約束

約束 01 ~GAME





「うわぁ・・・すっごいツヤツヤだ。」
「気持ちいいですよね。」
「うん。あ、ゴロゴロ言ってる。」
「もー!ボスったらカワイー!」









時は休日、土曜 午後13:25

現在地は我が弟、司宅のリビング









「触っても怒らないね。」
「慣れてるんですかね?」
「違うよ!ボスはファンサービス旺盛なんだよね?」
「なるほど。」







3人は余裕で座れるだろうグレーのソファー。

そこにボスを囲むように陣取り座る香織、直樹、玲くん。

彼らは現在、ボスにメロメロだ。







「甘いぞ司!上と見せかけて---こっちだ!」
司「な!またそれかよ!」
「はーっはっは!貴様などもはや敵ではないな!」
司「くそ・・・いつの間に腕上げたんだよ。さては隠れて修行しやがったな!?」
「ふふふ・・・それは企業秘密だ。」







ちなみに家主の司と私はthe ゲームバトル。

テレビの前に座り込み、夢中でコントローラーを操っている。


余談だが全戦全勝。

師匠・晋から伝授されたアレさえあれば今の私に敵など無い。







司「チッ・・・ちょっと休憩だ。作戦練らせろ。」
「どうぞどうぞ。いくらでも考えたまえ。」
司「ムカつく・・・」
「ムカつけムカつけ。ついでに飲み物持って来い。」
司「・・・調子に乗るなよ。」
「敗者が文句言うな。」
司「・・・・・。」







すっげぇ睨まれた。
ま、全然怖くないけどな。

とりあえず飲み物くれ。
頑張りすぎて無性に暑い。







司「・・・それより透。どうしたんだよそれ。」
「え?どれ?」
司「鎖骨。怪我でもしたのか?」
「は?」






手団扇でパタパタやってると不意に首元を指差された。

釣られて視線を下げると--







(は-----!)







まるで幽霊にでも遭遇したかのような衝撃







目に入ってきたソレに







ゾワリと鳥肌が立った。







「え!あ、いや、これはその!虫!虫に刺されたんだよ!」
司「虫?こんな寒い時期に?」
「そそ、そうだぞ!寒くても頑張る虫がいるんだよ!」
司「・・・ふーん。」







ものすごく取り乱す私。

そんな私に不審者でも見るような目を向ける司。



だがヤツも喉が渇いてたんだろう。

コーヒー作ってくる、とキッチンへ去って行った。







(あ、危なかった・・・)







本日のファッションポイントは襟の高いシャツ。

その襟を更に高く引き上げ虫刺されを隠す。


司を見るとこっちに背を向けせっせとコーヒーの準備中。

どうやら完全に季節外れの虫を信じたらしい。
単純な弟で本当に助かった。







(はぁ・・・心臓に悪い・・・)







安堵と共に激しい脱力感に襲われる。







そして原因を作った元凶をチラリと見ると・・・









「ボスの肉球・・・ふわふわしてる!」









私の視線に気付きもせず

元凶、玲くんは無邪気にボスと戯れていた。







(チッ・・・)







人の苦労も知らず楽しそうにしやがって。






この・・・









エロス王子め。















---3時間前














「---ってぇ・・」








朝、目が覚めたら頭が痛かった。








「あれ、ここは--------我が家か?」







目だけを動かし周りを確認する。

うん、ここは間違いなく自分の家だ。







「はぁ、いつ帰って来たんだっけ・・・」







気だるい体を無理やり起こす。

ガンガンと痛む頭を押さえると無意識にため息が出た。









昨日はまぁ、飲みすぎた。









もちろん飲むつもりだった。
そして予定通り飲んだ。


だがちょっとやりすぎたかも。

おかげで目覚めは最悪。
リアルに体が重い。







まぁ・・・









気分は少々すっきりした。









ような気もする。










「いてて、頭が割れる・・・」







それにしてもいつ帰って来たっけ?
それにどうやって帰った?







(えーと・・・)







たまに入る「Bar Black」に行ったのは覚えてる。


いつもの酒を飲みながら玲くんと世間話して

そして・・・

あれ、それからどうしたんだっけ?







「・・・・・・ダメだ、思い出せない。」







ボトルを2本空けたところまでは覚えてるけど・・・

その後はダメだ。
まったく記憶にない。







(ま、いっか・・・)







今までかつて酔って問題起こしたことないし
泥酔して外泊したこともないし

今もちゃんと自分の家だしちゃんとパジャマ着てるからな。

恐らくいつも通り普通に帰って来たんだろ。

うん、そういうことにしておこう。







「え、もう10時半・・・?」







ふと時計を見ると---なんと昼前。

随分長い時間寝てたらしい。

せっかくの休みなのに・・・
なんだか損した気分。


でもさすがにまだ動く気にはなれない。

もうちょっと寝とこうかな。









「あれ・・・」










でも、そういえば今日って








昼から司の家に集合じゃなかったか?









「うっわ、面倒臭ェ・・・」







思わず脱力。
いつの間にか抱きしめてた枕に顔を埋めた。



体は重い。
気分も重い。

こんな状態で人と会うなんて無理、絶対無理。



でも約束したからなぁ・・・
ドタキャンしたら怒るだろうなあいつら。







「はぁぁ、どうしよ・・・」

「あ、おはよう透ちゃん。良く眠れた?」












・・・へ?