「・・・・・・・・・・・・。」
それにしても---
こいつら神妙になりすぎなんじゃないか?
さっきまでケンカしてた真樹と孝もだんまりを決め込んでいる。
「なにやってんだお前ら。もしかして・・・家族会議?」
累「んなわけねーだろ。」
「・・・ですよねぇ。」
累がいつになく真面目な顔をして突っ込む。
やるならもっと元気に明るくお願いします。
「で・・・話さないといけないことって?」
重い空気には耐えられない。
とりあえず話を促してみた。
孝「・・・昨日な、」
「・・・ん?」
孝「お前が風呂に入ってる時、遼から電話があった。」
「えっ」
遼から電話・・・
孝「お前の様子があまりにも異常だったからな・・・あいつなら何か知ってると思って電話に出た。」
「------。」
孝「色々吐かせようと思ったんだが・・・肝心なことはお前との約束があるから言えねぇって言われた。」
「・・・。」
孝「だが・・・停電になると必ずパニックになるってことと、お前の見たくねぇ『夢』が関わってるってのは聞いた。」
「・・・・。」
孝「お前があいつに口止めしてることは・・・俺らには話せねぇことなのか?」
「!」
繋がってた視線が鋭さを増したような気がした。
他の奴らの視線も正に真剣そのもの・・・
ただ、真樹は前に同じことを話したことがあるからか、さりげなく目を逸らしてくれた。
なにはともあれ、孝の質問は当然の疑問だ。
私でも同じことを聞くと思う。
でも---
「・・・ゴメン。話せるようなことじゃねぇ。」
孝「・・・・・。」
「・・・ゴメン。」
孝「---分かった。」
色々聞かれると思ったが、孝は話は終わりだとでもいうように口を閉じた。
累「ねぇ、有希・・・」
「ん?」
累「昨日みたいになる原因って他にある?停電以外に。」
「・・・今のとこないな。」
累「・・・そっか。」
(・・・参ったな。)
何を思ったのか、累の表情が一気に暗くなった。
他の奴らも同様、普段はチャランポランなくせに真面目な顔を並べている。
逆に、私はというと実はかなり元気だ。
停電なんてめったに起こることは無い。
だがかつて停電にあった際は夢に魘され翌日は廃人のようになってた。
実を言うとパニック時のことはあまり覚えてない。
だが遼から聞いたことがあるその様子はそれはそれは酷いもんだ。
なのに今回はこの通り。
廃人どころか元気ぴんぴん。
トラウマ克服、ってのは都合が良すぎるんだろうが悪い傾向じゃないと思ってる。
けど---
こいつらはそんなこと知らない。
早起きしたのか昨日の夜に打ち合わせたのか知らないが
朝から皆で集まって、しかもこんな真剣な顔して・・・
「・・・私も、お前らに話がある。」
良く寝れたってのは嘘じゃない。
気分も爽快だ。
だが、今朝は非常に早く目が覚めた。
そして---色々考えた。
こいつらって、変人で変態で俺様で---のくせに
実は心配性なんじゃねぇかってくらい心配してくれる。
だから親しくなればなる程
私はきっと、こいつらに迷惑をかけてしまう。
夢の内容は言いたくない。
これは、これから先も変わらないと思う。
そして頻繁ではないけど昨日のように急にパニックになることがある。
これもきっと・・・
簡単には変わらないと思う。
その度に心配かけて
その理由を言えなくて
そしてまた、心配をかける。
なんて悪循環極まりない。
非常に、迷惑だ。
分かってたはずだ。
一緒に生活してる以上、こいつらに心配かけることも
それでもやっぱり、説明したくないと思うことも
頭の片隅で分かってたことだ。
それなのに
私は、バカだ。
(はぁ・・・)
で
考えれば考えるほど、私はこいつらに迷惑しかかけないって結論に到達しました。
「皆、本当にごめんな・・・迷惑掛けて本当に悪かった!」
とにかく謝罪だ。
姿勢を正して頭を下げた。
そういえば私って管理人として桜館に来たんだったよな。
管理人が住人に迷惑行為?
いやいや有り得ねぇ。
やっぱ・・・有り得ねぇよ。
「こんなんじゃ管理人失格だな。でもこれ以上迷惑はかけねぇから安心しろ!」
でもな・・・
お前らが心配してくれて嬉しかった。
嬉しかったからこそ--
「短かったけど管理人引退することにした。今日不動産屋に行くからよ。今度はプリチーな女子を紹介してもらえるように頼んどくからさ。」
桜館から
離れようと思います。