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「いらっしゃいませー!」
時は平日、水曜日。
時刻は21:15。
「悪い、遅くなった。急に残業が入ってさ。」
場所はおなじみブルーハワイ。
平日だってのになかなかの客入り。
店内はまるで週末の夜のようにざわめいている。
そしてそんな人ごみの中
文句も言わず俺を待っていてくれたのは--
「「・・・・・・。」」
いや間違えた。
不機嫌オーラ丸出しで待ち構えていたのは・・・
「遅ェ・・・」
「ほんとだよ。待ちくたびれて眠っちゃうかと思った。」
「・・・ゴメンゴメン。」
俺の顔を見るなり文句を垂れる晋と玲。
まったくお前ら・・・
お疲れ様くらい言ってくれてもいいんじゃないの。
「あー疲れた。」
冷たい言葉に泣きそうになりつつ席に着く。
今日はBOX席。
いつも思うけど男3人で囲むテーブルほど悲しいものはない。
葵「たた、辰巳さんお疲れ様です!飲み物はいつものでいいですか!?」
「え?あ、あぁ、ありがと葵くん。いつものでよろしく。」
葵「了解です!」
相変わらず俺が大好きらしい葵くん。
それはそれは足取り軽くカウンターへ走り
スキップしながらいつもの酒を持って戻ってきた。
葵「ではでは!ごゆっくりどうぞ!」
「あ、ありがとう。」
ビシッと敬礼を決め、颯爽と立ち去る葵くん。
すごいね、まさに店員の鏡。
「それじゃ、かんぱい。」
「うん。」
「・・・・・。」
お互い軽くグラスを挙げて酒を口にする。
あぁ、仕事上がりの一杯っていいよねぇ。
一日の疲れがスーッと取れる気がする--
晋「・・・で?」
「・・・・・。」
晋「話ってなんだよ。」
玲「くつろぐなら家に帰ってからにしてよ辰巳。俺ら1時間も待ちぼうけ食らったんだから。話があるなら早くして。」
「・・・・・。」
(もー・・・)
一息つく暇すら与えてもらえない。
ほんとお前らって冷たいよね。
俺らって友達じゃなかったっけ?
ま、そんなことはどうでもいいか。
「話っていっても・・・たいしたことじゃないけど。」
「「・・・・・・。」」
「透ちゃんとのゲーム。お前らはどうなったのかと思って。」
「「------。」」
透ちゃんがターゲットになってだいぶ時間が経過した。
透ちゃんは一カ月を目標に頑張る、なんて言ってたけど
一カ月なんてあっという間に過ぎ去った。
その間、晋からも玲からもゲーム終了の連絡はなし。
もちろん、俺から連絡することもなし。
このことが示す意味は2つ。
1つ目は過去のゲームの期間記録が更新されたということ。
一ヶ月なんてマジですごい。
思い返してもだんとつ最長記録だ。
そして2つ目はというと・・・
俺ら三人、揃いも揃って
ファーストアタックは透ちゃんに惨敗したことを意味する。
こいつらがどう攻めたかは知らない。
だが、今回は晋も玲もノリノリだったし・・・
手を抜いたとは考えられない。
とにかく、こんなのは初めてのケース。
さすが透ちゃんと言うべきか
ますます興味が湧いたというか・・・
本音を言うと、かなり驚いてる。
まぁ、そんなこんなで
ひとまず話し合いの場を設けようと思ったわけだ。
だってこいつら、一人の女を追っかけるタイプじゃないだろ?
俺様「透には飽きた、俺は降りる。」
王子「もう満足したから俺は降りるよ。」
なんてことを考えてる可能性もある。
ま、俺としてはそれでも全然構わない。
ゲームには勝利できるし透ちゃんを独り占めできるしやったー一石二鳥。
・・・なんて展開を予想してたんだけど
玲「ゲーム、ねぇ・・・」
晋「・・・・・。」
(・・・な、なんだ?)
思い悩むように視線を下げる玲
不機嫌そうにきゅっと眉根を寄せる晋
なにそれ。
どういう表情?
玲「・・・それならちょうど良かった。俺も話したいことがあったから。」
晋「・・・奇遇だな。俺もだ。」
(え・・・)
いつになく真面目な表情を見せる2人。
なにそれマジで意味が分からない。
でもどう見てもこれは・・・
透ちゃんに飽きましたって顔じゃない。
(ふーん・・・)
こいつらが何を話すかなんて分かるわけがない。
だがとりあえず
ゲームを降りるつもりはないってのは分かった。
「・・・俺のは大したことじゃないから。お前らからお先にどうぞ。」
よいしょと足を組み替える。
さてさて・・・
ゆっくり聞かせてもらいましょうか。
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