SAKURA∞SAKU first

好きの定義—–1 SAKURA∞SAKU first

「はいはーい。どしたー?」

 

ある天気の悪い昼下がり。

お昼休憩を入れてベランダで一服していたところ珍しく携帯が鳴った。

誰だこんな時間に・・・
と思って携帯を手に取ると

 

相手は、要。

 

要『あ、有希ちゃん?累って家にいない?』
「累?あいつは明日まで研究室のお泊りでしょうが。」

 

そう。
桜館のアイドル・累たんは昨日から外泊中なのである。

「俺は男だ」とか「好きだ」なんて一人前のことを言うくせにやっぱり可愛いのは変わらない。

そんな累たんがいないとなんだか寂しい。
早く帰って来い心のオアシス。

 

要『そうだったっけ・・・うーん、参ったな。』
「どしたの。」
要『PCが壊れちゃって。PCのことはいつも累に頼んでたからさ。』
「あららそりゃ大変だ。急ぎなのか?」
要『特別急用じゃないけど明日も使えないんじゃねぇ。』

 

どうやら我が家の変態は、仕事が出来なくてお困りのようであります。

 

要『いいや。誰かに当たってみる。』

 

おやおや情けない声出しちゃって。

電話越しってのが残念だ。
お前の困った顔を拝みたかった。

 

ま、それは置いといて

 

「・・・有希様が治してやろうか?」
要『へ?』

 

実はPCに詳しかったりする私。

今日は後少しで終わるし実際困ってるみたいだし。
一日一善って言うもんな。

 

「その代わり今日の晩飯奢れ。」

 

何が一日一善だ。
我ながら善人の言うことではないと思う。

 

要『・・・そんなんでいいの。修理の見返りって。』

 

え!

 

「も、もっといいモンくれんの?」

 

そ、それじゃ遠慮なく・・・

 

要『うーん。"俺"とか?』
「・・・じゃぁな。一人で踏ん張れよ。」
要『ごごごめん!嘘!嘘だって!!晩飯どこでも連れて行くから!』
「ふむ。」

 

相変わらずバカな男だな変態め。

 

「じゃあ後でな。」
要『ああ、気をつけて来いよ。』
「了解。」

 

今日は他のヤロー共は帰りが遅い。

夜は要と飯かー
二人分だけ作るのって面倒臭ェなー
なんて思ってたのでちょうど良かった。

晩飯報酬で手を打ち、仕方なくPCの診療に行ってやることにした。

 

「それじゃ、しゅっぱーつ!!」

 

遣り残した仕事をちゃちゃっと済ませて車に乗り込む。

そういえばあいつ、どこにいるんだろ?

桜館に来て大分経つが・・・
そういえば要が何の仕事してるのか知らない。

「直してやろっか?」なんて上から目線で引き受けたけど要が普通に会社勤務してたらどうしよ。
私って超目立っちゃうんじゃね??

えー、なんか面倒になってきた。
引き返そっかな。

 

しかももう一つ
重要な問題に気付いてしまった。

 

方向音痴の私の為に詳しく道を説明してくれた奴の言葉をメモした紙。

最終目的地の名前が書いていない。

 

(会社の名前言わなきゃダメでしょー。)

 

会社名を忘れるなんて・・・
やはりあいつはバカだ。

会社でも適度な業績をキープするやる気の無い社員に違いない。

ちなみに気付かなかった私に責任はねぇよな?
ないない、言わない奴が悪いんだ。

頭の中で散々『バカめ』と罵りながら目的地近くまで来れた--

 

 

(え・・・)

 

 

ここ、でしょうか?

いや違いますよね。

えぇ?
でも周りにそれらしき建物ないし・・・

 

(・・・・・・・・・・。)

 

じゃぁやっぱりここなのか?

いやいやちょっと待て。
ここで働いてるってことは・・・

 

(あいつってまさか・・・)