ビーム

ビーム—–2 SAKURA∞SAKU first

有「スー・・」

 

一体なにをしでかすつもりなのか。

有希は息を深く吸い込んだ。
そして---

 

ふぅ、と吐いた。

 

(・・・・・し、深呼吸?)

 

意味が分からない。

しかしその理由を想像する間もなく、有希はくいっと顔を上げ下から見上げてきた。

 

(-----?)

 

今度は一体なんだ?

その前にちょっと待て。
なんか-----距離が近い。

普段なら大歓迎だが今はちょっと--

 

 

---ニコッ

 

 

(え・・・)

 

 

突然、何の前触れもなく有希が微笑んだ。

 

(-----、----っ!?)

 

正に衝撃。

背中から思い切りタックルを食らったような気がした。

 

とにかく

 

心臓がドカンと鳴った。

 

(な、なんだよ今の・・・)

 

情けないが有希と見つめ合ったまま放心状態。

心臓だけが狂ったバイクのように激しく波打ってる。

 

(・・・・!)

 

どのくらい時間が経ったか。
有希がゆっくり離れていく。

いつもならきっと手を引いて行かせねぇのに・・・
なぜか今は安心してしまった。

 

(くそ・・・)

 

よっぽど緊張してたらしい。

安心と同時に今度は顔に熱が集まっていく。
頬がすっげぇ熱い。

 

(・・・・あ・・)

 

ふと有希を見ると次のターゲットを見つけたらしい。

まるで獲物を狙う猫のようにじわじわと真樹に迫っている。

ていうか今のは俺限定じゃなかったのかよ。
なんとなくムカつく。

 

真「------------。」

 

それにしても・・・
どうやら真樹もやられちまったらしい。

深呼吸を食らい見事に硬直しやがった。

そういや普段クールに決めてる帝王も最近じゃ様子が変だ。

有希に振り回されているというかなんというか・・・
まあ、気持ちは分からないでもない。

 

(-----!)

 

固まる真樹から離れ有希はスッと立ち上がった。

そんなに酔いが回ってるんだろうか。
足元がふらついてるような気が・・・

 

累「-----。」
純「-----。」

 

フラフラと純と累に近づいて行く有希。

そしてやはり深呼吸。

ちなみに予想通りの反応を示す二人。
ちっとも面白くない。

 

要「--------!」

 

要がビクッと体を震わせた。
なぜなら有希がヤツに向かって歩き出したからだ。

逃げるようにソファーの上を後退する要。
おまけに「来るな!」とでも言うように首を横に振っている。

 

(・・・面白ぇ。)

 

要がこんな風に焦る様なんて初めて見た。

次はいつ見れるか分かんねぇからな。
この機会にしっかり観察しておこうと思う。

そして要も予想通り

ニッコリビームを食らった後、まるで石像のようにビシッと固まりやがった。

 

それにしても、有希は一体何がしたいんだ?

 

ただの深呼吸?
いやいやそんなはずはない。

それじゃもしや嫌がらせ?
それともまさかのマーキング--

 

(え・・・!)

 

一難去ってまた一難。

俺の番は終わったと思ったが、要から離れた有希は再びこっちへ向かってきた。

要の気持ちが良く分かる。

真樹も同じなんだろう。
今にも後ずさりしそうな勢いだ。

 

(ちょ、ちょっと待て---!)

 

心の叫びも虚しく有希はずんずん進んでくる。

そして俺と真樹の間で立ち止まり--

 

ポスン、と元の場所へ座った。

 

有「あれ、私のグラスこれだっけ?ま、どれでもいっか。」

 

ちなみに何事もなかったかのように飲むのを再開させた。

 

「「「 ・・・・・?? 」」」

 

当然の反応だろう。

なんだったんだよ今のは。
さっぱり意味が分からない。

 

要「・・・あ、あのぉ、有希ちゃん?」
有「あ?」

 

要が代表して聞いてくれるようだ。

ナイスだ。
しっかりやれ。

 

要「今のはどういう・・・」
有「今の・・・?あぁ!今のはな、匂いを確認したんだ!」
要「・・・は?」
「「「・・・・・・・・。」」」

 

に、匂いを?確認?

 

有「へへ。実はな、私、皆の匂いが好きなんだよ。」
要「へ?」

 

す、好き?匂いが?

 

有「なんでか分かんねぇけど・・・すっげー落ち着くんだよなぁ。」

「「「----------!!」」」

 

匂いの確認とか匂いが好きとか
言ってる意味は良く分からない。

 

だが「落ち着く」と言い放った有希は

 

今まで見た中で最高に綺麗な

 

「女」の笑顔を浮かべた。

 

「「「--------。」」」
有「・・・?」

 

そして俺らは全滅した。

 

有「どうした?」

 

どうしたじゃねぇよ。
どうかしてるのはお前だろ。

それとも何をしでかしたか分かってないのか?

もしそうなら・・・
性質が悪いにも程がある。

 

真「な、なんでもねぇ。」
有「・・・そうか?それならいいけど。」

 

やはり分かってないらしい。
一瞬首を傾げた後、有希は飲むのを再開した。

 

有「なんだか今日は酒が美味いな!」
「「「・・・・・。」」」
有「あれ・・・不味いか?」
累「え!あ!そ、そうだな!美味いな!」
純「う、うん。」
有「やっぱアレかな!みんなで飲んでるからかもしれねぇな!」
要「そ、そうだな。」
真「・・・あぁ。」
「・・・そうかもな。」

 

その後、俺達は全員上の空で会話を交わした。

 

ある意味面白い状況だったが

 

楽しむ余裕はなかった。