GAME

男友達—–3 GAME

「止めろ。」
晋「・・・・・・・。」
「降ろせ。」
晋「・・・・・・・。」
「聞いてんのか。」
晋「・・・・・・・。」
「晋!」
晋「なんだ。」
「・・・・・コノヤロー。」

 

甘く見ていた。

変態辰巳で十分学習したはずなのに。
このゲームヲタク共を甘く見ていた!!

 

「降ろしてくれよ!」
晋「・・・・・・。」
「無視すんな!」
晋「うるせぇ。」
「なんだとぉ!?」

 

現在、晋の車で走行中。
辺りは既に暗くなって街のネオンで目がチカチカする。

 

「どこに向かってんですか。」
晋「何食いたい?」
「へ?あぁ、今日はパスタを食べようかと。ていうかそんなことは----」

 

どうでもいい!!

 

「美味い!」
晋「だろ?」

 

美味いよーこのパスタ!

これって本当にパスタなのか?
じゃぁ今まで食べてたパスタって偽パスタ?

じゃなくて!

 

「降ろせ!」
晋「さっきまで幸せそうな顔してたくせに。機嫌がいいのは飯の時だけか?」
「パスタは美味かった!とにかく降ろせ!」
晋「俺の家に着いたら降ろしてやる。」
「ななっ・・・なんでお前の家に行くんだよ!」
晋「決まってんだろ。お前を抱---」
「おおお降ろせぇぇ!!!」

 

のん気に飯食ってる場合じゃなかった。

危機だぞ危機!
我が身の危機だ!!

 

晋「開かねぇぞ。」
「開けろよ!」

 

走行中だがドアをガタガタ揺さぶる。
頼むからロックよ外れろ!!

 

晋「ほら、来い。」
「嫌だっ帰る!」
晋「さっさと来い。」
「おいコラ放せぇぇ!!」

 

 

なぜだ。

 

 

晋「適当に座ってろ。」
「・・・・・・・・・・・。」

 

引きずられ抱えられ・・・
あっけなく晋ハウスに到着。
人ってこんな簡単に攫われていいもんなのか。

もはや・・・放心。

 

「あぁぁ・・・・」

 

頭を抱えてソファーに座り込む。

今日は絶対逃げ切るつもりでいたのに。
まさかこんなことになるとは・・・

呪われてる。
私の人生呪われてる!

 

晋「酒、飲むか?」
「寄越せ。」
晋「ほらよ。」
「サンキュ。」

 

飲み物を頂きました。
飲んでないとやってられない。

それに叫びすぎて喉が渇いた。
爽やかな香りのするアルコールを一気に喉に流し込んだ。

---ポスッ

隣に座りこむ晋。
ピ・・・とテレビをつける。

たまたまやってたお笑い番組。
芸人がなんかやると観客がドッと笑った・・・

いいね君達。
私にもその笑いを分けてくれよ。

 

晋「なぁ。」
「なんだ。」
晋「今の面白かったか?」
「あんまり。」
晋「そうか。」

 

酒を片手に無表情でテレビを眺める晋。
どうやらお互い、お笑いにはあまり興味が無いらしい。

 

「なぁ。」
晋「なんだ。」
「酒、もう少しくれ。」
晋「冷蔵庫に入ってる。勝手に取っていいぞ。」
「そっか。」

 

冷蔵庫を開けるとぎっしり詰まった酒群。

こいつ、絶対家でご飯食べてない。
材料らしき物が見当たらない。

そういえば家の中もすっげぇシンプル。
置いてる物は質のいいモンなんだろうと思うがとにかく殺風景。

まぁ、黒系の寒色で統一されてるからってのもあるかもしれないが生活感が全く無い。
ちゃんと家に帰ってきてるのか?

 

ま、そんなことはどうだっていい。

とりあえず何本か瓶を持って戻った。

座席部分が広い、でかいソファー。
晋から離れた場所に着席する。

 

晋「おい、こっちに来い。」
「ここでいいんだよ。」
晋「・・・・・・・・。」

 

ジロッと睨まれる。

少々怖いが無視して酒をグラスに注ぐ。
相変わらずテレビは面白くない。

 

晋「透。こっちに来い。」
「だ、だからここでいいって。テレビに集中してろよ。」
晋「・・・・・・・・。」

 

目つきがどんどん険しくなっていく。

やばい、あの目はやばいぞ。
野獣の目だ。

だが近くに寄りたくないんだよ。
何か気をそらすモンを----

 

