GAME

気に入った—–1 GAME

香「じゃぁ打ち合わせの相手って辰巳さんだったの!?」
「そうなんだよ。」

 

ただ今ファミレスに来ております。

日付は日曜日の午後5時。
なぜか無性にハンバーグを食べたくなってやって来てしまいました。

 

香「すごーい!それってサプライズじゃん!!だから迎えに来てなかったんだねー!」
「サプライズって・・・そんな可愛いもんじゃないぞ。大砲に撃たれたかと思った。」
香「やるわねぇ辰巳さんも。ゲームと言えども透のハートを掴む為に・・・」
「掴むどころじゃない。ある意味握り潰された。」

 

夕飯にはまだ少し早いので今のところドリンクバーで時間潰し。

この前はどうなったのー!?と身を乗り出す香織に、話せるところだけを掻い摘んで話している。
間違ってもヤっちまいましたとは言えない。

 

「ゲームってなんですか?」
「え?あ、あぁー。なんていうのか・・・まぁ気にするな。」

 

そして今日はもう一人。
直樹も一緒だ。
ま、いつものことなんだけれども。

 

香「あのねぇ、3人のイケメンが透の心を射止めようとしてるの!もう絶世のイケメンが!」
「極悪なイケメンだろうが。ていうかお前・・・あれほど他言するなって言ったのにツルッと言っちまいやがったな。」
香「あ、ごめん。」
直「で、ゲームって?」
香「誰が一番に透の心を射止めるかっていうゲームなの!」
「香織ちゃーん。」
香「あ、ごめん。」

 

全然反省してくれてないよこの子は。

 

直「透さんの心を射止める?それがゲームなんですか?」
「まぁ・・・そうらしいぞ。顔が良過ぎると頭のネジが緩むんだろ。お前も気をつけろよ。」
直「・・・・・・・。」
香「もー、透ったら。あの人たちに限ってそんなわけないよ!だってスーパーイケメンだもん!!」
「・・・なんだよその理由は。」

 

どうも香織はあいつらの肩を持つ傾向がある。

スーパーだろうがスペシャルだろうが迷惑なんだよ。
今更だけどこれ以上巻き込まれたくない。

 

(・・・はぁ。)

 

巻き込まれたくないといっても・・・
あの変態辰巳とヤっちゃったって時点でぐるぐるに巻き込まれてるけどな。

 

 

 

辰「ねぇ、今日もヤろ?」

 

あの後猫なで声で迫ってきたヤツに本気の拳を食い込ませ、逃げるように自宅に帰還した。

もうダメかもしれない。
自分でその気は無くてもいつのまにか私も変態に・・・ってことも有り得る。

誰か助けて。
リアルに助けて下さい。

 

直「大丈夫なんですか?なんか変なことされたりとか・・・」
「えっ!?さ、されてないされてない!」
直「・・・・・・本当ですか?」
「ほほホンと!」
直「・・・・・・・・・・。」

 

核心を突かれてかなり焦る。
そんな目で見るな。
動揺を隠せなくなる。

 

直「透さん----」
「あれあれー?でで電話かな!」
直「・・・・・・・・・・。」

 

ナイスなタイミングで携帯が震えた。
慌ててポケットから引っ張り出す。

 

「あ、メールだ---って・・・」

 

高原晋
----------------
今から電話する。
出ろ。
----------------

 

(・・・・・・・・・・。)

 

え、えーとこれって・・・
無視すんなってことか?

 

(・・・・・・・・・・・・。)

 

やっぱそうだよな。
無視すんなよってことだよな。
えー、すっごく無視したい。

 

(しかし・・・)

 

相手はあの野獣・晋。
逆らったらどうなる?

初対面でいきなりチューをぶちかましてきたヤツだぞ。
あの変態辰巳よりも凄いヤツだったら・・・

 

「・・・・・・・・・・・。」
香「透?どうしたの?あれ、電話鳴ってるよ?」

 

考えがまとまる前に電話が震え出した。

どうしよう。

無視?やっぱ無視?
いやでも・・・なんとなく怖い。

 

 

「・・・・・・・・・はい。」

 

 

怖かったので、とりあえず出てみた。

 

晋『出るのが遅ェ。』
「・・・すんません。」
晋『今どこにいる?』
「い、今ですか?え、えーと・・・」

 

今どこって・・・
まさか。

 

「か、会社です。」
晋『日曜だってのにご苦労だな。」
「ど、どうも。」
晋『それにしても随分周りが騒がしいが・・・本当に会社なんだろうな。』
「会社・・・・・・・近くのファミレスです。」
晋『初めからそう言え。』
「うす。」

 

あっさり吐いてしまった。
やっぱこいつ・・・なんか怖ぇ。

 

晋『会社近くのファミレスって・・・白い外装の店か?赤い看板の?』
「・・・・そうですけど。」
晋『そうか。』
「は・・・」

 

(き、切れた・・・・・・?)

