SAKURA∞SAKU first

家族会議—–4 SAKURA∞SAKU first

累「有希っ!!」

 

目にも留まらぬ早業とはこのことだ。

音も聞こえないほど素早くイスを引き
軍隊のごとく切れのある回れ右をかまし

返事だけを置き土産にマッハで2階へ駆け上がった。
怒涛の3段飛ばしだ。

 

純「待ってよ姫!!」

 

背中でガタンッと椅子を引く音を聞いた。

だが追いついては来れまい。

逃げ足だけは天下一品。
自信がある。

 

「むん!」

 

部屋のドアを思い切り開け放ち、反動で勢い良く閉めた。

そしてその勢いのままおびただしい数の鍵を上から順に閉めていく。

ありがとう歴代管理人さん達。
使ったことなんてほとんどなかったが今こそ使わせてもらおう。

それはなぜか。

そりゃもちろん

あいつらと顔を合わせたくないからだ。

 

「うー!」

 

カギを閉め切りベッドにダイブ。
そして布団に包まった。

 

くそ・・・

 

マジで嬉しい。

 

なんなのあいつら。
マジで有り得ねぇ。

弱ぇんだよこういうの!
泣くぞバカ!

 

「うーー!!」

 

嬉しい。
素直に嬉しい。

あんな風に言ってくれる奴なんて・・・
簡単に見つかるもんじゃねぇと思う。

 

でも、本当にいいのか?

 

一緒にいても・・
傍にいても・・

甘えてしまっても、本当にいいんだろうか。

 

ま、嬉しさに任せて思わず返事しちゃったけどな。
意思が弱ぇな、私。

 

(はぁ・・・)

 

とにかく・・・
今はゆっくり立て篭もろう。

照れくさすぎて頭が沸きそうだ。
あいつらには悪いが落ち着くまで一人になりたい。

礼は改めて夕飯の時にでも言おうと思う。

 

(あー、頭がグラグラする・・・)

 

いつもより睡眠時間が短かいからか。
布団のふわふわに意識を持ってかれそうだ。

すごく気持ちいい。
今なら少量の酒で安眠を貪れる自信がある・・・

 

 

 

「おい。」

 

 

 

(え・・・)

 

ち、近い。

なぜだ。
ヤケに近くなかったか今の声。

 

「途中で逃げるとは・・・てめぇ、いい度胸してんじゃねぇか。」

 

やはり近い。

 

(な、なんで・・・?)

 

カギ閉めましたよ。
しかもたくさん。

なんで?
どうして?
WHY?

あ、まさかこれって

 

「・・・・・・・・・夢?」

 

だよねー。

 

「出て来い。」
「ぎゃぁぁっ!!」

 

思い切り布団を取られた。

 

「こ、孝!?お前っなんで!?」
孝「あぁ?」
累「前に言わなかったっけ?孝はカギ開けが得意なんだよ。」
「そそそそそうなんすか!!」

 

どうでもいいが勝手に開けんじゃねぇよ!!

ドアに目をやると累の言う通り鍵全開。
そしてなんと住人共が全員揃ってやがる。

 

(ちょ、ちょっと待て---!)

 

マジで恥ずかしいんで。
今はそっとしておいてはもらえないだろうか!

 

孝「逃げるな、有希。」
「ぅ・・・」

 

とりあえず逃げようと試みたところ
孝に腕を捕まれた。

 

孝「ちゃんと約束しろ。」
「-----。」
孝「勝手にいなくなるんじゃねぇ。いいな?」
「-----。」

 

い、言わせるのかよ。

めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。
もうこいつは羞恥プレイとしか言いようが

 

真「・・・有希。」
「---っ!」

 

だから・・・
そんな目で見るんじゃねぇよお前ら

 

 

「-----分かった。」

 

 

あーもう・・・
顔から発火しそうだ。

 

---ポンポン

要が寄って来てなぜか頭を撫でられた。

他の奴らもわらわらと部屋に入ってきて、ベッドに座る私を労わるように・・・
いや、逃げられないように取り囲んだ。

 

累「有希のこと、ちゃんと守るから。」
「------。」
純「傍にいてよ、姫。」
「--------。」

 

そんな嬉しいこと言うな。
色んな意味でマジで泣く。

 

とにかく

 

頭ん中ぐちゃぐちゃだけど
恥ずかしいやら照れくさいやらでめちゃめちゃになってるけど

 

 

 

「・・・ありがと。」

 

 

 

礼は早目に言っておこうと思う。

 

要「さぁて、それじゃぁこの話は終了!仕事に行くヤツは行ってこーい。」

 

パン、と手を叩いて要が空気を変えてくれた。

そういえば今って朝だったな。
時間のことすっかり忘れてた。

 

純「うわ、やばーい。」
累「純、早く!」
孝「俺はオフだ。」
要「俺もー。孝もだったんだ。」
真「お前らムカつく・・・」
要「ひがんでる時間はねぇよ?遅刻するぞー。」

 

純君と累は既に玄関へ向かった。
真樹も今日は早くから仕事か。

 

真「チッ・・・有希、こいつらには気をつけろよ。出来るだけ早く帰ってくるからな。」
「うん。」
真「行って来る。」
「うん、気を付けて行けよ。」

 

いつの間にか

いつも通りの朝になった。

こんなんなるんだったらもっと寝とけば良かったーなんて
ふざけて恥ずかしさを一蹴したいところだが

 

やばいくらい

 

胸があったかい。

 

孝「・・・なにニヤケてんだよ。」
「別に。」

 

桜館に来た頃を思い出すと有り得ない。

まさかこんな自分になってるなんて
考えもしなかった

 

桜館に来て分かったことその一

 

イケメン野獣共が意外にいい奴らだったってこと。

 

そしてその二

 

 

 

私は幸せ者だってこと。

 

 

 

 

 

 

 

SAKURA∞SAKU first---完