「ウソだろ!神様が来てくれたのか!?」
変なヤツだとは思っていた。
だが・・・
思い返してもやっぱり変なヤツだと思う。
佐野彰
いつの間に引っ越してきたのか。
気付いた時には隣に住んでた。
そして、初めの印象は正に壮絶だった。
「なな、なんじゃこりゃぁぁーーー!!」
夜中に勉強中、突然響いた雄叫び。
何事かと思えば今度は地響き。
そしてまた雄叫びが響き渡る。
幽霊の仕業だと思った。
なぜならこのアパートには俺しか住んでいないからだ。
4室しかないボロアパート。
俺の部屋は2階の奥。
そして奇妙な叫び声は隣から聞こえるような気がしてならない。
だが、とりあえず無視することにした。
幽霊だろうが何だろうがどうでもいい。
しばらくしたら気が済むだろうし勉強中だし。
それにこの問題がもう少しで解けそうだ。
(これがこうしてこうなって。
あ、もしかしてあれをこうすると解け
「ぎゃぁぁぁっ!!!」
凄まじい雄叫び。
そして俺のひらめきは見事に消し飛んだ。
「・・・・・。」
イラッとした。
そして許さんと思った。
幽霊だろうが妖怪だろうが関係ない。
ガツンと一発言ってやろうと思った。
そうと決まればさっさとやろう。
部屋を出て5歩ほど歩いて隣のチャイムを鳴らす。
---ガン、ガン、ゴンっ!
すごい音がこっちに向かって近づいて来る。
そして勢い付いて出てきたのは
「ウソだろ!
神様が来てくれたのか!?」
今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げる
ただの普通の女の子だった。
「ああありがと神様!
私!佐野彰です!」
ただの普通の女の子?
いや違う。
「なんで私は無傷なんですか!
なんで若返ったんすか!
そしてここはどこだ!」
こいつはとんだ変人女だった。
「か、神様-----っ!」
元々あまり驚かない性格だと思う。
ついでにいうとあまり焦りもしない。
だが翌日学校で会った時はマジで驚いた。
まさか学校で会うなんて思ってなかったし、しかも隣の席。
「神様」と叫ばれた時はもっと驚いた。
おかしなヤツだとは思っていたがまさか空気まで読めない変人だったとは・・・
とにかく驚いた。
そして焦った。
当然だがクラス中の視線が突き刺さっている。
さすがにこの中で話を進めるほど図太くは無い。
「おいコラおろせ!!」
「黙ってろ!」
とりあえず抱えて拉致して走った。
そして屋上でバトル開始。
「---ったく。
一体どういうつもりだよお前。」
マジで一体どういうつもりだ。
勉強の邪魔はする
人前で神様呼ばわりする
俺に恨みでもあるのか?
嫌がらせのつもりなのか?
(なんなんだよこの女・・・)
大体なんで隣に住んでるんだ
なんで同じクラスなんだ
ついでになんで隣の席なんだ
接点の多さに吐き気がする。
(まさか・・・)
睨み合いが続く中、ふと思った。
こいつはまさか
追っかけ連中の仲間なんじゃないか、と。
---綺麗
まぁ、顔のことだな。
初対面のヤツの9割がそう言う。
普通なら喜ぶところなんだろう。
だが全然嬉しくない。
なぜかって。
この顔は母親にそっくりだからだ。
出来れば消し去ってしまいたい。
もっと出来れば鏡も見たくない。
なのにそんな願いとは裏腹に、この顔のせいで昔から女がわんさか寄って来る。
じろじろ見られる
ヒソヒソ囁かれる
強引に物品を押し付けられたり
後をつけられたり
好いてくれるのは有難い。
だが毎日やられるのは正直辛い。
そんなこんなで今じゃ立派な女嫌いだ。
「このっ、偽者ヤロー!」
「・・・。」
(・・・なんだそりゃ。)
しかしながらこの女、どうやら追っかけヤローではないと思われる。
「お前」と呼んだり睨んできたり
挙句の果てには偽者扱い
もし奴らの仲間だったらこんな態度は取らないと思う。
それに、どうもこいつは変だ。
「若返ったんだ」とか「実はOLなんだ」とか
確かに言ってることも変だがそれじゃない。