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男友達—–11 GAME

透「ぜぇッ---はぁッ---!」
「・・・・・・・・・。」

殺す気は無かった。

だがよっぽど苦しかったんだろう。
肩を上下させて酸素を貪る透。

透「ハッ・・・ハァッ・・・・!」
「・・・・・・・・・。」

 

拳が痛かったのか、こっちを睨みながら軽く手をさすっている。

まぁ、あれだけ激しく殴ったんだ。
痛んでも仕方ない。

 

(・・・・・。)

 

睨み返してくる目は潤んでいて、頬には涙が通った跡が残っている。
なんとなく目を逸らしてしまいたい。

 

それにしても・・・

 

なんだ、この違和感は。

 

透「はぁっ--はぁ-----ぁ?」
「・・・・・・・・・。」

 

呼吸はやばそうだが目の焦点は合ってる。
顔色は悪いが震えは大分治まって・・・

なんて説明したらいいか分からないが、確実に違和感がある。

明らかにさっきまでのこいつと違う---

 

透「・・・・・晋?」
「-----!」

 

なぜ疑問形なのかは不明だが、目を見開いて小さく呟いた。

 

(名前---)

 

「シノブ」じゃなくて心底安心した。

名前を呼ばれてこんなにホッとしたのは初めてかもしれない。
軽く脱力しそうになったが気合で耐えた。

 

(・・・・・・?)

 

しばらくこっちを見つめていたが、急にハッとして周りを見回す透。
瞬きの速さが半端じゃない。

 

「おい。」
透「--------?」

 

(---なんだ?)

 

相変わらずキョロキョロが止まらない。
なんだよ、何か探してんのか?

一緒になって周りを見回したが変わった様子は無い。
いつも通りの我が家だ。

 

透「は-------ハァ・・・・ッ・・・」
「・・・・・・。」
透「夢・・・」
「夢?」
透「・・・・・・。」
「?」

 

呼吸を整えるように深呼吸を繰り返す。
そしてゆっくり目を伏せた。

その前に夢ってなんだ?
目を開けたまま夢を見てたのか?

そんなバカな。
お前はずっと起きていたぞ。

 

透「・・・ぅッ・・・はぁッ・・・」
「・・・・・・・・・・。」

 

色々と聞きたかったがやめた。

せっかく落ち着いてきたし、ヘタに刺激してさっきのように怖がられるのは嫌だ。

 

透「は・・・ぁ・・・・」
「・・・・・。」

 

酸素が行き届いたのか、何度か深呼吸を繰り返すと大分落ち着いてきた。

閉じられていた目が薄っすらと開く。

怯えられるか、それとも睨まれるか。
そう考えると自然に体が固くなる。

 

そして、目が合った。

 

(お、おい・・・)

 

乾いていない潤んだ瞳。

透とは思えない
弱々しい、女の目・・・

 

睨まれた方がよっぽどマシだと思った。

 

そして認めたくないが

 

ドキッとした。

 

「------ッ!?」

 

突然、胸元に触れた感触にハッとする。
視線を下に向けると透の手が俺の胸元に触れて、そのまま服を握った。

どうやら瞳に気を取られて気付かなかったらしい。
いやその前に---

 

「お前・・・俺が怖くないのか?」

 

思わず言葉が零れた。

当然の疑問だろう?

さっきまであんなに拒絶してたのに今は自ら俺に触れてる。
一体どういう心境の変化---

 

透「----------良かっ・・た・・・」

「え・・・?」

 

良かったって・・・何が?

当然そう思った。

だが聞き返すことは出来なかった。

 

透「はッ・・ハァッ----ぁッ・・・」
「-----!」

 

なぜか治まっていた震えが再発。

苦しそうに口を抑え、固く目を瞑る。
呼吸が荒くなり、俺の服を掴む手に力が篭っていく。

 

透「ハァッ、ハァッ---!」
「おい---」
透「は---ぁッ・・・くッ・・・・!」
「透!」

 

壊れちまうんじゃないかと思った。

そう思わせるには十分な乱れ様。
普通に、焦る。

---拒絶が怖い

そんなの言ってる場合じゃねぇと思った。
さすがに見てるだけなんて出来ない。

 

「透、触るぞ。触るからな?」

 

一応断りを入れて

 

抱き寄せた。

 

透「------ッ!」
「何もしねぇから---怖がるな。」

 

触れたら一瞬、ビクッと体が跳ねた。
抵抗されたわけじゃないがとりあえずもう一度断りを入れた。

 

(なんだよこれ・・・)

 

驚愕するほど震えが酷い。

見て感じるのと触れて感じるのとでは全く違う。
直接伝わってくるソレに怯みそうになる。

 

「透、もう大丈夫だ。」

 

自分で怖がらせといてよく言うと思う。
だがこれしかかける言葉が見つからない。

ゆっくり腕に力を篭める。
いいのか悪いのか分からないが背中を軽くさすってみた。

 

透「ハァッ・・・ぁ・・ぅ----」
「---落ち着け。」

 

俺が言うのは間違ってる。

だが今はスルーだ。
そんなこと言ってる場合じゃない、と思う。

 

「もう大丈夫だから。」
透「ぁッ・・・ぅ・・んッ・・」
「ゆっくり息を吐け。」
透「---ぅ・・うん・・・ッ・・」

 

俺の胸に顔を押し付けながら小さく頷く透。
どうやらちゃんと聞こえてるようだ。

 

(早く治まれ・・・)

 

全く治まらない震えに焦りが募る。

もう何しないから治まってくれ・・・
頭を撫でながらひたすら願った。

 

そして落ち着いたら

 

すぐに謝ろうと思った。