トラブル×トラブル

トラブル×トラブル 01 ~GAME





直「ボスですか?えっと・・・確か雑種って言ってましたよ。」
香「え、そうだったの?あんなに貫禄あるのに?」
直「ちなみにすごーく大きいですよね。」
香「そうそう!色は真っ黒で、いかにもボスって感じなの!」







本日、無駄にテンションが上がる金曜日。

時刻は午後9時15分。



現在地はいつものようにBAR・Blue Hawaii。

メンバーはおなじみ香織と直樹。

あいにくカウンターが空いてなかったのでボックス席に案内された。







(あー、ビールが美味い。)







今日は久々に平穏な一日だった。

なぜかって?

理由は簡単。

S社のエリート、変態辰巳が不在だったからだ。







「出張?」
木「そうなんですよ。急に決まってしまって・・・」
「ふーん。」
木「寂しいですか?」
「全然。むしろ嬉しい。」
木「・・・。」







どうやら急に出張が入ったらしい変態。

妙な開放感を覚えながら運転手・木戸と二人で仕事に没頭。

これがまたはかどるはかどる・・・







木「お疲れ様でした!」
「お疲れさん。なぁ、今度からお前一人で来いよ。」
木「・・・来週は辰巳さんと来ます。」
「・・・チッ」







そしてなんのトラブルも無く一日が終了。

出来る男・木戸を見送り、私も帰ろっかなとカバンを手にしたところ








(んー・・・)








無性にビールが飲みたくなった。








というわけで

いつものように香織と直樹を誘って飯を食べ

いつものように葵の働くBlue Hawaiiでゴーゴー二次会ということになったのだが



いつもと違う点が、一つ---








『それじゃ、ボスって大きな黒猫ってこと?』
直「簡単に言うとそういう感じですね。」
香「違うよ!ボス猫の中のボスだよ!」
『へぇ!』








いつもと違う点。

それはね、なぜか私の隣に--











エロスの王子、玲くんがいる。











玲「二人ともボスと遊んだことあるの?」
香「もちろんあるよ!」
直「俺もあります。それこそ一昨日会いましたよ。」
玲「えー、いいなぁ。」







彼らは現在「ボス」の話題に夢中。

ちなみにボスとは何者かって?

それはね、私の愛するネコだよ(弟所属)







ところでなぜ玲くんがここにいるかというと








それがどうもよく分からない。









---30分前









玲『透ちゃん、明日休み?』
「え、明日?え、えーと・・・」
玲『今どこにいるの?』
「い、今?えーとえーと・・・」
玲『なんで悩んでるの?ちゃんと本当のこと言ってよ。友達だろ?』
「・・・葵のBlue Hawaii。ちなみに明日は休み。」
玲『そっか、了解。』







Blue Hawaiiに入って約10分。

念願のビールにありついてまったりしていると玲くんから電話。


幸せの邪魔はさせん!と抗ってみたがあっさり居場所を吐かされ

そしてなんと電話が切れて3分後に玲くん登場。







『きゃー!!誰あれ!どこの王子!?』
『うわ、すっごい綺麗な人!!』

葵「えー!!れれ、玲さんだー!」

「・・・・・。」







(さよなら、私の平穏・・)







王子の登場に色めき立つ店内と葵。

だが悲しいかな・・・
こういうサプライズに免疫が出来始めた自分。

ため息は出たものの驚きはしなかった。




しかし---







玲「あー!直樹くんと香織ちゃん!」
香「あー!王子!!」
直「あ、玲さん!」
「え・・・」







この前はありがとー!と再会を懐かしむ3人にはさすがに驚いた。

どうやらこいつら、私が晋に拉致されたあの夜に親睦を深めてしまった模様。







玲「俺も一緒に座っていい?」
香「もちろん!座って座って!」
直「玲さん、何飲みます?」
「・・・。」







(どうなってんだこりゃ・・・)







いいのか悪いのかよく分からないがすっかりこの場に馴染んでいる玲くん。

まぁ人懐っこい性格だし、香織と直樹が気を許してしまうのも分かるが・・・

だがそれにしても自然過ぎる。
まるで昔からの友達同士のようだ。







玲「いいなぁ・・・俺もボスに会ってみたい。」
香「会えばいいじゃない!今度一緒に行く?」
玲「え、いいの?」
直「俺も行きたいです。」
香「よーし!それじゃ一緒に行こ!」
玲「やったー!」
「・・・。」







それにしても君たち・・・







さっきから私の存在を忘れてやしませんか。








香「そうだ直樹。司くんに予定聞いててくれる?」
直「分かりました。今から電話してみようかな。明日休みかもしれないし・・・」
玲「司くんって誰?」
香「司くんは透の弟なの!直樹と同い年だったっけ?」
直「はい。ちなみにボスのご主人様です。」
玲「へぇ、そうなんだ。司くんに会うのも楽しみだな。」
「・・・。」







(なんだよ・・・)







お前ら私を無視するな。
誰か話し掛けてくれよ。

玲くんが来てから全然喋ってないんですけど・・・







玲「お土産、何持って行けばいいかな。ボスって何が好きなの?」
直「そうですね、猫缶とかどうですか?」
香「いいねぇ!いっぱい買っていこ!」







おいおい待てって私も誘ってくれよ。
ボスの好物なら何でも知ってるぞ?

それともなんだ?

もしやお前ら3人でボスに会いに行くつもりなのか?







(----------。)







ウソだろ、そんなの寂し過ぎる・・・







玲「透ちゃん?」
「・・・。」
玲「何怒ってるの?」
「・・・別に。」
玲「透ちゃん。」
「なんだようるせぇな。放っといてくれよ。」

玲「ねぇねぇ透ちゃん、透ちゃんも一緒に行こうね?」

「-----!」










(れ、玲くん・・・!)











見間違いなんかじゃない。







一瞬、玲くんの後に天使の羽が見えた。











玲「ね?一緒に行こう?」
「・・・つ、都合が合ったらな。」











思わずぶっきらぼうに吐き捨てる自分。










なぜ彼がここにいるのか
なぜ自然に和んでいるか









そんなの分からないし細かいことはこの際どうだっていい。









直「それじゃ、司に電話してきます。」
香「宜しくねー!」
玲「いってらっしゃーい。」
「どうせなら今から来いって言っとけー!」
香「あれ、透が元気になった!」
玲「ふふっ」









玲くんありがとう。









私はいい友達を持った!