辰「透ちゃん、今日は金曜日だよ?今夜デートしよ?」
「だから・・・イヤだって言ってんでしょ。」
辰「じゃぁ明日は?土曜日だよ?休みでしょ?」
「無理。」
辰「もー!一緒に遊んでよ!」
「木戸さんに遊んでもらって下さい。」
木「え。」
辰「ヤダ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
木「・・・・・・・・・・。」
好きでこんな会話に付き合ってるわけじゃない。
出来れば遠慮したい。
もっと出来ればこいつと話したくない。
だが
部「日下、進藤さん。木戸さんもお疲れ様です。」
木「お疲れ様です。」
辰「どうも、お邪魔しております。」
部「さすが出来る男は気合が違いますね!毎日ご苦労様です。」
辰「いえいえ。日下さんには負けられませんので。」
部「ほう!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
なぜしたくもないのに会話しているのかというと。
それは、こいつがうちの会社に入り浸っているからだ。
しかも毎日。
もう・・・うざくて堪らん。
現在地はK社のある企画室。
辰巳さん、木戸さん、私。
そして部長が様子を見に入ってきたところ。
「・・・・・・・・・・。」
部「なんだ日下、その顔は。何を訴えているんだ?」
「・・・・・別に何も。」
部「そうか?お前も根を詰め過ぎないようにな?ほら、差し入れ!」
「・・・・・そりゃどうも。」
本当はこの厄介者を連れて行って欲しかったんだが気付いてもらえず、代わりにコーヒーをくれた。
そしていつものように、カッ!と親指を立てて出て行った。
かなり・・・ムカつく。
辰「ほら。松田さんも応援してくれてることだし、今日はデートしようね?」
「だからー、しないって言ってんでしょ!それより仕事しろ仕事!」
辰「えー?もう終わったよ。」
「え!」
も、もう終わったの?
さすがS社のエリート。
仕事が速いですねー。
「くっそー。ていうかあんたが邪魔するから全然進まないんですけど。」
辰「俺のせいなの?」
「そうです。」
木「あ、そこはもう終わりましたよ。ていうか今日のノルマはとっくに終了してますけど。」
「え!」
と、とっくに終わったの?
さすが変態の運転手。
やはり仕事が速い。
「てことは、今日の仕事は終わりかー!ぃやっほーーー!!」
辰「なんにもしてないくせに。」
「終わればいいんだよ終われば!」
辰「あんなにすごい企画作ったくせに。いい加減だねぇ。」
そういえば、あの企画は辰巳さんのおふざけや義理で通った物じゃないらしい。
まぁそんなんで通ったらまずいと思うが。
とにかく一生懸命考えて企画したのに・・・
企画後になんでこんな大変な目にあってるのかリアルに分からない。
いやいや。
今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ。
辰「とにかく今日はデートね。ご飯食べに行こ?」
「行かないって言ってんだろ。さーて、ノルマも終わったようだし。ちょっとだけ休憩しよーっと。」
辰「休憩って・・・もうすぐ17時だよ?」
「今日は残業・・・の予定なんですよ。明日の朝までずーっと。」
辰「ノルマ終わったのに残業?そんなに俺と一緒にいたいの?」
「そんなわけないだろ。」
辰「・・・酷い。」
今日は---帰るわけにはいかないのだ。
それはなぜか。
それはね、今日が金曜日だからだよ。
辰「残業って、何するわけ?」
「それを今から探すんだよ。」
辰「仕事探して残業するの!?」
「自主残業だからな。」
辰「仕事熱心だねぇ。」
仕事熱心?
そんなわけあるか。
真面目に見えるかもしれないが実は筋金入りの面倒臭がり屋だ。
その私が好んで残業するわけがないだろ。
だが仕方が無い。
今日ばっかりは仕方が無いのだ。
今日は・・・アノ金曜日。
晋が宣告した魔の金曜日だ。
もちろん昨日、ヤツからメールがきた。
高原 晋
------------------
明日は迎えに行く。
逃げたら・・・
------------------
なんか・・・怖い。
中途半端なメッセージがめちゃくちゃ怖い。
でも捕まるのも怖い。
何を選択しても怖い!
「はぁ・・・」
辰「透ちゃん?」
先日ご飯を食べに行った時、意外と取っ付きやすい奴だと思った。
多分イイ奴なんだと思う。
友達になれそうだとも思う。
思うんだが・・・
---次に会った時は抱く。
やはり奴は、生粋の野獣らしい。
捕まったら確実に・・・・食われる!
辰「ねぇ透ちゃん。お願いだから一緒にご飯食べに行こう?」
「だから残業だって言ってるだろ。」
野獣からどうやって逃げ切るか。
とにかく悩んだ、考えた。
そして閃いた。
仕事と称して会社に立てこもる。
家に立て篭もる・・・ってのも考えたが少々心配だ。
その面、会社にはパスがないと入れないし、とりあえずここに居れば安心なのでは・・・と思ったわけだよ。
辰「残業なんてないんでしょ?」
「だから作るんだよ。」
明日は土曜日、会社も休み。
残業なんてクソ食らえだ。
家に帰ってまったりしたいに決まってる。
だが、そんなワガママは言ってられない。
今の私のとって会社は最後の砦だからな。
辰「ご飯、木戸も一緒でいいから。」
木「え。」
「木戸さん?」
辰「うん!」
「木戸さんかぁ・・・」
変態はいいよな。
木戸さんという運転手がいるんだからよ。
どこにでも連れてってくれて、どこまでも共に逃げてくれる。
変態の車でビュビューンと・・・
「-------木戸っ!!」
木「は、はいっ!?」
ちょっと・・・
いいこと思いついちゃったんですけど!!
「木戸!いや木戸さん!いや木戸様!」
木「え・・・ど、どうしたんすか?」
「今日一日・・・私の運転手になってくれないか!?」
木「へ?」
辰「それってもちろん俺も一緒だろ?」
「あんたは別!」
辰「えー!?」
もしかしてもしかしなくても・・・
木戸が協力してくれれば全てがうまくいくんじゃ・・・
いやいや絶対上手くいく!!
だって・・・
①会社からスムーズに脱出可。
②晋に見つかることなく暇つぶし可。
③もし見つかっても車で逃走可。
これって・・・残業しなくていいんじゃねぇ!?
「頼む!助けると思って付き合ってくれ!」
木「え・・・え・・・?」
「晩飯おごる!なんならいい子紹介する!」
木「えっ?」
辰「こら、揺さぶられないの。ていうか木戸を連れて行かれたら俺はどうなるの。家に帰れないでしょ。だから俺も一緒に連れてって。」
「たまには歩いて帰れよ。」
辰「ひ、酷すぎるー!」
デスクに泣き崩れる変態。
大変申し訳ないが・・・
今日は歩いて帰ってくれ。
「な?な!?頼むよ木戸様!!誰がいい?この前気にしてたシホちゃん?それともアヤコちゃん!?」
木「えええ・・・・・と・・・」
辰「透ちゃーん!」
「お前は黙ってろ!さぁ言ってくれ!誰。誰!誰!!誰!!!」
木「ひ、ひぃぃーーー!」
辰「俺も一緒に連れてってよー!」
怯える木戸。
泣きすがる変態。
そして迫る私。
ここって会社ですよね・・・
だが今日だけは大目に見てくれ。
とにかく、頼むよ木戸!