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「ご、ごめん!仕事押しちまって!」
午後8時ちょっと過ぎ。
楽器が並ぶスタジオを足早に突っ切る。
そして奥にある接待室の扉を開けると・・・
RYOのメンバーとFORMとやらのメンバーが勢ぞろいしていた。
そう-----
今日はライブの顔合わせなのである。
遼「大丈夫大丈夫、お疲れ。お前はそこに座って。」
「うす。」
遼「よし、これで全員揃ったな。」
ではでは・・・と改まって、遼MCによる顔合わせ会が始まった。
といっても両グループは元々交流があったわけだからな。
専らFORMの皆さんが私に自己紹介する会となった。
『トモヒロです。』
『ハヤトです。』
『タイチです。』
『タクミでーす。よろしく!』
「ゆ、有希です。宜しくお願いします。」
(る、累たん、レクチャーしてくれて助かったぞ-----!)
FORMのメンバーは5人。
前もって調べてなかったら絶対名前覚えられなかった。
とりあえず名前と顔を早目に一致させることに専念しよう。
「晴樹です、宜しく。」
「あ、こちらこそ。」
この子は覚えてる。
はるき、ハルキ、あ、晴樹か・・・
確かリーダーだったな。
(それにしても・・・男ばっかだな。)
FORMは男性グループ。
当然だが男が5人。
RYOのメンバーも男率高いからな・・・
なんていうか、華がねぇなぁ。
『一緒にやるのっていつぶりだっけ?』
勇「すんごい久しぶりだよな!だって俺、あの時髪の毛真っ赤だったし!」
『ええー!そうだっけ!?』
形式上の顔合わせも無事終了。
どうやら久々に一緒にライブすることになったらしい皆さん。
フリータイムに入ると積もる話で盛り上がり始めた。
私はというと、椅子にもたれて脱力タイム。
最近色々あったからな、疲れてんだよ。
その上仕事もなかなか忙しい。
バタバタする時って更なるバタバタが押し寄せてくるよな。
なんでだろ。
神様のいたずら?
「それにしても・・・有希がこんな可愛い人だとは思ってなかったなぁ。」
「・・・・・・・・は?」
急に降ってきた声に脱力タイム終了。
とはいえ緩み切った思考のまま声の発信源に視線を向ける。
えと、この子は確か・・・
拓海君、だったっけ。
拓「遼のライブ映像で見てたけどいっつも帽子とかで顔が良く見えなかったからさ。カッコイイ系を予想してたけど意外と可愛くてビックリ。」
「そ、そーっすか。どうも。」
ニコニコしながら頭の先から足まで観察される。
おいおい失礼な奴だな。
そんなに見られたら居心地が悪いっての。
でもライブ成功を誓った仲間同士無下にも出来ない。
とりあえず仲良くやろうの意味を込めてピースサインを送ってみる。
拓「あはは!なにそれ面白ーい!」
「・・・・・・・。」
ごめん。
ちょっと君のテンションには着いていけない。
拓「早く有希の歌聴きたいな!後で練習お邪魔していいよね?」
え、今日って練習するんだったっけ。
遼「構わないけど・・・拓海、無理な勧誘は無しだからな。」
拓「分かってまーす。」
あぁなるほど。
勧誘しようとしてる奴とは君のことか。
よし、全力で無視しよう。
遼「今回だってやっと出てきてもらったんだからな。」
拓「ふーん、随分大切にしてるんだね。ま、そりゃ大変だよねぇ、こんな可愛い彼女だと。」
彼女だぁ?
何言ってんだお前。
あぁあれか、男と女を見るとすぐ付き合ってるだのなんのと騒ぎ立てるあのタイプか君は---
(・・・・・・あれ。)
そういえば私、この世界では遼の彼女さんだったっけ。
すっかり忘れてた。
危ない危ない・・・
そこら辺もきっちりこなさなければ。
遼「ちょっと拓海。そういうのは余計なお世話・・・」
拓「だってさ、遼ってばなかなか紹介してくれないし有希もどの事務所にも入らないし。一部では謎の女って噂が走り回ってるよ。」
「な、謎の女・・・?」
まさかそんな噂が流れているとは・・・
蓋を開けたら中身はこんな私なんですけどねぇ。
一部の皆さん、ご苦労様です。
遼「まぁ、こっちにも色々あるんだよ。気にするな。」
拓「えー、知りたーい。」
晴「こら拓海、いい加減にしな。」
拓「・・・・・はーい。」
リーダー登場。
流石だな。
ビシッとシめちゃって下さいよ。
その後、2時間ほど練習に励んだ。
歌って踊って水飲んで
歌って踊って---
勇「有希、お疲れ!」
「つ、疲れ申した・・・」
勇「えぇ?俺はまだまだやれるけど?」
「・・・相変わらず体力おバカだな。」
『勇気、ちょっといい?』
勇「なになに?」
拓「ここの部分なんだけど・・・」
遼と翔太と勇気、そして拓海君と、えと、えと・・・
誰だっけ、名前忘れた・・・
とにかく皆さんで色々調整に取り組み出した。
よくやるねぇ。頑張れ!
楓「あ、有希、お疲れさーん。」
「・・・うーす。」
メンバー唯一の紅一点。
楓の隣に座りこんだ。
「もうダメっすよ楓さん。昔のように体動かないっす。色んなとこがギシギシいってますもん。」
楓「一緒だよ有希。私も腕が引きちぎれそう。」
楓は華奢な体つきのくせに男顔負けの激しいドラマーなのだ。
こいつに殴られたら死ぬかもしれない。
軽くても首が飛ぶのは間違いない。
楓「それにしても・・・拓海君の質問攻撃、凄いね。」
「あー、そうだな。全く・・・何がそんなに気になるんだか。」
楓「ははっ!余興参加でマイナーなファンがたくさんできちゃったもんね。それに水面下で噂がある人ってなんだか気になっちゃうし。」
マイナーなファン?
へぇ、そんなのいたんだ。
マイナーとか水面下とか・・・
なんだかダークですな。
楓「それに、有希の歌には不思議な魅力があるよ。私だってもっと聴きたいもん。」
「おいおいそんな可愛いこと言うなよ。でも楓の為だったらいつでも歌ってやる。」
楓「・・・やっぱ翔太止めて有希と付き合おっかな。」
「いつでも来い。手ぇ広げて待っててやる。」
楓「もー!有希ってば男前すぎー!」
「任せろ、翔太には負ける気がしねぇ。」
あ、聞こえちまった?
遠くから翔太に睨まれた。
「有希、ちょっといい?」
「へ?」
背中に声がぶつかってきた。
振り返ると
そこには-----リーダー晴樹。
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