透「あぁー美味い。海を見ながらの一服。堪んないねぇ。ま、暗くて何も見えないけど。」
「・・・そうだな。」
現在、砂浜に座り海を見ながらタバコを吸ってる。
帰るか、と思ったがさっきと同様。
もう少し探ってみたかった。
探れば探るほどこいつのことが分からなくなるような気もしたが・・・
透「海って感じだな。」
「・・・海だからな。」
透「そっか。」
「・・・・・。」
落とす・・・と言っても所詮ゲーム。
やる気を出すか適当に参加するか、俺にだって計る権利がある。
面白くない女にやる気を出すなんて気持ちは更々無い。
透に関しては・・・そうだな。
どうもまだ良く分からない。
やる気は出ないがなんとなく気になる。
こんな感じか・・・
まぁ・・・一緒にいて苦にならない。
なぜかそう思う。
透「なぁ。」
「なんだ。」
透「寒いな。」
「そうだな。」
とりあえず目の前は真っ暗。
何も見えない。
それに潮の香りと波の音しかない。
そして寒い。
透「明日からまた一週間だな。」
「あぁ。」
透「早起きするのだるい。」
「確かに。」
それより・・・
このどうでもいい会話は一体なんだ。
まぁ・・・苦にはならないぞ。
それに、居心地いいかも・・・と思ったりもする。
透「ところで、晋は何の仕事してんの。」
「・・・医者。」
透「医者か。頭いいんだな。まぁ、良さそうだもんな。」
「まぁな。」
透「少しは謙遜しろよ。」
何が可笑しかったのかあははーと笑う。
可笑しいのはお前の方だ。
透「なんかさぁ。晋って怖そうなイメージだったけど---」
怖そう?
たまに言われるな。
決まって・・・・・男から。
透「いい友達になれそうなタイプだよな。」
「・・・・・・・。」
透「言われないか?」
「・・・あんまり。」
透「そっか。」
暗くて何も見えないが、隣に座る透がこっちを向いた気配がした。
視線だけ透に移したがやはり暗くて表情は分からない。
それにしても・・・いい友達?
(・・・・・・・・初めて言われた。)
男からはそういう意味合いのことを言われたことはある。
まぁ誰だってあるだろ。
だが・・・女からは初めて言われた。
(ちょっと待て・・・)
いい友達ってことは・・・
それってあれか?
それってやっぱり---
透「ところでさ。晋はなんでゲームなんかやってんだ?」
「・・・・なんでって。」
透「晋に限らず辰巳さんも玲さんもだけど。わざわざ探さなくても女ならいっぱい寄って来るだろ?」
「まぁ・・・」
透「それに、どうせなら好きになった相手を落とせばいいのに。」
「・・・好きになった相手?」
好き・・・
「本気で女を好きになったことがない。」
透「え!じゃぁ・・・ちょっとでも好きになった人は?」
「あー・・・」
透「あんた・・・どんだけ心が病んでるんですか。」
「なんだと。」
透「いえ・・・なんでも。」
病んでるだと?
相変わらず失礼な女だな。
「それにあいつらはどうか知らねぇが・・・俺は見せ掛けに寄って来る女は好きじゃない。」
透「へぇ、そうなのか。」
「抱くのは好きだぞ。男だからな。」
透「・・・へぇ、そうなんすか。」
ふーん、なんて言いながらモゾモゾと俺から離れていく。
ムカついたんで砂を掛けてやった。
透「な、何すんだよ!」
「お前は?」
透「なんだ!」
「なんで参加したんだよ。嫌だったんだろ?」
透「・・・その場しのぎで頷いたら大変ことになっちゃったんだよ。」
「・・・・・・・・は?」
透「嫌だったけど頷くしかなかったんだよ!」
「・・・・・意味が分からん。」
分かって堪るか。
そう言って宙に紫煙を吐き出す。
なんとなくタバコが似合う女だと思った。
透「なぁ・・・晋。」
「なんだ。」
透「お前さ・・・ゲームを辞退してくれよ。」
「・・・・・・・は?」
再び紫煙を吐く透。
ていうかこいつ・・・
今なんて言った?
透「ゲームって言うくらいだから強制参加じゃないんだろ?」
「まぁ、そうだな。」
透「実はさ、この前顔合わせしてから逃げる気満々だったわけよ。連絡も全部無視するつもりだった。」
「・・・・・・・・・・。」
透「でもなんとなく・・・逃げ切れないような気がするんだよな。ほら、お前らって強引だし。逆に私って臆病者だし。」
「・・・・・・・・・・。」
どの口が臆病とか言ってんだ。
勘違いにも限度ってもんがある。
透「お前らがいい男だってのは知ってる。でもなぁ・・・やっぱり好きになることはないと思う。」
「・・・・・・・・・・。」
透「お前らだって私を好きになるつもりなんて更々無いんだろ?これじゃ永遠にゲームが終わらん。」
「・・・・・・・・・・。」
---好きになることは無い
---辞退してくれ
これも初めて言われた。
なんか・・・不思議な感覚だな。
透「それとさ・・・お前ら相当なエッチ好きみたいだけど。」
「・・・・・・・・・。」
透「実はさ・・・エッチするのが怖いんだよなー。」
「・・・・・・は?」
寒空に紫煙が立ち昇る。
透の表情は見えない。
だが・・・
透を取り巻く空気が変わったのは分かった。
「どういう意味だ。」
透「そのままの意味。」
「・・・・?」
透「逃げるつもりだったからこの前は言わなかったけど・・・変態はやる気満々だし玲さんはエロスだしお前は野獣だし。」
「・・・・・・・・・・おい。」
透「頼むから辞退してくれよ。ヤるなら美人でエロい女とヤってくれ。」
「・・・・発言が男だな。」
まぁな、と笑いながらタバコを口に当てる。
ていうか・・・怖い?
なんだそれは。
もしやこいつ・・・・処女か?
いやいやそれはないだろ。
俺と同い年だと言ってたからな。
「理由は?」
透「ん?」
じゃぁ・・・
「なんで抱かれるのが怖いんだよ。」
「イヤ」じゃなくて。
「怖い」と言う理由はなんだ?
透「なんでって言われても・・・怖いモンは怖いんだよ。」
「だからなんでだ。」
透「・・・・・・・・。」
「・・・?」
透「-------お前には関係ない。」
また、空気が変わった。
今度は・・・冷たい空気。
刺すような、牽制するような。
威嚇するような、そんな雰囲気。
だがなんとなく
苦しそうで・・・
弱々しくて・・・
「・・・そうか。」
色気の無い奴だなとか、本当に女かとか。
さっきまでそんな風にこいつを見ていた。
だが、今のこいつには・・・
なぜか『女』を感じる。