 

あれ・・・と思って携帯を見るとやはり切れている。

なんだったんだ?
居場所確認?
そういう趣味?

 

香「だぁれ?」
「あ、あぁ。晋・・・ちゃん?」
香・直「晋ちゃん?」
「そ、そう。」
香「その晋ちゃんがなんだって?」
「さぁ、居場所聞かれただけ。」
直「それだけですか?」
「そう。どこにいるか知りたかったんじゃね?」

 

コーヒー買って来いとか言われるかと思った。
なんていっても俺様だからなあいつ。

ところでなんで晋ちゃん呼びかというと・・・
呼び捨てするのがなんとなく怖いからです。

まぁいい。
とりあえず邪魔だけはしないでくれ。

 

「さぁて!そろそろ注文するかなぁー!」

 

私は。

ハンバーグが食べたいんだよ。

 

『ちょっと見て見て!あの人------っ!』
『う、うわぁ・・・めちゃくちゃカッコイイ。』

 

メニュー表を見ているとふと耳に入ってくる女子のざわめき。

至るところから声が聞こえてくる。
どこかにいい男でもいたのか?

 

「?」

 

声に釣られてキョロキョロするがそれらしき人物は見当たらない。

あ、もしかして直樹のことだったりして。
この後輩、実は意外にモテるのだ。

 

ま、そんなことはどうでもいい。

 

「何にしよっかな。やっぱチーズか?あぁ和風も捨てがたい。」
香「ちょ・・・ちょっと透!」
「なんだー?やっぱ煮込みがいいかな。それともデミグラスか・・・どう思う?」
香「し、晋ちゃんってまさか----!」
直「----------。」
「ん?」

 

香織の様子がおかしい。

メニュー表から目を離し香織を見るとなぜか硬直して私を見ている。

いや私の・・・頭上を見ている?
香織の隣の直樹も同じだ。

 

「晋ちゃんがどうした?」

「・・・・・透。」

「へ。」

 

頭の上から声が降ってきた。

しかも-----
身も心も凍るような空気と一緒に・・・

 

(おおおいおいまさか・・・・)

 

恐る恐る後を振り返る。
まず初めに目に入ったのはジーンズ。

そして視線を持ち上げると・・・

 

「しっ---晋ちゃんっ!!!」
晋「・・・・・・お前なぁ。」

 

驚きと恐怖で大声を上げてしまった。
ざわついていたファミレスがしーんと静まり返る。

 

晋「また俺の名前を忘れたのか?」
「あああんたっ-----こんなとこで何やってんだよ!」
晋「名前。」
「しっ---晋!」
晋「迎えに来た。」
「な、なんだと!?」

 

迎えって----

 

晋「メシに付き合え。」
「メ、メシ?な、なんだ腹が減ってたのかー。だったらあんたも食べてけよ。ほら、座れ。」
晋「早く立て。さっさと行くぞ。」
「行くって・・・行かないよ。見て分かんないのか?連れと来てるんですけど。」

 

やっぱダメだこの俺様は。
空気ってモノが全く読めないらしい。
目の前に香織と直樹がいるだろうが。

しかもここはメシ屋だぞ。
腹が減ったならここで食え。

 

「は・・・・?」

 

上から見下ろす晋ちゃん。
なぜか私の頭にぽんぽんと手を置く。

そして香織と直樹に視線を向けて・・・

 

晋「なぁ、こいつ借りてっていいか?」

 

それはもう・・・
ぶっ倒れそうなくらい素敵な笑顔で二人に話し掛けた。

 

いや。

これは話し掛けたんじゃなくて・・・

 

香「どどどどうぞ!煮るなり焼くなりご自由に!!」

 

ほらみろ。
話し掛けたんじゃなくて暗黙の命令だ。

ていうか

 

「香織ーーー!!」

 

この---裏切り者め!

 

香「仕方ないよ透!やられたの!こんな完璧な笑顔もっらちゃぁ思い残すことなんて無い!!」

 

香織ちゃん。
なに言ってるか全く分かりませんが。

 

晋「行くぞ。」
「えっ、ちょっ---!」

 

腕を掴まれ体が浮かぶ。

いやいやちょっと待てちょっと待て!

 

「か、香織ーーー!!」
香「また明日ねー!」
直「・・・・・・・・・・。」

 

ご丁寧にバッグも一緒に

 

強制連行。