『じゃ、今日から宜しくね!』
「えっ!今日からなんすか!?」
桜館に住み着き、早半年経ちました。
季節もすっかり秋めいて、栗が食べたくなる季節ですな。
あれから停電もなく至って平和に生活しております。
・・・と言いたいところなんだが。
「ちょちょちょちょちょっとぉ!!」
『じゃぁねー。』
「-----切りやがった。」
電話の相手は友人、あっ子様。
何があったかというと・・・
ひょんなことから頼まれごとを引き受けるはめになってしまったのだ。
(あーもう・・・参ったぜ・・)
非常に頭が痛い。
現在午前10時。
頭を抱えながらコーヒーを求めて1階へおりた。
(あれ・・・)
「2人が揃って休みなんて珍しいな。」
リビングのソファーには要と真樹。
あ、今同級3人組だ。
変な感じ。
要「珍しい?そうか?」
真「お前・・・まさか俺に合わせたんじゃねぇだろうな。この変態。」
「えぇ・・・お前らってやっぱそういう関係だったのか?」
要「やっぱりって何。ちょっと真樹クン。有希ちゃんが誤解するからそういうこと言うのやめてよ。」
真「そういえば有希。」
要「えっ、俺は?スルーなの?」
「・・・・・。」
朝から騒がしい奴等だな。
落ち着きが無いというかなんというか・・・
前々から思ってたがどうも同い年とは思えない。
だがこいつらが助教授様だったり社長様だったりするんだからな。
世の中間違ってる。
「で、なんだよ真樹。」
真「今日の夜、遼が・・・なんとかってヤツを届けに来るって言ってたぞ。」
「なんとか?なんだそれは。あーでも今夜はダメだ・・・」
真「ダメ?なんで。」
本当は家にいたいんだよ。
でも今日はダメなんすよ・・・
「バイトっていうかなんていうか・・・」
要「バイト?なんでバイトなんかすんの。」
「知り合いに頼まれたんだよ。ちょっとの期間だけ代わりに入ってくれって。」
真「随分適当なバイトだな・・・何時からだ?」
「8時。」
真「・・・何時までだよ。」
「0時。」
要「ちょっと有希ちゃん・・・そのバイトって--」
えー、聞かなくても分かるだろうが。
この道に関しては君達の方が大先輩のはずだ。
「夜のバイトって言ったらホステス姉ちゃんに決まってんだろ。」
要・真「ダメだ。」
「・・・は?」
要「そんなバイトは許しません!」
「・・・え、お父さん?」
ヤケに真剣な顔でプンスカ怒り出す要。
ていうかこれって乗らなきゃダメなわけ?
『お父さん分かって!もう決めたの!』とか?
真「とにかく、ダメだ。」
え、今度はお兄様?
おいおい面倒臭ぇよお前ら。
そういう遊びは2人でやってくれ。
「ダメもなにも・・・引き受けちまったんだから仕方ねぇだろ。それになんでお前らが止めるんだよ。」
要「見ず知らずの男にベタベタされるんだよ!?」
「お前が考えてるような店じゃねぇよ。それに仕事だから大丈夫だ。大分前だけど手伝いでやったこともあるし。」
真「騙されて泣くのが目に見えてる。」
「・・・どんな想像してんだよ。」
まぁ、私も行きたくはないんだけどさ。
でもあっ子様には逆らえねぇ。
君たちの事で色々お世話になってるんで。
それに逆らうのが非常に怖いです。
「ていうか安心しろ。変な男には慣れてる。」
要・真「は?」
「お前らより変なヤローなんて滅多にいないだろうが。」
要・真「・・・・・・・・。」
ビシっとポーズを決めてやった。
どうだ。
何も言えまい。
真「・・・言葉遣いはどうするつもりだ。お前のそれで客が満足するとは思えねぇ。」
要「そ、それは言える・・・」
何を想像したのか。
要がげんなりしやがった。
一発ごついてやった。
「バカだなぁお前ら。仕事中はプリチー言語に変換すんだよ。カワイイぞ?惚れっかもよ?」
真「なんだその言語は。喋ってみろ。」
「ここでは無理。気分が乗りませーん。」
要「なんだそりゃ。」
お前らに可愛いフリして何の得があるんだよ。
想像するだけで気分悪くなる。
「とにかく、週に2日くらい行くからな。ヨロシク。」
真「・・・店の名前は?」
「SAKURAって言ってたな。」
真「店でのお前の名前は?」
「ネネちゃんだってよ。カワイイ名だろ?」
要「SAKURAのネネちゃんね。」
何故か要が反芻した。
「そういうわけだ。今日は飯の用意が出来ないから頼むぞ。」
何を考えてるのか顎に手を当て思案顔の二人を後に、コーヒーと共に部屋に戻った。
今日は早目に仕事を終わらせなければならん。
あ、遼にも電話しとかなきゃな。
だが
私は甘かった。
野獣共が沈黙する時
それは何か企んでいる証拠・・・
そんな分かりきったことに
なんで気付かなかったんだ私!