<晋>
今日は久々に一日休みだった。
朝から買い物に出かけ、色々と用事を済ませてさぁ帰ろうと思ったんだが。
今日一日、飯を食ってないことに気付いた。
どこに行くか。
それはすぐに決まった。
しばらく行っていない知り合いの店。
じゃぁ誰と行くか。
それもすぐに決まった。
今回のゲームターゲット。
日下 透。
第一印象。
男なんじゃねぇの・・・と思った。
そして、面白そうな女だとも思った。
登場の仕方が凄かったってのもあるが少しだけ興味を引かれた。
第二の印象。
つまり顔合わせの時の印象だが、リアルに男かと思った。
そして変なヤツだと思った。
ゲームの期間を一ヶ月にしろとか体の関係は無しにしろとか。
今までのターゲットは誰かに落ちた後もゲームを続行したいと言う奴が多かった。
体の関係に至っては明白。
自ら進んで抱かれに来る女ばかりだった。
なのにこいつはどうだ。
「エッチは無しで!」と講義する姿勢は真剣そのもの。
マジで嫌がってるように見えた。
そして第三の、つまり本日の印象。
---何かが、おかしい。
(こいつ、もしかして・・・・)
ファミレスにいると言うので迎えに行った。
それはなぜか。
デートするからに決まってるだろう。
透「な、なんだ腹が減ってたのかー。だったらあんたも食べてけよ。」
逆に誘われてしまった。
別に構わないが初デートだからな。
今日のところは遠慮しておこうと思い透を連れ出した。
知り合いの店。
恐らくデートには打ってつけの女が喜びそうな店だったと思う。
透も喜んでいた。
まるでガキのように。
透「あー美味しかった!ありがとな!」
「別に。」
飯の後、帰ろうという雰囲気になった。
だが、もう少しこいつと一緒にいたい・・・
いや、探ってみたいという気持ちになった。
ドライブに付き合え、と言ったらいいぞ、と返事が返ってきた。
案外素直な奴だ。
ここまでは・・・まぁ良かった。
説明出来ない違和感を感じてはいたが。
これって一応デートとして成り立ってるよな、と思えたからだ。
だが
透「このっ・・・やるなぁ。じゃぁこれでどうだぁ!!」
『なんのなんのー!こ・れ・で・フィニーーーッシュ!』
透「甘いわぁ!!」
「・・・・・・・・・。」
イスに座り込み夢中でボタンを連打する透。
その左側に座る制服男子、同じようにボタンを連打。
俺はというと、透の右側に腰掛けその様子を眺めている。
透「ぃ---よっしゃぁぁ!勝利っ!!」
『あぁぁぁー!負けたー!!』
「・・・・・・・・・。」
現在、古びたゲーセンに来ている。
それはなぜか。
透のヤローが行ってみようぜ、と誘ってきたからだ。
『お兄さん強いっすねー!』
透「まぁな!この機種はかなりやり込んだからよ!」
『へぇぇ!』
地元の高校生だろうか。
いつの間にか仲良くなっていた透。
俺らの周りには制服姿の男子高生が4、5人溜まっている。
まるで自分まで学校帰りの気分に陥る。
いやいや待て。
この状況はなんだ。
これじゃまるで・・・
『お兄さん、良くここに来るんすか?』
透「初めて来た。たまたま通りかかったんだよ。」
『もしかして今からナンパっすかぁ?』
透「何言ってんだ。友達と飯食いの帰りだよ。」
「・・・・・・・・・・。」
(・・・・・これだ。)
飯を食ってる最中から変だと思っていたが、何が変なのか分からなかった。
が、このセリフで確信した。
こいつは・・・俺のこと男だと思ってない。
新入りの男友達と認識している。
『ととところで、お友達ってビックリするくらいカッコイイっすね!』
『俺もすっげぇ気になってた!どうやったらお友達みたいにカッコ良くなれるんすかね。』
透「ならない方がいいって!こいつはな、正常な心と引き換えにこの姿を手に入れたんだ。」
「なんだと。」
透「あはは!冗談だって!」
「・・・痛ェ。」
バシバシ肩を叩いてくる。
非常に痛い。
とにかく、この状況はなんだ。
さっきまでデートしてたんじゃなかったか?
俺の身に一体何が起こっているんだ。
透「晋、そろそろ行くか?」
「・・・あぁ。」
『また寄ってくださいよ!』
透「あぁ、またな!」
『お兄さんまたねー!』
透「あ、そういえば。私はお姉さんだからな!」
「「「・・・・・・・・・・・・え。」」」
放心する集団に背を向け店を出る。
出来れば俺も放心したい。
違う意味で。
透「あー、久々に楽しかった!」
「・・・そうか。」
車に乗り込み走らせる。
チラッと隣を見るとニコニコしながら外を見ている。
(なんだこいつ・・・)
見た目も中身もまるで男。
しかも俺を友達だと思っている。
(・・・・・・・・・・・・。)
とりあえずこの女に対する印象は。
---調子が狂う。