晋「透---」
「あ!」
晋「あ?」

「懐かしいなーこれ!」

晋「は?」

 

テレビの横の棚に視線を移すと自分の気がそらされてしまった。

 

「なんだよ晋!あんたもゲーム好きなのか?」
晋「ゲーム?」
「これだよこれ。」
晋「あぁそれか。」

 

棚に並ぶDVD群。
その中にゲームソフトを発見。

近づいて見てみると懐かしいタイトル。
ま、昔流行った格闘ゲームだな。

 

「懐かしいなー。すっげーはまった。」
晋「そうなのか。」
「ラスボスが強くてさぁ。倒すのに苦労したんだよ。」
晋「へぇ。」
「お前もゲームするんだな。この前ゲーセン行った時は全然興味無いみたいな顔してたくせに。」
晋「ゲームなんかやんねぇよ。誰かが置いていったんだろ。」
「ふーん、そうなんだ。」

 

ふーん。

 

ふーん・・・・

 

 

「勝負しろ。」
晋「は?」

 

 

いいこと・・・
思い付いちゃったんですけど。

 

「このゲームで私と勝負しろ。」
晋「お前と勝負?」

 

そうだ。
勝負しろ!

 

「このゲームで私に勝てたら大人しく言うことを聞いてやる!だが・・・負けたらゲームを辞退しろ!今日も大人しく家に帰らせろ!」

 

どうだ。
いい考えだろ!

 

晋「嫌だ。」
「なに!?」
晋「なんでお前の得意なゲームで勝負しないといけねぇんだよ。しかもお前、めちゃくちゃなゲーマーじゃねぇか。圧倒的に俺が不利だ。」
「まぁ・・・そうとも言う。」
晋「分かればいい。」

 

一睨みした後、キュッと酒を煽る。
様になってるし言い分も最もだと思うぞ。

だがな!

 

「逃げんのか?」
晋「なに?」

 

お前の性格なんざお見通しなんだよ。

 

「あーあ、男らしい奴だと思ってたのによ。結局逃げるのかよ。拍子抜けだな。」
晋「・・・・・・・・・・。」

 

ピクッと指が動いた。

そうだその調子だ。
乗って来い俺様。

 

晋「・・・・・・・・・説明書。」
「なんだ?何か言ったか?」
晋「説明書を貸せ。」
「ほう、やんのか?勝負するか?」
晋「受けて立ってやろうじゃねぇか。」
「それでこそ男!」

 

クールに見えて実は負けず嫌い。
それがお前だ!

上から目線で説明書を渡してやる。

少々ふて腐れ顔で受け取る晋。
ふふふ、いい顔してんじゃないか。

 

「少しだけなら技を伝授してやってもいいぞ。」
晋「・・・いらねぇ。」
「ふーん。後で泣いても知らないぞ。」
晋「そんなことより・・・シャワーでも浴びて来い。」
「はぁ?」
晋「その間に説明書読む。俺が勝ったら言うこと聞くんだろ。」
「まぁそうだけど。」
晋「さっさと入って来いよ。」
「・・・・・・・・。」

 

まさかこいつ・・・
勝てるとでも思ってんのか。
この私に?

 

「シャワーなんか浴びる必要ない。負けるつもりはないからな。」
晋「・・・怖ェんだろ。」
「なに?」
晋「俺に負けるのが怖ェんだろ。」
「んだと!?」

 

キュッと口端を上げて馬鹿にしたように笑う。
その笑みに、もちろんイラッとした。

 

晋「どうなんだよ。」
「・・・・・・・・・・。」

 

今度は挑発的な不敵な笑み。
こんなの見せられたらあんた・・・

 

「ゆーっくり浴びてきてやるよ。せいぜい頑張って練習してろ。」

 

ま、私も相当な負けず嫌いなんで。
腰に手を当て思い切り踏ん反り返って余裕の笑みを投げつけてやった。

 

「ふ・・・ふふふふ・・・」

 

シャワールームを教えてもらい、温かいお湯を頭から浴びる。

そして、嬉しくて・・・
いや嬉しすぎて笑いが止まらない。

 

無事に帰れる。

 

なぜならこの勝負、勝利確定だからだ。

私だってプロではない。
だが相手はズブの素人。

負けるはずがない、負ける気もしない。

晋が約束を破るって可能性もあるが、なんとなくそんな奴じゃないと思う。

 

つまり・・・

 

危機は去ったと言える!

 

「あー、良かったー。」

 

なんだかシャワーが気持ちいー。