様子見

様子見—1 SAKURA∞SAKU first

--純--

 

姫は、可愛い。

 

男の子みたいな言葉遣いだし女の子らしい面ってあんまり見当たらないけど。

そんなところが強がってるようで
簡単に壊れてしまいそうな感じがして

守ってあげなきゃって思うことがある。

 

姫が桜館に来てから1ヶ月。

あっという間に時間が過ぎ去った。

 

多分、姫が来て1週間くらい経った頃だったかな。

女遊びの激しかったあいつらが
ピタッと遊ぶのをやめた。

正に桜館の七不思議。

女の子からの誘いを断ってるみたいだし、仕事が終わると真っ直ぐ家に帰ってくる。

 

そして------姫に絡む。

 

多分、他の女の子じゃ物足りないんだと思う。

だって俺もそうだから。

 

まぁ、そんな俺の今の時点でのポジションはというと

他の奴らが姫争奪戦を繰り広げる中、一歩引いて様子見。

いつもと違うあいつらを見るのも楽しいし
奴らを引っ掻き回す姫を観察するのも面白い。

 

それに皆が本気かどうかは分からないけど

もし、万が一・・・

あいつらと女の子を取り合うことになったら嫌だな、とも思うから。

 

ま、そんな男共に囲まれた姫はというと
なんで私にちょっかい出してくるんだよ!って思ってる。

思ってるフリをしてるんじゃない。
本気で思ってるから振り回される。

 

いいのか悪いのか、俺達桜館の住人は全員容姿に恵まれてる。

そんなわけで今まで女の子に困ったことがない。
だから自分の思い通りにならない女の子はいないと思ってるし、実際今までいなかったと思う。

初対面でも、大抵の子は視覚で虜になる。
その他の女の子も普通以上の感情を持ってくれる。

 

でも姫は違った。

 

虜にもならない。
普通以上の感情も持たない。
挙句の果てには『てめぇら』呼ばわり。

そんな姫に興味を持たずにはいられないでしょ。

 

だって・・・

 

面白すぎる。

 

そう、とにかくこの人は面白い。

今日だってそう。

華奢な体してるくせに
運動なんか出来ないって顔してるくせに

 

有「よっしゃぁぁあ!!」

 

本当はこんな言葉遣いもしそうにないのに
男にも物怖じせずバンバン点数を奪っていく。

 

(あ、カッコいい。)

 

普通にそう思っちゃった。
男だったら間違いなく今日のヒーローだよ。

 

---姫から目が離せない

 

様子見してるつもりなんだけど、これってやっぱり姫を意識しちゃってるのかな。

自分の中の姫への気持ちが何なのか・・・
よく分からない。

 

とにかく気がつけば姫を目で追ってる。

基本ボーっとだるそうにしてるんだけど
怒ったり笑ったりあいつらと普通に絡んだり

そんな姫を見てるのが楽しかったりする。

 

「あーーーー!やっぱり有希だぁ!」
有「は?」

 

軽く初戦に勝利した後、3人で歩いていたら後から女の人の声。

振り返ると・・・・知らない人。
姫の知り合いかな。

 

「やだ!マジ久しぶり!」
有「え・・・えっと。」
「変わったかなぁ私。あっ子だよ!」
有「あっ子、あっ子・・・・・うぉ!!!あ、あっ子ぉぉぉ!!?うそぉ!!!」
「マジマジ!久しぶりだね!」
有「いやぁ・・・本と久々だな!」

 

どうやら知り合いだったみたい。

いかにもモテそうな男を3人も引き連れている美人さん。
姫とは正反対のタイプっぽい。

 

あ「イケメンが出るっていうからさ。見にきたらカッコいい女子がプレーしてるって騒ぎを聞きつけて!まさか有希とは思わなかったけどねぇ。」
有「カッコいい女子?私のことか?」
あ「そうそう。」
有「・・・複雑だ。」

 

どうやら嬉しくなかったらしい。
ぶっきらぼうにポケットに手を突っ込んで小石を蹴り出した。

 

あ「で、後ろの2人が今回評判になってたイケメンでしょ?なになに?有希の彼氏?」
有「は?」

 

あっ子さんは姫をおちょくるのが好きらしい。
ニヤリと笑いながら姫を突付きだした。

 

有「違う違う。ちょっと事情があってさ。付き合ってるなんてとんでもな----」
累「えー。有希は俺の彼女でしょー?」
「何言ってるの。姫は俺のだよねー?」
有「黙んなさい。」

 

(そんなに睨むなよ。)

 

ついつい口を挟むと累に不機嫌そうな顔を向けられた。
そんなだから姫に子ども扱いされるんだぞ。

 

有「あ、やばっ!これ、返さなきゃいけないみたいだぞ!」

 

突然、俺の持つゼッケンを指差し姫が叫んだ。

そういえば試合後に返してくれって言われたような--

 

有「あっ子、ちょっと待ってろ。」
あ「はぁい。」

 

(ちょっとちょっと、えー・・・)

 

俺と累のゼッケンを掴んで去って行った姫。

ていうかこの状態で放置?
さすが姫、面白すぎる。

 

累「・・・・・。」
「・・・・・。」

 

姫の背中をポカンと目で追う累。

 

分かるよ、俺も同じ気持ち。