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「桐山ッ・・・待っ--!」
「ダメ。待たない。」
イッたばかりの体から自身をギリギリまで引き抜く桐山。
そして再び、一気に押し入ってくる。
「ゃ--ぁぁっ!ダメっ---まだ--ぁッ!」
「楓さん、可愛い・・・」
「-----ッ!」
腰を進めながら顔を覗き込んでくる桐山。
その表情はとても切なそうで
震えを誘うほどに色っぽくて
さっきまでただの仕事仲間だったのに
そんな顔で見つめられたら、もう---
----------こんな始まり方
「あー、酔った。」
昨日から出張に出向いている。
お得意先からお招き頂いているいわゆる逆接待的な出張。
二泊三日のスケジュールで本日二日目の夜。
明日は仕事の予定もなく、帰るだけということでお酒の席が設けられた。
午後6時から始まった宴席。
途中で帰るわけにもいかずホテルに戻ってきたのが11時。
そして現在11時45分。
ふらつく体にムチ打ってシャワーを浴びてきました。
「あー、酔った。」
さっきからこれしか言ってないような気がする。
でも本当に酔ってるのだ。
先方の部長さんが豪快な人でガンガン飲まされた。
負けじとバンバン飲ませたけどね。
「うー、酔った酔ったーへへっ。」
中途半端に髪を乾かし、中途半端に浴衣を着てベッドに倒れこむ。
どうしようすごく眠い。
このまま寝てしまおうか・・・
いやいやダメだ。
二日酔いの薬飲んどかなきゃ明日がきつい。
それに目覚まし。
携帯アラームの設定しとかないと・・・
明日、起きれ・・な・・・
---コンコン
「---------。」
完全に閉じていた瞼を無理矢理持ち上げる。
ついでに眉間にシワを寄せてやった。
「---ったく・・」
寝るつもりは無かったけどそれでも睡眠の邪魔をされるとムカつくものだ。
小さく悪態をつきながらなんとか体を起こし、ふらつきながらドアに向かった。
「・・・誰?」
「あ、俺です。桐山です。」
まぁ、聞かなくても分かってたけど・・・
「どうしたの。なんかあった?」
「本城さん大分飲んだみたいだから・・・二日酔いの薬持って来ました。」
「え、マジ?」
桐山、やるじゃないか。
そんな桐山というのは二歳下の会社の後輩。
今年の初めにうちの部署に移動してきた期待のホープで、前評判通りとても仕事の出来る男だ。
おまけになかなかの色男。
身長も高いしスタイルもいい。
ついでに性格温厚で紳士的ときたら女子社員が放っておくはずもない。
「きゃー!」と色めき立つ中心には常に桐山がいるくらいこいつの女子人気はすごい。
まぁ、私個人的にはただの出来る後輩。
仕事で一緒になることが多いからか、"異性"というよりは"仕事仲間"の方がしっくりくる。
実際今日だって桐山と二人で出張に来てるわけだけど--
「本城さん?」
「え?あ、あぁごめん。ちょっと待って・・・今開けるから・・・」
(うわ・・・)
か、鍵が3つに見える。
こりゃダメだ。
ほんとに酔ってる。
しかも---なにこれ。
このドアってこんなに重かったっけ?
「ご、ごめん桐山・・・鍵開けたからドア押してくれる?」
「え?押すんですか?」
「酔ってて力が入らないわ。ドアが重くて------うわっ!」
「え!」
言った通り素直に押してくれたんだろう。
不意に開いたドア。
ま、私も思い切り引っ張ってたからね。
そりゃ転ぶわ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「う、うんうん大丈---ぎゃっ!!?」
情けなく床に転がる私。
駆け寄った桐山に腕を引かれて体を起こす-----とビックリ!
浴衣が乱れて太ももがチラリ。
もちろん光速で隠した。
「ああ、あのあの---!」
「・・・。」
「ちょちょちょっと酔っ払ってて!でも気分は悪くないからさ!明日にはビシッとしてるから心配しないで!」
「・・・・・。」
苦し紛れに話を逸らす。
だって---焦る。
酒でふらふらな体
乱れた浴衣
仕事上でしか付き合いの無い人間にこんな姿を見られるなんて恥ずかし過ぎる。
できれば薬を置いてとっとと部屋へ戻って欲しい。
「ああ、あの桐山。薬ありがと。」
「・・・・・。」
「もう大丈夫だから---」
呆れて何も言えないのだろうか。
何のアクションも無い桐山にチラリと視線を向ける。
するとバチッと目が合った。
そして途中で言葉に詰まってしまった。
なぜなら--
「え、な、なに・・・桐山、顔真っ赤・・・」
「---!」
慌てて目を逸らし口元を押さえる桐山。
でもその顔は更に紅く染まって・・・
なんだろうこれ。
なんだかほら、その、あれだよ
「・・・可愛い。」
「えっ?」
この状況で言うのは変かもしれない。
でも、カッコいいとか男らしいとか
女子から"理想の男"だなんて噂されてるくせに
焦って顔を染める桐山はどう見ても可愛い年下の男の子。
「ぷぷ、まるで高校生だね。」
「こ、高校生って・・・」
「だってこのくらいで紅くなるなんて。」
「それは・・・」
「かっわいー!」
「・・・・・。」
・・・私は、酔ってた。
「大人っぽいと思ってたけど、桐山もまだまだ子供だね。」
「・・・・・。」
「いやぁ、意外な一面を見ちゃったな。はは!」
「・・・・・。」
酔ってた。
簡単に転倒するくらい酔ってた。
だから気付かなかった。
イケメン桐山の表情が変わったことに・・・
「---え?」
突然、大きな手が頬に触れた。
「どうした、の-------っ!」
誘導されるまま顔を上げて、思わず息を呑んだ。
なぜなら桐山の目が
あまりにも真っ直ぐだったから。
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