孝「じゃぁな。」
Pi--
遼と話していた孝。
しばらくやり取りをした後、電話を切った。
(・・・・・孝?)
何を考えてるんだろう。
こっちを見ず窓の外を見つめてる。
話してる内容はなんとなく分かった。
恐らく、さっきの有希は「夢」と関係してるんだろう。
(なんだったんだよ・・・あれは・・・)
--夢を見たくないから酒を浴びる
これは俺達全員が知ってる「有希の夢」に関するほんの一部。
そして今日、新たに分かったそれは・・・
夢に対する有希の「異常な怯え様」
(泣いてた・・・・)
悲しくて泣いてるのはもちろん、嬉し泣きでさえ見たことがない。
だからかもしれないけど・・・
さっきの涙は本当にショックだった。
思い出すと胸が締め付けられる。
--なんで泣くんだろう
--なんで怯えるんだろう
そんなの分かるわけがない。
俺達は有希に関して知らないことが多すぎる。
だからこそ知りたいと思う。
守りたいからこそ知っておきたいと思う。
でも・・・
知るのが怖い。
そう思うのも事実。
孝「・・・おい。」
真「・・・・・。」
「・・・なに?」
孝「少しだけ分かった。」
真「・・・下で詳しく説明しろ。」
孝「あぁ。」
ゆっくり腰を上げる孝。
孝を追って、俺達は1階に向かった。
リビングに向かうと有希はまだ風呂から上がってなくて
要と純がソファーに座って何か話してた。
要「何か分かったのか?」
孝「少し。」
俺達もソファーに座る。
そして孝の言葉を待つ。
孝「ああなる理由は教えてもらえなかった。言うなって言われてるんだろうな。あいつは有希が嫌がることはしねぇから・・・」
「そう、だろうね。」
有希の話をする時、遼は「あのヤローはさぁ」なんて呼んだり「あいつは男だ!」なんて言ったりする。
でも時々、有希を見る目がドキッとするくらい優しい。
2人は一見、仲のいい友達同士に見えるけどやっぱり遼は有希のこと好きで・・・
そしてその想いは測ることが出来ないくらい大きいんだと思う。
だからこそ
遼が有希が嫌がることをするなんて有り得ない。
その後、遼と話した内容を聞いた。
有希は停電が怖いってこと
それは夢が関わってるってこと
いつもは正気に戻るのに時間がかかること
(やっぱり・・・)
やっぱりさっきのは夢が関係してたんだ・・・
何が有希を苦しめてるのか分からない。
でも・・・
あんなになるくらい酷いことなんだろう。
なんだか胸がズキズキする。
(消えてくれればいいのに・・・)
見ることの出来ない有希の過去が
すっげぇ憎らしくなった。
孝「そういえば・・・」
要「ん?」
孝「遼のヤツ、有希は俺達のことを頼りにしてるって言ってた。」
「え?」
まだ何かあるのかと思ったら、なに?
孝が不機嫌そうに眉根を寄せて呟いた。
純「頼りにしてるって・・・なんで?」
孝「こんなに早く元に戻ったのが初めてだからだと。」
(なにそれ。)
有希が俺達を頼りにしてる?
そのおかげで心の傷が治ってきてるとでも言いたいの?
なに言ってるの遼。
それは違うよ。