぜー!
晋「仕方ねぇなぁ。そこまで言うなら・・・」
「むむぅ!?」
晋「一番弟子にしてやってもいいぞ。」
「-----------。」
ムカ---
(ムカつくぅーーーー!!)
「バカかてめぇは!何が一番弟子だふざけんなよー!誰が弟子入りなんか---
---------はっ!」
『YOU LOSE !!』
あの声が、頭の中に響いた。
この時点で
私の敗北、決定。
とりあえず目の前の俺様は
それはそれは愉しそうに口端を上げた。
晋「バカはてめぇだ。」
(ちょっ-----)
---ちょっとタイムー!
叫びは声にならなかった。
「んぅッ!」
開いてしまった唇にヤツの唇が重なり、もちろん舌の侵入もばっちり完了。
「んッ---待て・・晋ッ---!!」
晋「ん。」
「・・っ---んんッ!」
しゃべらせないつもりか。
噛み付く勢いで唇を塞がれる。
頭の中で狂ったように警報が鳴り響く。
慌てて晋の胸を押し返す。
だがやはりビクともしない。
(くそぉッ---------!)
乗せられた。
まんまと挑発に乗ってしまった!
なんたる不覚!!
いやいやそんなことはどうだっていい!
その前にこの状況!
これをどうにかしないと---
「ん・・・んッ!」
腕は体に挟まれて動かせない。
頭はがっしり掴まれて動く気配なし。
足は・・・何気に爪先立ちでプルプルする。
これだけ身長差があれば仕方ないか。
いやいやそうじゃない!
晋「考え事か?」
「んっ」
晋「・・・余裕だな。」
「ん---ぁッ!」
ムカついたのか。
あてつけの様に繋がりが深くなった。
「んっ----!」
さすがイケメン。
キスが異常に上手い----と思う。
ねっとりと絡みつく舌。
逃げてもなぜかすぐに捕まってしまう。
軽く吸われ、たまに甘く噛まれて・・・
(ちょっと・・・待っ----て・・・)
車の中で奪われたキスとは全然違う。
壊れ物に触れるように優しくて
大切なものを扱うように柔らかい・・・
(あ、あれ-------)
なんか・・・ヤバイ。
これ以上はまずいと思う。
ほら私って・・・
キスがアレだし、ねぇ?
晋「・・・逃げるな。」
「------ッ!」
脱出しようと足に力を入れると即座に注意が入る。
そして抵抗は許さねぇとでも言いたいのか、痛いくらい強く抱きしめられた。
ていうか痛い。
「---晋ッ・・!」
晋「ん。」
(ダメだ----ヤバ・・イ・・・・・)
こいつのキスって
---すごく、甘い
背中がゾクッと震えた。
「ぁ-----はッ・・・」
無意識に息が漏れる。
呼吸が乱れて、思考も乱れて
体から力が抜けていく・・・